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第3章 狐の嫁入り、夢か現か
第33話 九条莉狐
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「ど、どうしたの九条さん」
「ちょっと確かめたいことがあって」
相変わらず、不思議な雰囲気を纏いながら、九条さんは近づいてくる。
その迫力に思わず気圧され、僕は数歩後ろに下がったが、それだけだ。ここは屋上。後ろにあった手すりにぶつかって、これ以上は下がれなくなった。
しかし、九条さんはどんどん近づいてきて――目と鼻の先まで迫る。
互いの吐息がかかりそうなほどの至近距離。銀を散りばめた金髪とは対照的に、宇宙に放り出されたような深い黒色の瞳は、気を抜けば吸い込まれてしまいそうだ。
「あ、あの……」
「……」
しばらくの間無言じっとこちらを見ていた九条さんは、不意に目を閉じて背伸びしてきた。
お互いの鼻の頭がぶつかる。
え? え?
なに、これ。
端から見たら完全にキス待ちに見えるって!
「ちょ、ちょっと! 何して……」
「すんすんすん」
目の前の少女の鼻が、小さく動く。
「キミ、やっぱ不思議な臭いするね」
「……へ?」
――そうだった。この人そういう人だった。
「昨日とはまた臭いが違ってる」
「そ、そんな変な臭いするかな?」
一応今朝シャワー浴びてきたんだけど。
「あ、あのさ」
「ん? なに」
「いつも、みんなにこんなことしてるの?」
気恥ずかしさを紛らわすためにそう尋ねると、九条さんはそのチャーミングな太い眉を不機嫌そうに歪めた。
「心外だよ。私がいつもこんなことしてるわけないじゃん」
「え?」
「キミだけだよ。こんなことするのは」
「……は?」
僕は思わず呆気にとられてしまう。
え? 僕だけ?
それってどういう……
そのとき、強い風が吹く。
木の葉が舞い、僕は思わず目を細める。
「うわ、風凄いね」
目を擦りながら九条さんへ話しかけるが、返事がない。
「九条さん?」
改めて名前を呼び、正面を見るが――そこには、誰もいなかった。
「あれ? もう下に戻ってったのかな?」
普通なら、そう考えるのが妥当。
ただ、狐に摘ままれたような不思議な気分だけがその場に残されてしまっていた。
――。
時は流れ、放課後。
僕は疲れた身体を引きずりながら、アパートへと帰宅する。
「ただいま」
普段なら、その声に答える者はいない。
しかし、昨日からは違う。
「お帰りなのじゃ!」
「お帰りなさい!」
2人の少女の、元気な声が出迎える。
シャルとミリーさん。いろいろあって僕の嫁(自称)と嫁(政略結婚予定)になってしまった2人だ。
平穏な日々は戻ってこないが、それでも頬が緩むのは止められない。
なんだかんだ、僕は2人のことが好きなようだ。
僕は、リビングで待ってくれているであろう2人の下へ向かい、リビングに続く扉を開ける。
そして、そのまま意識が宇宙に放り込まれた。
凄まじい熱気だった。
周囲に炎を浮かべたシャルと、水を纏わせたミリーさんが、烈火の瞳で睨み合っていた。
その姿は、まるで――
「なんで自宅がラスボスステージみたいになってんのぉおおおおおおお!」
「ちょっと確かめたいことがあって」
相変わらず、不思議な雰囲気を纏いながら、九条さんは近づいてくる。
その迫力に思わず気圧され、僕は数歩後ろに下がったが、それだけだ。ここは屋上。後ろにあった手すりにぶつかって、これ以上は下がれなくなった。
しかし、九条さんはどんどん近づいてきて――目と鼻の先まで迫る。
互いの吐息がかかりそうなほどの至近距離。銀を散りばめた金髪とは対照的に、宇宙に放り出されたような深い黒色の瞳は、気を抜けば吸い込まれてしまいそうだ。
「あ、あの……」
「……」
しばらくの間無言じっとこちらを見ていた九条さんは、不意に目を閉じて背伸びしてきた。
お互いの鼻の頭がぶつかる。
え? え?
なに、これ。
端から見たら完全にキス待ちに見えるって!
「ちょ、ちょっと! 何して……」
「すんすんすん」
目の前の少女の鼻が、小さく動く。
「キミ、やっぱ不思議な臭いするね」
「……へ?」
――そうだった。この人そういう人だった。
「昨日とはまた臭いが違ってる」
「そ、そんな変な臭いするかな?」
一応今朝シャワー浴びてきたんだけど。
「あ、あのさ」
「ん? なに」
「いつも、みんなにこんなことしてるの?」
気恥ずかしさを紛らわすためにそう尋ねると、九条さんはそのチャーミングな太い眉を不機嫌そうに歪めた。
「心外だよ。私がいつもこんなことしてるわけないじゃん」
「え?」
「キミだけだよ。こんなことするのは」
「……は?」
僕は思わず呆気にとられてしまう。
え? 僕だけ?
それってどういう……
そのとき、強い風が吹く。
木の葉が舞い、僕は思わず目を細める。
「うわ、風凄いね」
目を擦りながら九条さんへ話しかけるが、返事がない。
「九条さん?」
改めて名前を呼び、正面を見るが――そこには、誰もいなかった。
「あれ? もう下に戻ってったのかな?」
普通なら、そう考えるのが妥当。
ただ、狐に摘ままれたような不思議な気分だけがその場に残されてしまっていた。
――。
時は流れ、放課後。
僕は疲れた身体を引きずりながら、アパートへと帰宅する。
「ただいま」
普段なら、その声に答える者はいない。
しかし、昨日からは違う。
「お帰りなのじゃ!」
「お帰りなさい!」
2人の少女の、元気な声が出迎える。
シャルとミリーさん。いろいろあって僕の嫁(自称)と嫁(政略結婚予定)になってしまった2人だ。
平穏な日々は戻ってこないが、それでも頬が緩むのは止められない。
なんだかんだ、僕は2人のことが好きなようだ。
僕は、リビングで待ってくれているであろう2人の下へ向かい、リビングに続く扉を開ける。
そして、そのまま意識が宇宙に放り込まれた。
凄まじい熱気だった。
周囲に炎を浮かべたシャルと、水を纏わせたミリーさんが、烈火の瞳で睨み合っていた。
その姿は、まるで――
「なんで自宅がラスボスステージみたいになってんのぉおおおおおおお!」
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