姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一

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第一章 《英雄(不本意)の誕生編》

第41話 1年Sクラスの主席

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《三人称視点》



『さあ始まりました。《選抜魔剣術大会》に出場する実力者を決める、学内決勝大会! その対決カードは、第一試合から熱いものとなっています!』



 音声拡張魔法を使い、実況席から声を張り上げる女子生徒が、右手を空高く突き上げる。

 それにあわせ、会場中の熱気が高まり、声援という形で炸裂した。



『まず入場するのは、一年Cクラス代表、サリィ=ルーグレット選手! 今年の編入試験において高得点を叩き出し、編入時における最上位クラスとなるCクラスに編入! ルーグレット伯爵家のご令嬢であり、幼少期から魔法剣術の英才教育を受けてきたといいます! その実力はいかほどのものか!』



 実況を受けながら、サリィはゆっくりと入場する。

 瞬間、大きな声援が沸き立ち、煌めく陽光がサリィを出迎えた。

 そのまま一段高い円形のステージに上がると、対戦相手が反対側の入場口からやって来るのを待つ。



『続いて入場するのは、大本命! ラマンダルス王立英雄学校が誇る特進クラス――一年Sクラスの頂点に立つ男、アリオス=トロール選手! 類い希なる魔法の才能を持ち、魔法一本で数多の敵を打ち倒したまさに魔法の神童! 今日は、どんな魔法が炸裂するのか!』



 実況の説明の後、さっきよりも大きな歓声があがる。中には、「きゃ~、アリオス様、こっち向いてぇ~!」といった、黄色い歓声も聞こえる。

 

「いや~、どうもどうも。あはは、人気者は辛いなぁ」



 そう言って颯爽と壇上に現れたのは、サラサラのロングの銀髪を持つ、細身の男だった。

 アリオス=トロール。

 特進クラスとなるSクラスのクラス内選抜予選を勝ち抜いてきた、単純な強さなら暫定の主席と思われる生徒だ。



 女子生徒の黄色い歓声が響くのも、彼の容姿が並外れて優れているからに他ならない。



「僕の相手は、こんなにもキュートなベイビーちゃんかい? ああ、運命とはなんと残酷なんだろうか!」



 彼は、金や銀、宝石でゴチャゴチャと彩られた魔杖まじょうを片手に、髪を掻き上げ、額を抑えながら、まるで悲劇の主人公のように嘆く。

 その様子を――サリィはただ、ハイライトの消えた死んだ目で見据えていた。



 彼女の心に湧いた感情は一つ。



(この御方は、一体何を言ってるんですの?)



 アリオスの大袈裟な演技じみた仕草に、ついていけないサリィであった。


「ねぇ、麗しい君。よかったら辞退してくれないかな?」

「は? いきなり何を言い出すんですの?」



 急におかしなことを聞いてきたアリオスに、サリィは怪訝そうな顔を向ける。



「いや、生憎と僕は全ての女性を愛する紳士。君のようなベイビーちゃんを、一方的に苛めて傷物にするなんて、僕の騎士道精神に反するのさ」

「いやあなた、剣使わないから騎士道もなにもないですわよね」



 ジト目でツッコミを入れるサリィ。

 それに対し、アリオスはあくまで毅然とした態度を崩さず、前髪をバッと掻き上げた。



「騎士道は精神の在り方、すなわちメンタリティさ。剣を使うか使わないかなど、些末な問題。僕が耐えられないのは、君のような見目麗しいベイビーちゃんを泣かせてしまうことなんだ」



「きゃーアリオス様ぁ!」「弱者に気を遣うその姿勢、感激いたしましたわぁ!」



 外野がなにやら、アリオスを持ち上げる言葉を叫んでいる。

 その方向を見て、アリオスは「サンキュー、愛しのハニー達」と投げキッスを返していた。

 再び外野から上がる、黄色い歓声。



「ってことさ、だから潔く引き下がってくれな――」

「お断りしますわ」



 アリオスの言葉にかぶせるようにして、サリィは否定した。



 サリィを気遣う言葉とは裏腹に、アリオスはサリィの目を見ていなかった。

 自分が食う側と信じて疑っていない、そういう表情をしている。

 ゆえに、サリィはアリオスの言葉を何一つ信用していなかった。

 彼女自身、リクスを勝負の舞台に引き摺り出すためとはいえ、リクスを見下す発言をした過去がある。そういう舐めた態度をとるのは愚策だと、彼女自身が思い知っているのだ。



「ふぅん、子羊ちゃんが刃向かうんだ。下馬評では、圧倒的に僕が優勢なんだけどな。現に、ギャラリーの期待値も違う。実際君と僕の差は歴然だ。君も大局を見た方がいい」

「浅はかですわね。他人の評価だけで実力を推し量るなんて。正直幻滅ですわ」

「なっ!」



 どこまでも突き放すような言葉に、アリオスは絶句した。

 今まで魔法では他の追随を許さない、圧倒的な自信があったがゆえに、プライドを傷つけられたアリオスの心がみるみるうちに、黒く濁っていく。

 

(リクスさんが見ている前で、敗北など許されませんわ!)



 対するサリィは、アリオスを烈火の瞳で見据える。挑発するように言いつつも、そこに油断の色はない。

 相手は腐っても特進クラスの暫定主席。嘗めてかかれば食われるのはこちらだ。



「ふ、ふふっ。ははははっ。面白いね、君。ここまで侮辱されたのは初めてだよ」



 アリオスは爽やかに笑い飛ばし、サリィを見据える。

 表情は、女子のハートを射止める甘いマスクのまま。だが、目だけは昏い憎悪が渦巻いていた。



「サリィ、頑張れよー!」

「サリィさんファイトですよ!!」

「頑張って!!」



 ふと、サリィの耳に声が届く。

 その方向には、リクス達――この学校に来てからできた友人達がいた。



「絶対、勝ちますわ」



 小声で呟き、纏う空気の質が僅かに変化したアリオスを見据える。



 そして、アリオスは魔杖を構え、同時にサリィは腰のレイピアを引き抜いた。

 白熱する観客席とは裏腹に、ステージ上は緊張で冷たく冷え切っていく。

 

『それでは――第一試合、スタートです!』



 実況の女子生徒の声が、青空に吸い込まれていく。

 極限まで張り詰めた緊張感と、上がるボルテージに熱された中、最初に動いたのはアリオスだった。

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