姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一

文字の大きさ
75 / 153
第二章 《選抜魔剣術大会》編

第75話 姉さんと休日デート!?

しおりを挟む
 本大会への出場者が決まってから、一ヶ月は瞬く間に経過した。

 その間は当然学校に通い、不本意ながら学園生活にも慣れてきていた。しかし、いくら超新星ともてはやされたところで、俺の根っこは基本的に怠惰だ。



 遅刻や居眠りなどは、したくないと言えば嘘になる。

 遅刻しそうになる度に姉さんやマクラが起こしてくれたり、授業中船を漕いでいるとフランが優しく起こしたりしてくれているから、今までそれで注意されたことは数えるほどしかないのだが。



 端から見れば、目覚まし時計が美少女という、羨まシチュエーションになるんだろうが、俺からしたら若干鬱陶しくもある。



 が、そんな俺にもたたき起こされることのない日が存在する。

 それは――休日だ。

 五日間の授業が終わった後の、二日間の休日。

 

「遅寝・遅起き・昼ご飯」を信条とする昼寝族の俺が、正午までゆっくり眠れる最高の休日である。

 このときだけは、本来の俺の姿に戻れるのだ。



「ふぁ~」



 俺は、ぬくぬくとした布団に頭までくるまりながら、寝返りを打つ。

 今日は日曜日。明日からは、公欠を貰って出場する《選抜魔剣術大会》も控えているため、今日は念入りに寝溜めしておかなければならない。



 俺は、微睡みの中、夢と現ともとれない心地よさに身を委ねる。

 このままずっと、こうしていたい――



「リクスちゃ~ん! 起きなさ~い!」



 バッ!

 突如、振り払われる俺の聖域ふとん

 天然の目覚まし時計ことエルザ姉さんの声が、直接耳に飛び込んでくる。



 それと同時に、カーテンを開け放った窓から陽光が容赦なく差し込んできた。



「う、うぉ! 眩しいぃいいい、浄化されるぅうううう!」



 俺は自分の目を押さえ、布団の上でバタバタと暴れる。

 いつも早起きの訓練させられているせいだろうか。残念ながら、俺の眠気は一瞬にして吹き飛ばされてしまった。



「なに吸血鬼みたいなこと言ってるのよぉ~」



 姉さんの呆れたような声が聞こえてくるが、こっちはそれどころじゃない。



「な、なんで起こすんだよ! 今日は休みでしょ! 俺は明日から大変なんだから、睡眠貯金させてくれぇ!」

「どうせ寝過ぎて、今夜目が冴えて眠れなくなるだけよぉ」

「甘いな姉さん。俺は48時間連続で寝続けた記録を持ってるんだ。常人とは身体のつくりが違うんだよ。俺は今日、夕方まで寝ようと、夜はぐっすりさ。睡眠において俺の右に出る者はいなぁい!」

「……なんだか格好付けてるとこ悪いんだけどぉ、言ってることはめちゃめちゃダサいわよぉ?」



 ジト目で睨んでくる姉さん。

 そのあと、ふぅ、と若干エロ……色気のあるため息をついて、俺にとんでもないことを言ってきた。



「まあいいわぁ。それより早く着替えなさぁい。出掛けるわよぉ」

「は? 出掛けるって、どこへ?」

「決まってるでしょ? 私とデートよぉ」

「……ん?」



 俺は一瞬硬直し――



「はぁああああああああああっ!!??」



 意味を悟った瞬間、絶叫を上げてしまった。



――。



 時刻は九時半。

 私服に着替えた俺と姉さんは、王都へと繰り出した。



 何気に、休日の王都に来るのは久しぶりだ。

 ただでさえ人で溢れている空間が、休日ということもあって更に人でごった返している。



「全く、姉さんも変なこと言わないでよ。デートとかさぁ」

「うふふ。もしかして変な想像しちゃったぁ? リクスちゃんも案外、初心なところあるのねぇ」

「からかうなバカ姉。結局、「買い物に付き合え」ってことなんだろ?」

「あらぁ? 私は、割と本気で「デート」だと思ってるわよぉ」

「ぶっ!」



 俺は思わず吹き出してしまった。

 正直、姉さんと俺はあまり似ていない。

 いや、顔の輪郭とか、赤い瞳とかはそっくりだが――髪の色も真逆だし、俺のほうが二歳年下と言っても、一応男子の端くれだ。



 体つきもしっかりしているし、姉さんと背は同じくらい。

 端から見れば、カップルに見えてしまう可能性は捨てきれない。

 実際、さっきからチラチラと通行人からの視線を感じる。



 実の姉に欲情するようなことは流石にないが、思春期の男子として恥ずかしいのは変わらないのだ。



「まったく……一々紛らわしい台詞を吐きやがって」

「ごめんごめん。あ、ほら着いたわよぉ~」



 姉さんは、大通りに面した一件の建物を見上げた。

 二階建てで黄土色の煉瓦で作られているその建物には、小さな扇形の窓があり、そこから店内に陳列された服が覗いている。



 どうやら、服を扱っているお店のようだ。

 それも、見た感じかなりブルジョワ味を感じるというか、ザ・オシャレな雰囲気がダダ漏れのお店である。

 よりわかりやすく言うと、俺のような者とは最も縁遠い場所だった。



「えぇ、マジでここに入るの?」

「そうよぉ」

「姉さんの服なんだから、わざわざ俺を連れてくる必要なかったんじゃ」

「あら、何を言ってるの?」



 姉さんはきょとんと首を傾げ。



「あなたの、明日の勝負服を買いに来たのよぉ」

「……は?」



 俺は、想像の斜め上を行く回答に、一瞬理解が追いつかず。

 ――俺の服を買う? この、イケてるメンズとか、上流階級のお嬢さまとか、貴族の紳士とかしか利用しなさそうな、このお店で?



 ……。

 …………。



「はぁああああああああっ!!??」



 本日二度目。

 俺は、素っ頓狂な叫び声を上げるのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない

仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。 トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。 しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。 先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...