45 / 61
第3章 狐の嫁入り、夢か現か
第45話 いつも通りの朝、変わらぬ日常
しおりを挟む
月曜日。週の初めは、どことなく憂鬱な気分になる。
それでも、僕は学校が嫌い、というわけでもない。
校門を抜け、2年B組の――自分の教室の靴箱へと移動し、上履きへと履き替える。
「よぉ、絆!」
不意に後ろから軽薄な声と共に、背中を思い切り叩かれる。
「いっ!?」
その痛みと衝撃に歯を食いしばりつつ、僕は後ろを振り返った。
そこにいたのは、髪をややくすんだ金髪に染めた、少しばかり目つきの悪い少年だ。
「何するんだよ、寛人」
「スキンシップだってスキンシップ。そんな顔すんなよ。俺とお前の仲じゃねぇか」
ヘラヘラと軽薄に笑いながら、僕の友人――刈谷寛人《かりやひろと》が肩に腕を回してきた。
刈谷寛人。
2年B組。僕が1年の時から仲のいい親友で、やたらと絡んでくる。
サッカー部所属で人望も厚い。おまけに――
「あ、寛人。絆くん、おはよう」
不意に、後ろから甘い声が投げかけられる。
長い黒髪の、落ち着いた見た目の少女が、振り返った先にいた。
彼女の名は浅井夢。2年A組で、弓道部所属。
頭も良く、見た目も可愛い。その上で――
「夢さん、おはよう」
「おっす夢。あっぶねぇ……危うく可愛さで天に召されるとこだったわ」
「もう。朝っぱらからからかって……」
夢の登校に気付いた寛人が、真面目な顔でバカを言うものだから、夢は呆れたように嘆息する。だが、そう言いつつも本人は満更でもなさそうで。
――要するに、僕の親友は彼女持ちなのだ。
モテた経験のない僕には、羨ましい限りと言うべきか。
「まったく……なぜお前にこんな素敵な彼女ができて、僕にはできないのか」
「おいおい。いっくら魅力的でも、俺の夢はやらんぞ?」
「安心しなよ。NTRの趣味は僕にもないって」
「わっかんねぇぞ。お前みたいな、優しくて人畜無害そうなヤツに限って、実はとんでもない本性を隠してたり――」
「親友のはずなのに信頼されて無さそうでちょっとショックなんだけど!?」
鋭いツッコミを入れてしまう僕に、寛人は「悪い悪い」と、腹を抱えて笑う。
「お前にもそのうち彼女の1人くらいできんだろ」
「だといいけど」
僕は肩をすくめてみせる。
そんな、いつも通りの他愛もない会話を経て、今日も一日が始まる。
――。
「おはよう」
寛人と共に教室に入ると、何人かの生徒が「おはよう」と返事を返してくれる。
そんな仲、1人の女子生徒がパタパタと近寄ってきて。
「おっはー絆! あとついでに……誰だっけ?」
「寛人だ寛人! 同じクラス……っていうか、隣の席だろ! 悲しくなるわ!」
「ごめんごめん、冗談だって。そんな本気にしなさんな」
睨みつけるのをあっけらかんとした態度で流した少女は、元気いっぱいに微笑んだ。
小森亜実。2年生から同じクラスになった、小柄でいつも溌剌としている少女だ。
ボブカットの髪に、くりりとした大きな瞳。小柄な背と大きな態度が特徴の、クラスのムードメーカー的存在。
そんな彼女は、やたらと僕や寛人に突っかかってくる。
特に寛人に関しては対応がテキトーで、よく痴話げんかをしている。夢さんという彼女がいるのに、けしからんヤツだ。
「ったくよぉ。お前はいつもいつも、人の神経を逆なでするようなこと言いやがって」
「神経が魚で……? どういう意味?」
「お前の脳内で意味の変換がおかしくなってるよ! いい加減勉強しろ! この赤点常習犯! 期末試験まであと一ヶ月なんだぞ!」
「え~。一ヶ月あれば余裕だって」
いろいろと楽観的すぎることを言う亜実さんに、寛人は「付き合ってられない」とばかりに嘆息する。
「まったく、あとで後悔しても知らんからな」
「おとといきやがれ」
「親切を仇で返しやがった!?」
なんてヤツだ、とブツブツ呟きながら、寛人は自分の席へ行ってしまう。
さて、僕もぼちぼち自分の席に行って支度を――
「あ、あのさ。絆」
「ん?」
不意に亜実さんに呼び止められる。
自身の人差し指を付き合わせながら、「あの……その」と歯切れ悪く次の言葉を探っていた。
「どうしたの?」
「その、さっきの期末試験のことなんだけど、さ」
「うん」
「よかったら、う、ウチに勉強……教えてくれないかなって」
上目遣いで、不安そうに聞いてくる亜実さん。
「いいよ」
「ほ、ほんと!?」
とたん、パッと表情を明るくする亜実さん。
「ただ、僕もそんなに勉強得意じゃないけど。それでもよければ」
「ううん大丈夫。ウチより頭悪い人間なんて、この世にいないから!」
「それは自慢することじゃないと思うんだけど……」
そんな僕のツッコミに、しかし亜実さんはやたら嬉しそうにニヤニヤしている。
そんなに次のテストを乗り越える算段がついたのが嬉しいんだろうか。
「じゃあ、よろしくね! 絆!」
満面の笑みで微笑むと、亜実さんは軽くスキップしながら自身の机に向かっていき――
「コイツと隣なの忘れてた! この野郎! 良い気分が台無しじゃんか!」
「ああん? 知るかよ! そりゃこっちの台詞だわ!」
たちまち言い争いを始める亜実さんと寛人。
そんな二人を見つつ、今日もいつも通りの日常が始まる。
それでも、僕は学校が嫌い、というわけでもない。
校門を抜け、2年B組の――自分の教室の靴箱へと移動し、上履きへと履き替える。
「よぉ、絆!」
不意に後ろから軽薄な声と共に、背中を思い切り叩かれる。
「いっ!?」
その痛みと衝撃に歯を食いしばりつつ、僕は後ろを振り返った。
そこにいたのは、髪をややくすんだ金髪に染めた、少しばかり目つきの悪い少年だ。
「何するんだよ、寛人」
「スキンシップだってスキンシップ。そんな顔すんなよ。俺とお前の仲じゃねぇか」
ヘラヘラと軽薄に笑いながら、僕の友人――刈谷寛人《かりやひろと》が肩に腕を回してきた。
刈谷寛人。
2年B組。僕が1年の時から仲のいい親友で、やたらと絡んでくる。
サッカー部所属で人望も厚い。おまけに――
「あ、寛人。絆くん、おはよう」
不意に、後ろから甘い声が投げかけられる。
長い黒髪の、落ち着いた見た目の少女が、振り返った先にいた。
彼女の名は浅井夢。2年A組で、弓道部所属。
頭も良く、見た目も可愛い。その上で――
「夢さん、おはよう」
「おっす夢。あっぶねぇ……危うく可愛さで天に召されるとこだったわ」
「もう。朝っぱらからからかって……」
夢の登校に気付いた寛人が、真面目な顔でバカを言うものだから、夢は呆れたように嘆息する。だが、そう言いつつも本人は満更でもなさそうで。
――要するに、僕の親友は彼女持ちなのだ。
モテた経験のない僕には、羨ましい限りと言うべきか。
「まったく……なぜお前にこんな素敵な彼女ができて、僕にはできないのか」
「おいおい。いっくら魅力的でも、俺の夢はやらんぞ?」
「安心しなよ。NTRの趣味は僕にもないって」
「わっかんねぇぞ。お前みたいな、優しくて人畜無害そうなヤツに限って、実はとんでもない本性を隠してたり――」
「親友のはずなのに信頼されて無さそうでちょっとショックなんだけど!?」
鋭いツッコミを入れてしまう僕に、寛人は「悪い悪い」と、腹を抱えて笑う。
「お前にもそのうち彼女の1人くらいできんだろ」
「だといいけど」
僕は肩をすくめてみせる。
そんな、いつも通りの他愛もない会話を経て、今日も一日が始まる。
――。
「おはよう」
寛人と共に教室に入ると、何人かの生徒が「おはよう」と返事を返してくれる。
そんな仲、1人の女子生徒がパタパタと近寄ってきて。
「おっはー絆! あとついでに……誰だっけ?」
「寛人だ寛人! 同じクラス……っていうか、隣の席だろ! 悲しくなるわ!」
「ごめんごめん、冗談だって。そんな本気にしなさんな」
睨みつけるのをあっけらかんとした態度で流した少女は、元気いっぱいに微笑んだ。
小森亜実。2年生から同じクラスになった、小柄でいつも溌剌としている少女だ。
ボブカットの髪に、くりりとした大きな瞳。小柄な背と大きな態度が特徴の、クラスのムードメーカー的存在。
そんな彼女は、やたらと僕や寛人に突っかかってくる。
特に寛人に関しては対応がテキトーで、よく痴話げんかをしている。夢さんという彼女がいるのに、けしからんヤツだ。
「ったくよぉ。お前はいつもいつも、人の神経を逆なでするようなこと言いやがって」
「神経が魚で……? どういう意味?」
「お前の脳内で意味の変換がおかしくなってるよ! いい加減勉強しろ! この赤点常習犯! 期末試験まであと一ヶ月なんだぞ!」
「え~。一ヶ月あれば余裕だって」
いろいろと楽観的すぎることを言う亜実さんに、寛人は「付き合ってられない」とばかりに嘆息する。
「まったく、あとで後悔しても知らんからな」
「おとといきやがれ」
「親切を仇で返しやがった!?」
なんてヤツだ、とブツブツ呟きながら、寛人は自分の席へ行ってしまう。
さて、僕もぼちぼち自分の席に行って支度を――
「あ、あのさ。絆」
「ん?」
不意に亜実さんに呼び止められる。
自身の人差し指を付き合わせながら、「あの……その」と歯切れ悪く次の言葉を探っていた。
「どうしたの?」
「その、さっきの期末試験のことなんだけど、さ」
「うん」
「よかったら、う、ウチに勉強……教えてくれないかなって」
上目遣いで、不安そうに聞いてくる亜実さん。
「いいよ」
「ほ、ほんと!?」
とたん、パッと表情を明るくする亜実さん。
「ただ、僕もそんなに勉強得意じゃないけど。それでもよければ」
「ううん大丈夫。ウチより頭悪い人間なんて、この世にいないから!」
「それは自慢することじゃないと思うんだけど……」
そんな僕のツッコミに、しかし亜実さんはやたら嬉しそうにニヤニヤしている。
そんなに次のテストを乗り越える算段がついたのが嬉しいんだろうか。
「じゃあ、よろしくね! 絆!」
満面の笑みで微笑むと、亜実さんは軽くスキップしながら自身の机に向かっていき――
「コイツと隣なの忘れてた! この野郎! 良い気分が台無しじゃんか!」
「ああん? 知るかよ! そりゃこっちの台詞だわ!」
たちまち言い争いを始める亜実さんと寛人。
そんな二人を見つつ、今日もいつも通りの日常が始まる。
0
あなたにおすすめの小説
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる