44 / 61
第3章 狐の嫁入り、夢か現か
第44話 運命の朝
しおりを挟む
《絆視点》
――あっという間に休日は過ぎ、月曜日の朝。
今日も一日がいつも通りに始まる。そう、いつも通りの朝が。
「おはようなのじゃ、旦那様!」
ソファに寝転がった僕に目の前に、シャルの元気な姿が飛び込んでくる。
「ああ、おはよう。ところでシャル」
「なんじゃ?」
「当たり前のように起きたら僕に抱きついてるけど、ベッドを譲った意味が全くないんだが?」
よくもまあ、狭いソファの上で僕を抱き枕にしつつ器用に寝られるものだ。
そこだけは呆れを通り越して感心する。
「うむ、まあ妾の身体は自動的に旦那様に吸い寄せられるようにできておるからの。一定以上離れると、「くっ、身体が……疼く! 衝動を抑えられぬ! か、身体が勝手に!」となるからな」
「ファンタジー的なその見た目で言われると、痛いロリっ子が中二病に目覚めたようにしか聞こえないよ」
朝からテンションの高いドラゴン娘へ、小さく嘆息しつつ、
「それにしても、狭いと思うのならベッドに寝ればいいのじゃ。妾と旦那様なら、ギリギリ1人用ベッドでも2人寝転がれるんじゃし」
「いや、それはちょっと……」
口ごもる僕に、シャルは首を傾げる。
理屈ではないのだ、こういうのは。添い寝をするにしても、ベッドで添い寝というのはハードルが高すぎる。
と、そのとき。
「あ、目覚めたんですね。おはようございます」
キッチンの方から、ミリーさんが顔を出す。
何やらキッチンの方から良い匂いが漂っているから、朝食を作っていてくれたのだろう。いろいろと頭が上がらない。
「朝食の準備ができています。ゆっくりでいいので、着替えてきてくださいね」
「ああ……ってわけでシャル」
「なんじゃ?」
「そこをどいてくれ」
「むぅ。妾をくっつけたまま着替えればよかろう」
「無茶言うな!」
唇を尖らせるシャルに、思わずそう突っ込んでいた。
――。
着替えや支度を終え、朝食を食べ終えた僕は、玄関で靴を履いていた。
お見送りにシャルとミリーさんが出てきてくれている。改めて、この歳で妻から「行ってらっしゃい」をされるとは思わなかったな。
そんな風に思っていると、ミリーさんが不意に声をかけてきた。
「絆さん、これを――」
「ん?」
振り返った僕に、ミリーさんはあるものを差し出してきた。
可愛らしい柄の包みに入った、四角い物体――って、これはまさか!
「愛妻弁当……だと!?」
「はい。ちょっと、気合い入れて作ってみました」
驚く僕の前で、照れくさそうに頬を掻くミリーさん。
サイズ的に二段弁当だろう。あまり大食漢ではない僕には少し多いのだが、その理由は――
「上段はミリー、下段は妾が愛を込めて作ったのじゃ! ……と言っても、ミリーにちっとばかし手伝って貰ったがな」
胸を張ってそう述べるシャル。
そんな2人を見て、僕は
「あれ、絆くん!?」
「なんで泣いておるのじゃ!? 泣くほど嫌だったかの!?」
ミリーさんとシャルが、慌てふためく。
それを見て、僕は自分の目尻から涙が伝っていることに気付いた。
「いや、なんでもない。嬉し涙だよ」
いろいろとあって親とは疎遠であり、弱さ故に友達もできなかった。
そんな僕が、こんな素敵なプレゼントを貰えたのだ。この日、このときのことは一生忘れまい。
何があっても、絶対に。
「ありがとう、2人とも。大事に食べるよ」
「そうしてください」
「残したら許さぬぞ!」
苦笑し、「行ってきます」と告げて玄関を出る。
大切な2人の顔をしっかりと見届けてから、僕は弁当を抱えなおして、晴れやかな気分で学校へと向かうのだった。
――あっという間に休日は過ぎ、月曜日の朝。
今日も一日がいつも通りに始まる。そう、いつも通りの朝が。
「おはようなのじゃ、旦那様!」
ソファに寝転がった僕に目の前に、シャルの元気な姿が飛び込んでくる。
「ああ、おはよう。ところでシャル」
「なんじゃ?」
「当たり前のように起きたら僕に抱きついてるけど、ベッドを譲った意味が全くないんだが?」
よくもまあ、狭いソファの上で僕を抱き枕にしつつ器用に寝られるものだ。
そこだけは呆れを通り越して感心する。
「うむ、まあ妾の身体は自動的に旦那様に吸い寄せられるようにできておるからの。一定以上離れると、「くっ、身体が……疼く! 衝動を抑えられぬ! か、身体が勝手に!」となるからな」
「ファンタジー的なその見た目で言われると、痛いロリっ子が中二病に目覚めたようにしか聞こえないよ」
朝からテンションの高いドラゴン娘へ、小さく嘆息しつつ、
「それにしても、狭いと思うのならベッドに寝ればいいのじゃ。妾と旦那様なら、ギリギリ1人用ベッドでも2人寝転がれるんじゃし」
「いや、それはちょっと……」
口ごもる僕に、シャルは首を傾げる。
理屈ではないのだ、こういうのは。添い寝をするにしても、ベッドで添い寝というのはハードルが高すぎる。
と、そのとき。
「あ、目覚めたんですね。おはようございます」
キッチンの方から、ミリーさんが顔を出す。
何やらキッチンの方から良い匂いが漂っているから、朝食を作っていてくれたのだろう。いろいろと頭が上がらない。
「朝食の準備ができています。ゆっくりでいいので、着替えてきてくださいね」
「ああ……ってわけでシャル」
「なんじゃ?」
「そこをどいてくれ」
「むぅ。妾をくっつけたまま着替えればよかろう」
「無茶言うな!」
唇を尖らせるシャルに、思わずそう突っ込んでいた。
――。
着替えや支度を終え、朝食を食べ終えた僕は、玄関で靴を履いていた。
お見送りにシャルとミリーさんが出てきてくれている。改めて、この歳で妻から「行ってらっしゃい」をされるとは思わなかったな。
そんな風に思っていると、ミリーさんが不意に声をかけてきた。
「絆さん、これを――」
「ん?」
振り返った僕に、ミリーさんはあるものを差し出してきた。
可愛らしい柄の包みに入った、四角い物体――って、これはまさか!
「愛妻弁当……だと!?」
「はい。ちょっと、気合い入れて作ってみました」
驚く僕の前で、照れくさそうに頬を掻くミリーさん。
サイズ的に二段弁当だろう。あまり大食漢ではない僕には少し多いのだが、その理由は――
「上段はミリー、下段は妾が愛を込めて作ったのじゃ! ……と言っても、ミリーにちっとばかし手伝って貰ったがな」
胸を張ってそう述べるシャル。
そんな2人を見て、僕は
「あれ、絆くん!?」
「なんで泣いておるのじゃ!? 泣くほど嫌だったかの!?」
ミリーさんとシャルが、慌てふためく。
それを見て、僕は自分の目尻から涙が伝っていることに気付いた。
「いや、なんでもない。嬉し涙だよ」
いろいろとあって親とは疎遠であり、弱さ故に友達もできなかった。
そんな僕が、こんな素敵なプレゼントを貰えたのだ。この日、このときのことは一生忘れまい。
何があっても、絶対に。
「ありがとう、2人とも。大事に食べるよ」
「そうしてください」
「残したら許さぬぞ!」
苦笑し、「行ってきます」と告げて玄関を出る。
大切な2人の顔をしっかりと見届けてから、僕は弁当を抱えなおして、晴れやかな気分で学校へと向かうのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる