裏切られてダンジョンの最下層に落とされた僕。偶然見つけたスキル、《スキル交換》でSクラスモンスターの最強スキルを大量ゲット!? 

果 一

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第二章 《最凶の天空迷宮編》

第八十話 報復に対する報復を

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「何が起きたのか……その答え合わせをしましょうか」



 僕は右手を空に掲げる。

 今にも崩壊しそうな空に手を伸ばし、手に入れたユニークスキルを起動した。



「ユニークスキル《報復リタリエ―ション》、起動スタート・アップ



 すると、掲げた掌の上に青紫色の光球が浮かび上がる。

 そこでようやく、《報復リタリエ―ション》を奪われたことに気付いた報復者リタリエイターが声を上げた。



『な、まさか……《交換リプレイス》と《報復リタリエ―ション》を取り替えたのか!?』

「正解。だけどそれだけで終わらせる気はない。報復対象を再設定、“ダンジョン世界”から“報復者リタリエイター”へ」

『な……なぁ!?」

「――というのは冗談で、報復対象を“崩壊するダンジョン世界”へ変更」



 青ざめる報復者リタリエイターをおちょくるのは、正直スッキリするというものだ。

 

『崩壊するダンジョン世界を対象に設定? 何を言ってるんだ、もう設定されてるものだろう……アホなのかお前は』

「はい? もう一度言って、《報復リタリエ―ション》で跡形もなく崩壊させてあげるから」

『……』



 黙りこくった報復者リタリエイターに、僕の狙いを語る。



「僕が報復の……崩壊の対象に設定したのは“崩壊するダンジョン世界”。つまり、崩壊しゆくダンジョンを崩壊させること。マイナスとマイナスを掛け合わせたらプラスになるように、崩壊するダンジョンを崩壊で上書きしたら……?」

『崩壊するダンジョンという概念を崩壊させる……まさか!?』



 報復者リタリエイターは、空を見上げる。

 すると、金色の渦を巻き、赤い稲妻と青白い亀裂で埋め尽くされた空が、極彩色を経由して暗雲立ちこめる雨の空へと移ろってゆく。



 地上に溢れる高波はダンジョンの端へと寄って、中央を円形に切りとった、変な形の海を取り戻す。

 砕け散った岩山の欠片も集まって、元の岩山がそびえ立った。



 まるで、時間が遡っていくかのように。

 ダンジョンの崩壊が、最初から無かったかのように。



『お前は、ダンジョンの崩壊という概念そのものを崩壊させることで、ダンジョンの崩壊を無かったことにしたというのか!』

「そういうこと」



 言うなれば、崩壊に対する崩壊。報復に対する報復というわけだ。

 答えながら、クレアの方を見る。

 彼女にも感謝しなきゃいけない。



 彼女には、報復代行者リタリエイター・エージェントの呪いがかけられている。

 ダンジョンの崩壊を起こした張本人は報復者リタリエイターであるが、その崩壊を実際に起こす中核を担っていた存在がクレアだ。



 それに、彼女に《報復リタリエ―ション》を付与することで、報復対象上限を取り払えるという利点があった。

 報復者リタリエイターが、ダンジョン世界の崩壊を設定できたように、その崩壊を崩壊させるという大それた事もクレアを介すことで設定できた。

 もう一度大それた目標を崩壊させるだけのエネルギーがクレアに残っていたのも、幸いしたと言っていい。



「ありがとう、クレア」



 そう告げて、パチンと指を鳴らす。

 《報復リタリエ―ション》の付与エンチャントを解除し、報復代行者リタリエイター・エージェントの役目を終えたクレアから、神のようなオーラと魔法陣が消える。



 今、このときより復讐のしもべから解放されたクレアは、頭から真っ逆さまに落ちていく。



「おっと、危ない!」



 大気を蹴り、慌ててクレアの方へ飛んでいく。

 落下する彼女に追いつくと、お姫様抱っこをする形で抱きとめた。

 どうやら意識を失ったままらしく、腕の中で小さく肩を上下させている。

 

「もう少しだけ我慢してくれ。すぐに決着つけるからさ」



 優しく言葉を掛け、小さくて軽い彼女の身体を背中に背負う。

 それから、未だ「信じられない」という顔で硬直している報復者リタリエイターに向き直った。



「さーて、それじゃ真心込めてぶん殴るけど、覚悟はよろしい?」

『な……に?』

「なるほどよろしい。それじゃあ遠慮なく」



 一度目を瞑って開き、次の瞬間思いっきり大気を蹴って、報復者リタリエイターの方へカッ飛んでいった。
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