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Episode.3 恋のダンスステップとプッティの逆ギレ説教
第22話 お姫様、リーザのためにレストリア侵攻軍を止める
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ズワルト・コッホ帝国軍の侵攻軍指揮官は、小さなプラットフォームに立って国境沿いの陣地に砲列を並べた巨大な野戦重砲を誇らしげに眺めていた。
帝都にある最高司令部の命令を受けてからというもの、彼の部下達は三交代制で昼夜を問わず働いてきたが、その甲斐あって侵攻に先立って砲撃を始める準備は完ぺきに整えられていた。
この陣地の前には戦車隊が息を潜めて待っている。
レストリア国境の防備陣地へ嵐のような砲撃が終わり次第、鎖を解かれた彼等は猟犬のように出撃する。そうして、砲撃で痛めつけられたレストリア軍守備隊を蹴散らして長躯進軍、首都トルンペストを一気に制圧してしまうのだ。
皇帝の勅命が下り次第、自分は高々と上げた右手を振り下ろして全軍へ命令を下すことになるだろう。高揚感に彼の胸は高鳴り、思わず独り言をつぶやいた。
「準備は出来た。誰も我が軍を阻むことは出来ない」
「素晴らしい仕事をなさいましたね。お茶をどうぞ」
横から差し出された盆のお茶を飲んだ司令官は「おや、美味しいな」と呟いた後でハッとなった。
飲み慣れたいつものお茶ではなかったこともさることながら女性の声だったことに気がついたのだ。
ぎょっとなって振り返る。ズワルト・コッホ帝国軍に女性の兵士や軍属は存在しない。
「国境警備のお仕事、誠にお疲れ様です」
そういって、丁重にお辞儀したのは美しい和服の魔法少女だった。傍に洋装の魔法人形を従えている。
前触れもなく、彼女は突然ズワルト・コッホ軍の前線司令部に現れたのだ。
「だ、誰……?」
「ズワルト・コッホ帝国軍中将、フォルラ・アルトイーゲル閣下。お初にお目に掛かります。わたくし、皇御(すめらぎ)の国の第一皇女、皇御楓と申します」
十二単の裾をそっと摘まんで優雅に魔法少女の挨拶、カーテシーのポーズを執った楓は、おっとりした笑顔を軍司令官に向けた。
「皇御の国の……? な、なんでここに……」
「はい。わたくし所要がございましてしばらくレストリア王国の国境そばに滞在いたします。ズワルト・コッホ側の国境は勇武で名の知られた閣下の軍が厳しく警備されておられると噂を聞きましたので、せめてその労苦を労いたいと思い、粗茶をお持ちいたしました」
「レストリアに滞在……それは……」
侵攻しようとしている目の鼻の先に他国の王女が滞在すると言われ、将軍は目を泳がせた。
「それは困ります。そのような場所におられましては……」
「心配ございませんわ。国境のこちら側を閣下がしっかり守っておられるのですもの。レストリアだって安全です」
そのレストリアへ自分の軍は侵攻するつもりなのだ……とは、さすがに口に出せず、将軍は返事に窮した。
それをいいことに、楓は周囲にいた参謀や将校達へ「皆さま、厳しい国境警備の軍務お疲れ様です。ささ、冷めないうちに……」と、お茶を勧めて回る。彼等も困惑したまま、差し出される湯飲みを押し頂くしかなかった。
「か、楓様。とにかくレストリアへのご逗留はお控え下さい。高貴なお身です。万が一のことがあっては……」
「まあ。これだけ頼もしい軍隊がここを護っているのに万が一なんてあるものですか! 自国の皇居にいるより安全ですわ」
「参りましたな……殿下、レストリアに一体どんなご用事があるというのです?」
楓は酷薄と思えるほどの笑みをうっすらと浮かべた。
「友人がおりますの、レストリアに。そう、とても大切な友人が」
その友人がまだ面識もない、みすぼらしい魔法少女だと彼等は知る由もなかったが、楓は言外に「その友人の身に何かあったらただでは済まさない」と告げていた。
返す言葉もなく、ただ狼狽するばかりのズワルト・コッホ軍人達へ、とどめとばかりに楓は「何かお困りのことがあったら私も魔法でお助けします。いつでもレストリアまでお申し出下さい。国境近くの村に滞在しておりますから」と余計なお節介まで焼き、彼等をさらに困惑させた。
そして、傍らの魔法人形を「ではプッティさん、私たちそろそろお暇いたしましょう」と促すと魔法陣を作り、「皆様、お身体大切に……」と丁寧にお辞儀して消えてしまった。
「……」
予想外の事態にズワルト・コッホ軍の将校達は顔を見合わせた。司令官も「なんということだ。こんな時に……」と頭を抱える。
だが、強引に事を運べば皇御国を巻き込みかねない。とりあえず帝都へ奏上の早馬を立て、判断を仰ぐしかなかった。
「閣下、作戦開始は明日となっていますが、いかがいたします?」
「延期だ……陛下のご意向なしにレストリア以外の国を巻き込んではまずいことになる」
軋るような声で命じると、彼はがっくり肩を落とした。
☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆
枯葉舞う森はずれの空き地に魔法陣が現れると、プッティは待ちかねたように飛び降りて、あばら屋ならぬリーザロッテ・ハウスへと駆け出した。
「リーザロッテ!」
ほんの数日家を空けただけなのに、もう何年も長い間旅に出ていたような気がする。
寂しいなどとまったく自覚していなかったのに、気が付くと少しでも早く彼女の顔が見たかった。
「今帰ったぞ! って、あれ?」
元気な声と共に飛び込んだあばら家の中は無人だった。生活の気配がなく、空家のように森閑としている。
「村に出稼ぎに行ってるのかな?」
「いいえ、違いますわ。プッティさん、これをご覧になって」
続いて入ってきた楓が玄関に落ちていた書置きを差し出した。
『トロワ・ポルムの村の皆さんへ。お供の人形、プッティがケネスリード首都クレンメルタへ公認魔女の申請に一人で行ってしまいました。心配なので私も後を追います。何日かリーザロッテ・ハウスを留守にいたしますのでよろしくお願いいたします。……リーザロッテ』
「あンのバカリーザ! いい子で待ってろって言ってたのに!」
「プッティさんがそれほど心配だったのでしょう」
それほど貴女は大切に想われているのですよ……と楓は優しい目で見たが、すぐに「私達も後を追いましょう!」と厳しい声で告げた。
「すまねえ。でも、リーザロッテは今どこに……」
「お任せくださいまし」
楓は自分の後をふわふわと浮遊して尾いてきた魔法のつづらを開けた。中には彼女の所持品がいっぱい詰め込まれている。彼女はその中から琴を取り出した。
「これは共振した場所へ魔法陣を導いてくれる琴ですの」
つまるところ、ナビゲーターらしい。
「共振?」
「貴女はリーザロッテさんの魔法で作られています。この琴の波動に貴女が共振しましたら、そこがリーザロッテさんのいる方角。その方角へ魔法陣を飛ばして探せば見つかるはずです」
楓はピックを指に嵌めると方角を変えながら琴をつま弾き始めた。ある方向を向いたとき、痛みこそなかったがプッティの身体が電流でも流れたようにブルブルと震えた。
「おおおっ、何じゃこりゃ!」
「わかりました。南西ですわ」
「ありがとよ! ……それにしてもリーザロッテの野郎、心配かけやがって。見つけたらこの薪ざっぽで半殺しにしてやる!」
怒り狂うプッティを見て少し考えこんだ楓は「そうですわ。レディル様もお連れしなくては!」と手を打った。
「へ? 王子様も?」
「リーザロッテさんが行方知れずと知ったらきっと心配なさるはず。お知らせして一緒に探していただきましょう!」
「え。でも、いいのかな。そんなことして……」
国務を担う王子をリーザロッテの探索へ連れ出していいものか……躊躇するプッティを横目に楓はほくそ笑んだ。リーザロッテを見つけた場にレディルがいれば、さすがに彼女を袋叩きになど出来まいと思ったのだ。
……それが、斜め上の結末をもたらすことになろうとは、このとき楓は予想だにしていなかった。
「さ、プッティさん。魔法陣に乗って下さいまし」
「お、おう」
帝都にある最高司令部の命令を受けてからというもの、彼の部下達は三交代制で昼夜を問わず働いてきたが、その甲斐あって侵攻に先立って砲撃を始める準備は完ぺきに整えられていた。
この陣地の前には戦車隊が息を潜めて待っている。
レストリア国境の防備陣地へ嵐のような砲撃が終わり次第、鎖を解かれた彼等は猟犬のように出撃する。そうして、砲撃で痛めつけられたレストリア軍守備隊を蹴散らして長躯進軍、首都トルンペストを一気に制圧してしまうのだ。
皇帝の勅命が下り次第、自分は高々と上げた右手を振り下ろして全軍へ命令を下すことになるだろう。高揚感に彼の胸は高鳴り、思わず独り言をつぶやいた。
「準備は出来た。誰も我が軍を阻むことは出来ない」
「素晴らしい仕事をなさいましたね。お茶をどうぞ」
横から差し出された盆のお茶を飲んだ司令官は「おや、美味しいな」と呟いた後でハッとなった。
飲み慣れたいつものお茶ではなかったこともさることながら女性の声だったことに気がついたのだ。
ぎょっとなって振り返る。ズワルト・コッホ帝国軍に女性の兵士や軍属は存在しない。
「国境警備のお仕事、誠にお疲れ様です」
そういって、丁重にお辞儀したのは美しい和服の魔法少女だった。傍に洋装の魔法人形を従えている。
前触れもなく、彼女は突然ズワルト・コッホ軍の前線司令部に現れたのだ。
「だ、誰……?」
「ズワルト・コッホ帝国軍中将、フォルラ・アルトイーゲル閣下。お初にお目に掛かります。わたくし、皇御(すめらぎ)の国の第一皇女、皇御楓と申します」
十二単の裾をそっと摘まんで優雅に魔法少女の挨拶、カーテシーのポーズを執った楓は、おっとりした笑顔を軍司令官に向けた。
「皇御の国の……? な、なんでここに……」
「はい。わたくし所要がございましてしばらくレストリア王国の国境そばに滞在いたします。ズワルト・コッホ側の国境は勇武で名の知られた閣下の軍が厳しく警備されておられると噂を聞きましたので、せめてその労苦を労いたいと思い、粗茶をお持ちいたしました」
「レストリアに滞在……それは……」
侵攻しようとしている目の鼻の先に他国の王女が滞在すると言われ、将軍は目を泳がせた。
「それは困ります。そのような場所におられましては……」
「心配ございませんわ。国境のこちら側を閣下がしっかり守っておられるのですもの。レストリアだって安全です」
そのレストリアへ自分の軍は侵攻するつもりなのだ……とは、さすがに口に出せず、将軍は返事に窮した。
それをいいことに、楓は周囲にいた参謀や将校達へ「皆さま、厳しい国境警備の軍務お疲れ様です。ささ、冷めないうちに……」と、お茶を勧めて回る。彼等も困惑したまま、差し出される湯飲みを押し頂くしかなかった。
「か、楓様。とにかくレストリアへのご逗留はお控え下さい。高貴なお身です。万が一のことがあっては……」
「まあ。これだけ頼もしい軍隊がここを護っているのに万が一なんてあるものですか! 自国の皇居にいるより安全ですわ」
「参りましたな……殿下、レストリアに一体どんなご用事があるというのです?」
楓は酷薄と思えるほどの笑みをうっすらと浮かべた。
「友人がおりますの、レストリアに。そう、とても大切な友人が」
その友人がまだ面識もない、みすぼらしい魔法少女だと彼等は知る由もなかったが、楓は言外に「その友人の身に何かあったらただでは済まさない」と告げていた。
返す言葉もなく、ただ狼狽するばかりのズワルト・コッホ軍人達へ、とどめとばかりに楓は「何かお困りのことがあったら私も魔法でお助けします。いつでもレストリアまでお申し出下さい。国境近くの村に滞在しておりますから」と余計なお節介まで焼き、彼等をさらに困惑させた。
そして、傍らの魔法人形を「ではプッティさん、私たちそろそろお暇いたしましょう」と促すと魔法陣を作り、「皆様、お身体大切に……」と丁寧にお辞儀して消えてしまった。
「……」
予想外の事態にズワルト・コッホ軍の将校達は顔を見合わせた。司令官も「なんということだ。こんな時に……」と頭を抱える。
だが、強引に事を運べば皇御国を巻き込みかねない。とりあえず帝都へ奏上の早馬を立て、判断を仰ぐしかなかった。
「閣下、作戦開始は明日となっていますが、いかがいたします?」
「延期だ……陛下のご意向なしにレストリア以外の国を巻き込んではまずいことになる」
軋るような声で命じると、彼はがっくり肩を落とした。
☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆
枯葉舞う森はずれの空き地に魔法陣が現れると、プッティは待ちかねたように飛び降りて、あばら屋ならぬリーザロッテ・ハウスへと駆け出した。
「リーザロッテ!」
ほんの数日家を空けただけなのに、もう何年も長い間旅に出ていたような気がする。
寂しいなどとまったく自覚していなかったのに、気が付くと少しでも早く彼女の顔が見たかった。
「今帰ったぞ! って、あれ?」
元気な声と共に飛び込んだあばら家の中は無人だった。生活の気配がなく、空家のように森閑としている。
「村に出稼ぎに行ってるのかな?」
「いいえ、違いますわ。プッティさん、これをご覧になって」
続いて入ってきた楓が玄関に落ちていた書置きを差し出した。
『トロワ・ポルムの村の皆さんへ。お供の人形、プッティがケネスリード首都クレンメルタへ公認魔女の申請に一人で行ってしまいました。心配なので私も後を追います。何日かリーザロッテ・ハウスを留守にいたしますのでよろしくお願いいたします。……リーザロッテ』
「あンのバカリーザ! いい子で待ってろって言ってたのに!」
「プッティさんがそれほど心配だったのでしょう」
それほど貴女は大切に想われているのですよ……と楓は優しい目で見たが、すぐに「私達も後を追いましょう!」と厳しい声で告げた。
「すまねえ。でも、リーザロッテは今どこに……」
「お任せくださいまし」
楓は自分の後をふわふわと浮遊して尾いてきた魔法のつづらを開けた。中には彼女の所持品がいっぱい詰め込まれている。彼女はその中から琴を取り出した。
「これは共振した場所へ魔法陣を導いてくれる琴ですの」
つまるところ、ナビゲーターらしい。
「共振?」
「貴女はリーザロッテさんの魔法で作られています。この琴の波動に貴女が共振しましたら、そこがリーザロッテさんのいる方角。その方角へ魔法陣を飛ばして探せば見つかるはずです」
楓はピックを指に嵌めると方角を変えながら琴をつま弾き始めた。ある方向を向いたとき、痛みこそなかったがプッティの身体が電流でも流れたようにブルブルと震えた。
「おおおっ、何じゃこりゃ!」
「わかりました。南西ですわ」
「ありがとよ! ……それにしてもリーザロッテの野郎、心配かけやがって。見つけたらこの薪ざっぽで半殺しにしてやる!」
怒り狂うプッティを見て少し考えこんだ楓は「そうですわ。レディル様もお連れしなくては!」と手を打った。
「へ? 王子様も?」
「リーザロッテさんが行方知れずと知ったらきっと心配なさるはず。お知らせして一緒に探していただきましょう!」
「え。でも、いいのかな。そんなことして……」
国務を担う王子をリーザロッテの探索へ連れ出していいものか……躊躇するプッティを横目に楓はほくそ笑んだ。リーザロッテを見つけた場にレディルがいれば、さすがに彼女を袋叩きになど出来まいと思ったのだ。
……それが、斜め上の結末をもたらすことになろうとは、このとき楓は予想だにしていなかった。
「さ、プッティさん。魔法陣に乗って下さいまし」
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