32 / 61
第3章 狐の嫁入り、夢か現か
第32話 とある少女の望み
しおりを挟む
《三人称???視点》
――運命という言葉は呪いだ。
少なくとも、彼女の人生は呪われていたのだから間違いない。
人は皆、生きているだけでその価値を示し続けている。
それはきっと事実であり、しかしそれを信じられる者と信じられない者がいる。
そういう意味では彼女は後者だ。
彼女は、生まれたそのときから世界から疎まれていた。
生きることを、周りが拒んでいた。それはダンジョンの中も、外の人間社会も一緒の話だ。
だから少女は、この世界を憎む。
彼女を拒絶し、見捨て、手を差し伸べなかったこのクソッタレな世界を。
偽りの仮面で破壊衝動を覆い隠し、ただ静かに、復讐の刻を待って。
こんな世界、滅んでしまえば良い。
自分を捨てた家族も。存在そのものが違う人間も。少女という異質を生んだ世界も。
それが、少女の望み。
世界から拒絶された彼女が、理に逆らってまで生きる目的。
だけど、たぶん。
彼女すら気付いていない心の奥底。深奥に眠る彼女の本音は――、……
――。
《絆視点》
――中層で起きた騒動から一晩が明けた。
正しくは、ファモスさんと相対したあと、数時間気を失っていたらしく、ダンジョンから家に戻る頃には朝になっていた。
そんなわけで、僕はシャルと新たに同居人となったミリーさんを家に待たせて、学校へと向かうのだった。
――。
「なあなあ聞いたか?」
「ああ。昨日28階層でバケモノが暴れたって話だろ?」
「ヤバかったらしいな」
学校に行くと、あちこちからそんな噂が聞こえてくる。
28階層で起きたことに対処した人物が僕であることは、どうやら特にバレていないらしい。
剣砥ことケンちゃんが行った非道なことも、特に噂には上がっていないようだった。
あれから彼がどうなったのか。それは知らない。
ただ一つ確かなことは、流れ弾で死なないように気を配りながら戦っていたから、死んでいないというだけだ。
反省したのか、それとも心に大きな傷を負ったのか。
とにかく、学校に姿を現すことはなかった。ただ、近いうちにまた会うような気がする。そんな、確信めいた予感だけはあった。
――。
「はぁ……これからどうしよう」
昼休み。
僕は、1人屋上に上がってため息をついていた。
目下の問題は、居候が2人に増えたことである。
もちろん、クラスメイトにバレれば「テメェ美少女と一つ屋根の下で暮らしといて何文句言ってやがる表でろや!」と言われてしまうこと請け合いだが、よくよく考えて欲しい。
それなりに健全な男子高校生と、美少女が2人、一緒の空間で暮らすのだ。
倫理的にマズいし、あと食費とかいろいろ持たない。
だったらダンジョンで荒稼ぎすればいいという話ではあるが、なんだかダンジョンに入る度に厄介ごとに巻き込まれてしまっているからな、現状。
なんかよくわからないラノベ主人公的な力が働いて、居候が更に増える予感しかしないのだ。
先行き不安すぎる。
「……はぁ、僕に平穏な日常は訪れないのだろうか」
シャルやミリーさんと出会ったことに後悔はないが、それはそれとして憂いはある。
そんな風に考えていたときだった。
「あ、いた」
不意に背後から声が聞こえて振り返った先に、1人の少女が立っていた。
風に流れる金と銀の髪を手で押さえ、感情の読めない瞳で僕を見つめている小柄の女の子。
ウチのクラスの男子からの人気ナンバー1。
九条梨狐さんである。
その人間離れした不思議な魅力のある容姿ながら、何を考えているのかよくわからない不思議ちゃんでもあり、意外と毒舌だったりもする。
だが、そんなミステリアスでクールな雰囲気が逆に飾らなくていいと、人気が高いのだ。
「く、九条さん? どうしてここに……」
僕は、予期せぬ人物の登場にたじろいでしまう。
記憶に新しいのは、ケンちゃんにバカにされたとき庇ってくれたことと、そのあと臭いを嗅がれたことだ。
あのときのことが思い出されて、否応なく心臓の鼓動が高鳴ってしまう。
そんな気持ちに一切お構いなしとばかりに、彼女はズカズカとこちらに近づいてきた。
――運命という言葉は呪いだ。
少なくとも、彼女の人生は呪われていたのだから間違いない。
人は皆、生きているだけでその価値を示し続けている。
それはきっと事実であり、しかしそれを信じられる者と信じられない者がいる。
そういう意味では彼女は後者だ。
彼女は、生まれたそのときから世界から疎まれていた。
生きることを、周りが拒んでいた。それはダンジョンの中も、外の人間社会も一緒の話だ。
だから少女は、この世界を憎む。
彼女を拒絶し、見捨て、手を差し伸べなかったこのクソッタレな世界を。
偽りの仮面で破壊衝動を覆い隠し、ただ静かに、復讐の刻を待って。
こんな世界、滅んでしまえば良い。
自分を捨てた家族も。存在そのものが違う人間も。少女という異質を生んだ世界も。
それが、少女の望み。
世界から拒絶された彼女が、理に逆らってまで生きる目的。
だけど、たぶん。
彼女すら気付いていない心の奥底。深奥に眠る彼女の本音は――、……
――。
《絆視点》
――中層で起きた騒動から一晩が明けた。
正しくは、ファモスさんと相対したあと、数時間気を失っていたらしく、ダンジョンから家に戻る頃には朝になっていた。
そんなわけで、僕はシャルと新たに同居人となったミリーさんを家に待たせて、学校へと向かうのだった。
――。
「なあなあ聞いたか?」
「ああ。昨日28階層でバケモノが暴れたって話だろ?」
「ヤバかったらしいな」
学校に行くと、あちこちからそんな噂が聞こえてくる。
28階層で起きたことに対処した人物が僕であることは、どうやら特にバレていないらしい。
剣砥ことケンちゃんが行った非道なことも、特に噂には上がっていないようだった。
あれから彼がどうなったのか。それは知らない。
ただ一つ確かなことは、流れ弾で死なないように気を配りながら戦っていたから、死んでいないというだけだ。
反省したのか、それとも心に大きな傷を負ったのか。
とにかく、学校に姿を現すことはなかった。ただ、近いうちにまた会うような気がする。そんな、確信めいた予感だけはあった。
――。
「はぁ……これからどうしよう」
昼休み。
僕は、1人屋上に上がってため息をついていた。
目下の問題は、居候が2人に増えたことである。
もちろん、クラスメイトにバレれば「テメェ美少女と一つ屋根の下で暮らしといて何文句言ってやがる表でろや!」と言われてしまうこと請け合いだが、よくよく考えて欲しい。
それなりに健全な男子高校生と、美少女が2人、一緒の空間で暮らすのだ。
倫理的にマズいし、あと食費とかいろいろ持たない。
だったらダンジョンで荒稼ぎすればいいという話ではあるが、なんだかダンジョンに入る度に厄介ごとに巻き込まれてしまっているからな、現状。
なんかよくわからないラノベ主人公的な力が働いて、居候が更に増える予感しかしないのだ。
先行き不安すぎる。
「……はぁ、僕に平穏な日常は訪れないのだろうか」
シャルやミリーさんと出会ったことに後悔はないが、それはそれとして憂いはある。
そんな風に考えていたときだった。
「あ、いた」
不意に背後から声が聞こえて振り返った先に、1人の少女が立っていた。
風に流れる金と銀の髪を手で押さえ、感情の読めない瞳で僕を見つめている小柄の女の子。
ウチのクラスの男子からの人気ナンバー1。
九条梨狐さんである。
その人間離れした不思議な魅力のある容姿ながら、何を考えているのかよくわからない不思議ちゃんでもあり、意外と毒舌だったりもする。
だが、そんなミステリアスでクールな雰囲気が逆に飾らなくていいと、人気が高いのだ。
「く、九条さん? どうしてここに……」
僕は、予期せぬ人物の登場にたじろいでしまう。
記憶に新しいのは、ケンちゃんにバカにされたとき庇ってくれたことと、そのあと臭いを嗅がれたことだ。
あのときのことが思い出されて、否応なく心臓の鼓動が高鳴ってしまう。
そんな気持ちに一切お構いなしとばかりに、彼女はズカズカとこちらに近づいてきた。
10
あなたにおすすめの小説
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる