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第二章 《最凶の天空迷宮編》
第七十九話 ユニークスキル交換
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《エラン視点》
(そろそろ仕掛ける!)
反撃の隙を与えることなく、ひたすらに《衝撃拳》で攻撃を与え続けていた僕は、相手の動きが目に見えて鈍っているのを見極め、起死回生の一手に移ることを決めた。
このままボッコボコにして、裸にひん剥いて、股間に“無能”と炭で書いてやるのも悪くないが、どうせこいつは死ぬまで復讐を辞めないだろう。
降伏はまず有り得ない。
かと言って、このまま殺すつもりも最初からない。
こいつの犯した罪は、死では贖えないレベルにまで積み重なってしまっている。
(まあ、なんだかんだ理由付けて、殺したくないだけなのかもしれないけど……!)
ウッズと相対したときも、殺すつもりなんてなかった。
ただ、あいつが意味の無い覚悟の内に倒れることを決め、使ったら必ず死ぬ《憑怪の石》を使ったというだけの話。
(殺さずに勝利する……そのために使えるのは、《交換》しかない!)
スキルを発動する手を緩めず、攻撃を与え続けながらもの思う。
今から行おうとしている作戦は、実は報復者との決戦が始まる段階から密かに考えていた。
ただ、大きな問題が一つ。
これは、成功するかわからないレベルの作戦だということだ。
(けど、やるしかない! 気負うな僕! ようやく、作戦実行に移れるんだ!)
《交換》を発動しても、エラーが出て作戦が失敗すれば、その分だけ相手に反撃のチャンスを与えてしまう。
だから、エナの援護がないままスキル反動臨界症の症状に魘され、一方的に嬲られていた段階では、失敗のリスクを負って試すことができなかった。
激戦に加え、舌戦もあった。
少しでも相手から意識を逸らしたら、斬り捨てられてお陀仏だっただろう。
しかし、今はエナが背後にいる。
スキル反動臨界症に陥り、HPが削れたとしても、肩に乗っているとーめちゃんが回復してくれる。
事態が僅かに好転したことで、ようやく失敗しても何とかなる状況になった。
むろん、時間はもう残り少ない。
金色に渦巻く空全体には、青白い亀裂が広がっていて、赤黒い稲妻が走っている。
数分後には、ダンジョン丸ごと消え去ってもおかしくない。そんな雰囲気。
(だから、ここで打って出る!)
覚悟を決め、《交換》を起動した。
「《交換》――《衝撃波》を捧げ、我が手に《報復》を!」
『コンディション・エラー。交換が出来ませんでした』
(くっ、やっぱだめか!)
薄々わかってはいたが、ユニークスキルは交換対象外のようだ。
そもそも、ユニークスキルを手に入れられるなら、間違いなく《交換》は全ユニークスキルの中でも最強に位置してしまうだろう。
交換失敗の隙を突いて反撃しようとしてきた報復者は、エナの放った炎の飛ぶ斬撃を受け、防御に徹する。
その間に体勢を整えた僕は《閃光噴射》の光線をぶっ放し、牽制しながら打開策を探る。
(元々、このスキルは、同じスキル同士じゃないと交換できないのが鉄則。通常スキルと魔法スキルの交換さえできないのに、ユニークスキルを通常スキルや魔法スキルと交換なんて、できるはずが……うん? 待てよ)
情報を整理している内に、あることに気付く。
同じスキル同士じゃないと交換できない。裏を返せばそれは――同じ種類のスキル同士なら、交換できるということだ。
「一か八か! 《交換》――《交換》を捧げ、我が手に《報復》を!」
刹那、眩い光が僕と報復者の胸元で弾けた。
『な、なんだ……この光は!?』
瞬間、僕と報復者の胸から眩い光の玉が抜け出し、それぞれ互いの胸に吸い込まれていく。
自身のステータスを確認すると、ユニークスキルの欄には、《交換》の代わりに、《報復》が明記されていた。
賭けの部分が大きかったが、何とか上手くいったようだ。
『な、何が起きて……!? お前の玉が俺の身体の中に入って……!?』
「なんかその発言ちょっと卑猥チックだからやめてくれない?」
さて。
まだ何が起きたのか理解していない報復者のために、答え合わせをしてあげるとしよう。
(そろそろ仕掛ける!)
反撃の隙を与えることなく、ひたすらに《衝撃拳》で攻撃を与え続けていた僕は、相手の動きが目に見えて鈍っているのを見極め、起死回生の一手に移ることを決めた。
このままボッコボコにして、裸にひん剥いて、股間に“無能”と炭で書いてやるのも悪くないが、どうせこいつは死ぬまで復讐を辞めないだろう。
降伏はまず有り得ない。
かと言って、このまま殺すつもりも最初からない。
こいつの犯した罪は、死では贖えないレベルにまで積み重なってしまっている。
(まあ、なんだかんだ理由付けて、殺したくないだけなのかもしれないけど……!)
ウッズと相対したときも、殺すつもりなんてなかった。
ただ、あいつが意味の無い覚悟の内に倒れることを決め、使ったら必ず死ぬ《憑怪の石》を使ったというだけの話。
(殺さずに勝利する……そのために使えるのは、《交換》しかない!)
スキルを発動する手を緩めず、攻撃を与え続けながらもの思う。
今から行おうとしている作戦は、実は報復者との決戦が始まる段階から密かに考えていた。
ただ、大きな問題が一つ。
これは、成功するかわからないレベルの作戦だということだ。
(けど、やるしかない! 気負うな僕! ようやく、作戦実行に移れるんだ!)
《交換》を発動しても、エラーが出て作戦が失敗すれば、その分だけ相手に反撃のチャンスを与えてしまう。
だから、エナの援護がないままスキル反動臨界症の症状に魘され、一方的に嬲られていた段階では、失敗のリスクを負って試すことができなかった。
激戦に加え、舌戦もあった。
少しでも相手から意識を逸らしたら、斬り捨てられてお陀仏だっただろう。
しかし、今はエナが背後にいる。
スキル反動臨界症に陥り、HPが削れたとしても、肩に乗っているとーめちゃんが回復してくれる。
事態が僅かに好転したことで、ようやく失敗しても何とかなる状況になった。
むろん、時間はもう残り少ない。
金色に渦巻く空全体には、青白い亀裂が広がっていて、赤黒い稲妻が走っている。
数分後には、ダンジョン丸ごと消え去ってもおかしくない。そんな雰囲気。
(だから、ここで打って出る!)
覚悟を決め、《交換》を起動した。
「《交換》――《衝撃波》を捧げ、我が手に《報復》を!」
『コンディション・エラー。交換が出来ませんでした』
(くっ、やっぱだめか!)
薄々わかってはいたが、ユニークスキルは交換対象外のようだ。
そもそも、ユニークスキルを手に入れられるなら、間違いなく《交換》は全ユニークスキルの中でも最強に位置してしまうだろう。
交換失敗の隙を突いて反撃しようとしてきた報復者は、エナの放った炎の飛ぶ斬撃を受け、防御に徹する。
その間に体勢を整えた僕は《閃光噴射》の光線をぶっ放し、牽制しながら打開策を探る。
(元々、このスキルは、同じスキル同士じゃないと交換できないのが鉄則。通常スキルと魔法スキルの交換さえできないのに、ユニークスキルを通常スキルや魔法スキルと交換なんて、できるはずが……うん? 待てよ)
情報を整理している内に、あることに気付く。
同じスキル同士じゃないと交換できない。裏を返せばそれは――同じ種類のスキル同士なら、交換できるということだ。
「一か八か! 《交換》――《交換》を捧げ、我が手に《報復》を!」
刹那、眩い光が僕と報復者の胸元で弾けた。
『な、なんだ……この光は!?』
瞬間、僕と報復者の胸から眩い光の玉が抜け出し、それぞれ互いの胸に吸い込まれていく。
自身のステータスを確認すると、ユニークスキルの欄には、《交換》の代わりに、《報復》が明記されていた。
賭けの部分が大きかったが、何とか上手くいったようだ。
『な、何が起きて……!? お前の玉が俺の身体の中に入って……!?』
「なんかその発言ちょっと卑猥チックだからやめてくれない?」
さて。
まだ何が起きたのか理解していない報復者のために、答え合わせをしてあげるとしよう。
応援ありがとうございます!
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