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第二章 《最凶の天空迷宮編》
第七十七話 エナととーめちゃんと共に
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『二対一……いや、三対一。Sランク冒険者としての誇りはないのか!』
「なんとでも言え! 僕は、お前と決闘しに来たわけじゃない!」
大気を蹴り、勢いよく踏み込んだ僕は、《龍鱗》を纏った拳を引き絞る。
更に、《火炎付与》の紅炎を宿し、報復者を捕らえようと迫った。
『くっ!』
報復者は、光の剣で燃える拳を受け止める。
押し切れもしないが、押し負けもしない。
僕の一撃は、相手に届かない。
(僕の一撃は……だけど!)
拳と剣がぶつかり、散ってゆく火花に紛れて、僕は僅かにほくそ笑んだ。
「《火炎付与》―紅華螺旋!」
僕から見て斜め前――報復者の死角となる場所に移動していたエナが、炎を纏った剣を突き出す。
打突と同時に手首のスナップを利かせ、剣に纏った炎が螺旋を描いて跳びまわり、花弁のように宙を舞う。
それはさながら、剣を中心に巻き起こる炎の花吹雪。
鋭い突きと共に巻き起こる火炎の嵐が、報復者の脇腹に炸裂する。
『ぐっ!』
奇襲を受けた報復者は、勢いのまま吹き飛ばされる。
Bランクのエナ単体では、Sランクの相手には到底及ばない。
まともに打ち合えばダメージを与えることすら敵わない。
けれど、ノーガードの状態に全力の一撃を叩き込むことができれば、話は違ってくる。
「逃がさない!」
体勢を崩した報復者に追いすがり、もう片方の拳を全力で振り抜く。
「《衝撃拳》ォオオオッ!!」
肘から先が橙色に輝き、拳が腹部にめり込むと同時に、強烈な衝撃波が放たれる。
ある意味で言ってしまえば、僕の十八番。
《交換》に次ぐ、必殺スキル。
一番使いやすく、一番手に馴染み、もっとも助けられてきた純粋なパワー一辺倒の通常スキルだ。
『ッ!!??』
報復者の身体を衝撃波が突き抜ける。
その威力で報復者はさっきよりも大量の血を吐き出し、意識までもが飛びかける。
――が。
ブチッという音と共に、白目を剥きかけていた相手の目に生気が戻る。
『桁外れの威力だな、今のは……』
報復者は、忌々しげに言い捨てる。
その口元から、赤い筋が伝った。
どうやら、意識が飛ぶ寸前に舌を噛んで正気を保ったらしい。
『さっきの発勁を使った《衝撃波》と同じ通常スキル……だが、明らかに攻撃力が違いすぎる! 一体、どんな手品をッ!?』
「知らないよ! そんなこと!!」
攻撃力だの、手品だの、今はそんなことどうだっていい。
このダンジョン世界を……何よりクレアを好き放題扱ってくれたこいつを、ぶん殴れるのなら、それ以外はどうでもいいのだ。
「うぉおおおおおッ!」
反撃。
それ即ち、相手にチャンスを与えないこと。
動揺の隙を見逃さず、腕を振り上げる。
『ちっ!』
「《衝撃拳》―重炸裂!」
重炸裂を選択した理由は単純。
どの方向へ回避されても、確実に攻撃を加えられるようにするため。
その場で放った五発の衝撃波が、散弾となって襲いかかる。
反射的に右方向へ避けた報復者を、放った衝撃波の一つが打ち据えた。
『んぐっ!』
「はぁあああああっ!!」
残り限られた時間。
もう一片の猶予もない。
ただ、この暴挙を止めるべく、僕はひたすらに拳を振るう。
「なんとでも言え! 僕は、お前と決闘しに来たわけじゃない!」
大気を蹴り、勢いよく踏み込んだ僕は、《龍鱗》を纏った拳を引き絞る。
更に、《火炎付与》の紅炎を宿し、報復者を捕らえようと迫った。
『くっ!』
報復者は、光の剣で燃える拳を受け止める。
押し切れもしないが、押し負けもしない。
僕の一撃は、相手に届かない。
(僕の一撃は……だけど!)
拳と剣がぶつかり、散ってゆく火花に紛れて、僕は僅かにほくそ笑んだ。
「《火炎付与》―紅華螺旋!」
僕から見て斜め前――報復者の死角となる場所に移動していたエナが、炎を纏った剣を突き出す。
打突と同時に手首のスナップを利かせ、剣に纏った炎が螺旋を描いて跳びまわり、花弁のように宙を舞う。
それはさながら、剣を中心に巻き起こる炎の花吹雪。
鋭い突きと共に巻き起こる火炎の嵐が、報復者の脇腹に炸裂する。
『ぐっ!』
奇襲を受けた報復者は、勢いのまま吹き飛ばされる。
Bランクのエナ単体では、Sランクの相手には到底及ばない。
まともに打ち合えばダメージを与えることすら敵わない。
けれど、ノーガードの状態に全力の一撃を叩き込むことができれば、話は違ってくる。
「逃がさない!」
体勢を崩した報復者に追いすがり、もう片方の拳を全力で振り抜く。
「《衝撃拳》ォオオオッ!!」
肘から先が橙色に輝き、拳が腹部にめり込むと同時に、強烈な衝撃波が放たれる。
ある意味で言ってしまえば、僕の十八番。
《交換》に次ぐ、必殺スキル。
一番使いやすく、一番手に馴染み、もっとも助けられてきた純粋なパワー一辺倒の通常スキルだ。
『ッ!!??』
報復者の身体を衝撃波が突き抜ける。
その威力で報復者はさっきよりも大量の血を吐き出し、意識までもが飛びかける。
――が。
ブチッという音と共に、白目を剥きかけていた相手の目に生気が戻る。
『桁外れの威力だな、今のは……』
報復者は、忌々しげに言い捨てる。
その口元から、赤い筋が伝った。
どうやら、意識が飛ぶ寸前に舌を噛んで正気を保ったらしい。
『さっきの発勁を使った《衝撃波》と同じ通常スキル……だが、明らかに攻撃力が違いすぎる! 一体、どんな手品をッ!?』
「知らないよ! そんなこと!!」
攻撃力だの、手品だの、今はそんなことどうだっていい。
このダンジョン世界を……何よりクレアを好き放題扱ってくれたこいつを、ぶん殴れるのなら、それ以外はどうでもいいのだ。
「うぉおおおおおッ!」
反撃。
それ即ち、相手にチャンスを与えないこと。
動揺の隙を見逃さず、腕を振り上げる。
『ちっ!』
「《衝撃拳》―重炸裂!」
重炸裂を選択した理由は単純。
どの方向へ回避されても、確実に攻撃を加えられるようにするため。
その場で放った五発の衝撃波が、散弾となって襲いかかる。
反射的に右方向へ避けた報復者を、放った衝撃波の一つが打ち据えた。
『んぐっ!』
「はぁあああああっ!!」
残り限られた時間。
もう一片の猶予もない。
ただ、この暴挙を止めるべく、僕はひたすらに拳を振るう。
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