ダンジョンに迷い込んだ落ちこぼれの僕。偶然助けた“最強種”の少女と契約したら、強さがバグってSランクモンスターをブッ飛ばしちゃった件

果 一

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第3章 狐の嫁入り、夢か現か

第32話 とある少女の望み

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《三人称???視点》

 ――運命という言葉は呪いだ。
少なくとも、彼女の人生は呪われていたのだから間違いない。

人は皆、生きているだけでその価値を示し続けている。
それはきっと事実であり、しかしそれを信じられる者と信じられない者がいる。
そういう意味では彼女は後者だ。

彼女は、生まれたそのときから世界から疎まれていた。
生きることを、周りが拒んでいた。それはダンジョンの中も、外の人間社会も一緒の話だ。

だから少女は、この世界を憎む。
彼女を拒絶し、見捨て、手を差し伸べなかったこのクソッタレな世界を。

偽りの仮面ペルソナで破壊衝動を覆い隠し、ただ静かに、復讐の刻を待って。

こんな世界、滅んでしまえば良い。
自分を捨てた家族も。存在そのものが違う人間も。少女という異質イレギュラーを生んだ世界ダンジョンも。

それが、少女の望み。
世界から拒絶された彼女が、ことわりに逆らってまで生きる目的。

だけど、たぶん。
彼女すら気付いていない心の奥底。深奥に眠る彼女の本音は――、……
 
――。

《絆視点》

 ――中層で起きた騒動から一晩が明けた。
 正しくは、ファモスさんと相対したあと、数時間気を失っていたらしく、ダンジョンから家に戻る頃には朝になっていた。

 そんなわけで、僕はシャルと新たに同居人となったミリーさんを家に待たせて、学校へと向かうのだった。

――。

「なあなあ聞いたか?」
「ああ。昨日28階層でバケモノが暴れたって話だろ?」
「ヤバかったらしいな」

 学校に行くと、あちこちからそんな噂が聞こえてくる。
 28階層で起きたことに対処した人物が僕であることは、どうやら特にバレていないらしい。

 剣砥ことケンちゃんが行った非道なことも、特に噂には上がっていないようだった。
 あれから彼がどうなったのか。それは知らない。
 ただ一つ確かなことは、流れ弾で死なないように気を配りながら戦っていたから、死んでいないというだけだ。

 反省したのか、それとも心に大きな傷を負ったのか。
 とにかく、学校に姿を現すことはなかった。ただ、近いうちにまた会うような気がする。そんな、確信めいた予感だけはあった。
 
――。

「はぁ……これからどうしよう」

 昼休み。
 僕は、1人屋上に上がってため息をついていた。

 目下の問題は、居候が2人に増えたことである。
 もちろん、クラスメイトにバレれば「テメェ美少女と一つ屋根の下で暮らしといて何文句言ってやがる表でろや!」と言われてしまうこと請け合いだが、よくよく考えて欲しい。

 それなりに健全な男子高校生と、美少女が2人、一緒の空間で暮らすのだ。
 倫理的にマズいし、あと食費とかいろいろ持たない。
 だったらダンジョンで荒稼ぎすればいいという話ではあるが、なんだかダンジョンに入る度に厄介ごとに巻き込まれてしまっているからな、現状。

 なんかよくわからないラノベ主人公的な力が働いて、居候が更に増える予感しかしないのだ。
 先行き不安すぎる。

「……はぁ、僕に平穏な日常は訪れないのだろうか」

 シャルやミリーさんと出会ったことに後悔はないが、それはそれとして憂いはある。
 そんな風に考えていたときだった。

「あ、いた」

 不意に背後から声が聞こえて振り返った先に、1人の少女が立っていた。
 風に流れる金と銀の髪を手で押さえ、感情の読めない瞳で僕を見つめている小柄の女の子。

 ウチのクラスの男子からの人気ナンバー1。
 九条梨狐くじょうりこさんである。
 その人間離れした不思議な魅力のある容姿ながら、何を考えているのかよくわからない不思議ちゃんでもあり、意外と毒舌だったりもする。
 だが、そんなミステリアスでクールな雰囲気が逆に飾らなくていいと、人気が高いのだ。

「く、九条さん? どうしてここに……」

 僕は、予期せぬ人物の登場にたじろいでしまう。
 記憶に新しいのは、ケンちゃんにバカにされたとき庇ってくれたことと、そのあと臭いを嗅がれたことだ。

 あのときのことが思い出されて、否応なく心臓の鼓動が高鳴ってしまう。
 そんな気持ちに一切お構いなしとばかりに、彼女はズカズカとこちらに近づいてきた。


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