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第一章 パーティをクビになりました。
7.森の異変②
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「…静かだな」
ブラッドベアを倒したカンは森を奥へ奥へと進み続けた
しかしあれ以降魔物と遭遇しなくなってしまう
(ブラッドベアが縄張りを追われる程だ…ならA~Sクラスがわざわざブラッドベアの縄張りまで降りてきた事になる
……もし、もしその降りてきた魔物も逃げて来たのだとしたら…SS~SSSの厄災級が現れたと考えた方が良いだろうな)
前世で見たライノベではこれまたほぼテンプレだった災害級モンスターの出現と状況が似てる事にため息を吐く
「はぁ…俺って巻き込まれ体質だったのか」
面倒だな、と思いながら少しワクワクしてる自分がいる
勇者パーティでは絶対にあり得なかったこの高揚感
(…俺って脳筋だったのか?)
心の何処かで強敵との遭遇を望みながら
奥へ、更に奥へと足取りを進めていた
◆
「…おいおい、これはこれは……」
更に十数分奥へ歩くと
森の最深部から湿って絡みつくような嫌な空気が流れ込んでくる
状態異常完全無効のお陰で俺は萎縮したりしなくて済むが、相当な実力を持った魔物がいることがわかった
(さて…別にここで引き返しても良いんだがな
何せ俺はBに上がりたてな訳だし……けど)
ゾクゾクするが不思議と嫌ではない高揚感が、騎士として
いや、武人としての本能が伝える
_______この気を放つ魔物を狩りたい_______…と
「…討伐義務は無い……が、別に俺が倒してしまっても構わんだろう?」
俺はそう誰にともなく呟くと
マジックポーチを開けて久しく使っていなかった自身の相棒
刃渡り73㎝…二尺三寸の湾曲刀を取り出す
これは昔実家付近の山にあった廃屋を探索したときに出てきた物で
錆は凄かったが、武器に宿る妖気…と言うべきか?
不思議な妖しさにやられて持ってきたもの
銘を【冥府鬼神 抜刀久々利】と言う
誰が作ったのかは分からなかったが
この世界に置ける最上業物の一つと言える
……勿論王の前で使ったりしてない
持ってかれそうだし
「さぁ…頼むぜぇククリちゃん」
いくらなんでもこれ程までの気を持つ相手に素手は不味い …そう判断した
だから騎士時代すら配給の剣で頑張ってきたが、奥の手として残さずぶつけに掛かるのだ
◆
時は同じくして街の冒険者ギルド
カンの遭遇した冒険者たち三人は森から戻り一直線にここへ来ていた
「ギルド長を出してくれ!早く!!」
「裏門側の森で緊急事態発生だ!!」
ギルドの扉を開けて早々
Cランクの冒険者である二人
戦士【ゴルギ】と盾士【スーオ】は叫ぶ
「…何があったのでしょうか?」
そこに丁度ギルド長と話終え
受付に戻ってきたロアが反応するように言う
「ブラッドベアが中層の浅瀬に出てきやがった!
通りすがりの冒険者が助けてくれたがもう少し来るのが遅れたら死んでたかも知れねぇ!!」
通りすがりの冒険者…カンが来なかったらどうなっていたのか
戦士ゴルギは考えただけでも寒気がし、盾士スーオも同じなのだろう…顔が青ざめてる
「落ち着いてください、まず
その冒険者の方は何かギルドに伝えるように言っていませんでしたか?」
そんな二人をロアは落ち着くように言うと
その通りすがりがちゃんとした判断のもとギルド側にどうさせるべきか伝言が残ってる筈、と考え
実際に問う、時間的にも
ブラッドベアを倒す実力的にも、その通りすがりとはカンの事だろうとロアは勘繰る
そして彼は現在森の調査の依頼を受けてる最中だ
まさか何も伝えないで森に深入り等しないだろう
「え、えぇっと……ブラッドベアの住処に、恐らく新勢力により住処を無くした魔物が降りてきて…ランクの高い魔物が浅層に降りてきた可能性が高い……と」
「俺らの恩人がまだ森に残ってんだよ!!」
盾士のスーオの言葉で受付嬢は二人から聞いた中層の始めに出てきたブラッドベアの存在等から確率論を組み立てていき
(なるほど、しっかりと状況を判断し
数多なパターンからよりあり得るものを組み合わせた先見性……
やはり貴方があの噂の……)
そこまで考えたロアは一端思考を切る
ここからは冒険者ギルドの受付嬢としての腕の見せ所だ
これを即座にギルド長へ報告、一次森を封鎖
そしてこれが一番の悩み所なのだが……
(普通ならカンさんへの援護隊を編成するところ
でも今は高ランカーは出払ってるし……
何よりカンさんの勝てない相手に残ってる冒険者はまず勝てない……出せば犬死にになるだけ)
しかし大手を振って援護隊を出さないなど言える筈もない
端から聞けば一人程度の犠牲ならギルドを動かすに足りない等の体裁の悪い人聞きになるだろう
既に戦士ゴルギは助けてもらった恩からか、今すぐにでも助けにいきたいと顔に書いてある
(そんなゴルギさん達を前に援護隊を出さないなど言えば……)
だが、そんなことを考え
なんと言うべきか困っていたロアに
思わぬ方向から助け船が飛んでくる
「…あの人は助けに行く必要ないわよ
私らが足を引っ張るだけだもの」
そうゴルギ達に語ったのは
ギルドに来てからまだ一度も口を開いていなかった魔術師の女だった
ブラッドベアを倒したカンは森を奥へ奥へと進み続けた
しかしあれ以降魔物と遭遇しなくなってしまう
(ブラッドベアが縄張りを追われる程だ…ならA~Sクラスがわざわざブラッドベアの縄張りまで降りてきた事になる
……もし、もしその降りてきた魔物も逃げて来たのだとしたら…SS~SSSの厄災級が現れたと考えた方が良いだろうな)
前世で見たライノベではこれまたほぼテンプレだった災害級モンスターの出現と状況が似てる事にため息を吐く
「はぁ…俺って巻き込まれ体質だったのか」
面倒だな、と思いながら少しワクワクしてる自分がいる
勇者パーティでは絶対にあり得なかったこの高揚感
(…俺って脳筋だったのか?)
心の何処かで強敵との遭遇を望みながら
奥へ、更に奥へと足取りを進めていた
◆
「…おいおい、これはこれは……」
更に十数分奥へ歩くと
森の最深部から湿って絡みつくような嫌な空気が流れ込んでくる
状態異常完全無効のお陰で俺は萎縮したりしなくて済むが、相当な実力を持った魔物がいることがわかった
(さて…別にここで引き返しても良いんだがな
何せ俺はBに上がりたてな訳だし……けど)
ゾクゾクするが不思議と嫌ではない高揚感が、騎士として
いや、武人としての本能が伝える
_______この気を放つ魔物を狩りたい_______…と
「…討伐義務は無い……が、別に俺が倒してしまっても構わんだろう?」
俺はそう誰にともなく呟くと
マジックポーチを開けて久しく使っていなかった自身の相棒
刃渡り73㎝…二尺三寸の湾曲刀を取り出す
これは昔実家付近の山にあった廃屋を探索したときに出てきた物で
錆は凄かったが、武器に宿る妖気…と言うべきか?
不思議な妖しさにやられて持ってきたもの
銘を【冥府鬼神 抜刀久々利】と言う
誰が作ったのかは分からなかったが
この世界に置ける最上業物の一つと言える
……勿論王の前で使ったりしてない
持ってかれそうだし
「さぁ…頼むぜぇククリちゃん」
いくらなんでもこれ程までの気を持つ相手に素手は不味い …そう判断した
だから騎士時代すら配給の剣で頑張ってきたが、奥の手として残さずぶつけに掛かるのだ
◆
時は同じくして街の冒険者ギルド
カンの遭遇した冒険者たち三人は森から戻り一直線にここへ来ていた
「ギルド長を出してくれ!早く!!」
「裏門側の森で緊急事態発生だ!!」
ギルドの扉を開けて早々
Cランクの冒険者である二人
戦士【ゴルギ】と盾士【スーオ】は叫ぶ
「…何があったのでしょうか?」
そこに丁度ギルド長と話終え
受付に戻ってきたロアが反応するように言う
「ブラッドベアが中層の浅瀬に出てきやがった!
通りすがりの冒険者が助けてくれたがもう少し来るのが遅れたら死んでたかも知れねぇ!!」
通りすがりの冒険者…カンが来なかったらどうなっていたのか
戦士ゴルギは考えただけでも寒気がし、盾士スーオも同じなのだろう…顔が青ざめてる
「落ち着いてください、まず
その冒険者の方は何かギルドに伝えるように言っていませんでしたか?」
そんな二人をロアは落ち着くように言うと
その通りすがりがちゃんとした判断のもとギルド側にどうさせるべきか伝言が残ってる筈、と考え
実際に問う、時間的にも
ブラッドベアを倒す実力的にも、その通りすがりとはカンの事だろうとロアは勘繰る
そして彼は現在森の調査の依頼を受けてる最中だ
まさか何も伝えないで森に深入り等しないだろう
「え、えぇっと……ブラッドベアの住処に、恐らく新勢力により住処を無くした魔物が降りてきて…ランクの高い魔物が浅層に降りてきた可能性が高い……と」
「俺らの恩人がまだ森に残ってんだよ!!」
盾士のスーオの言葉で受付嬢は二人から聞いた中層の始めに出てきたブラッドベアの存在等から確率論を組み立てていき
(なるほど、しっかりと状況を判断し
数多なパターンからよりあり得るものを組み合わせた先見性……
やはり貴方があの噂の……)
そこまで考えたロアは一端思考を切る
ここからは冒険者ギルドの受付嬢としての腕の見せ所だ
これを即座にギルド長へ報告、一次森を封鎖
そしてこれが一番の悩み所なのだが……
(普通ならカンさんへの援護隊を編成するところ
でも今は高ランカーは出払ってるし……
何よりカンさんの勝てない相手に残ってる冒険者はまず勝てない……出せば犬死にになるだけ)
しかし大手を振って援護隊を出さないなど言える筈もない
端から聞けば一人程度の犠牲ならギルドを動かすに足りない等の体裁の悪い人聞きになるだろう
既に戦士ゴルギは助けてもらった恩からか、今すぐにでも助けにいきたいと顔に書いてある
(そんなゴルギさん達を前に援護隊を出さないなど言えば……)
だが、そんなことを考え
なんと言うべきか困っていたロアに
思わぬ方向から助け船が飛んでくる
「…あの人は助けに行く必要ないわよ
私らが足を引っ張るだけだもの」
そうゴルギ達に語ったのは
ギルドに来てからまだ一度も口を開いていなかった魔術師の女だった
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