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第二章 ニコタマ文芸部
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御堂火憐の話の続き。
「陸上部にようこそ」
彼女はまるで知らない人間を迎え入れるような言い方をした。当然、知らないわけではない。
「美由紀先輩! お久しぶりです」
「火憐は相変わらずだね。ま、みんな気さくだから安心して練習してね」
津神美由紀。私と同じ中学校の先輩だ。入部するまで知らなかったけれど、どうやら彼女は陸上部の部長をしているらしい。
「やっぱり美由紀先輩すごいですね! 部長だもん」
「ハハハ、まぁ……。流れでね」
流れ。きっとそれは自然な流れだったのだろう。昔から美由紀先輩には前から人望があった。
「それより火憐すごいじゃん! 関東一だって?」
「ええ、まぁ……。それなりに頑張りましたからね」
「いやマジで尊敬するよ。あーあ、私より速くなっちゃったのかー」
そう言うと美由紀先輩は苦笑いを浮かべた。
高校の陸上部は全体で三〇人ほどの大所帯だ。当然、種目ごとはみんな違うけれど、一〇〇メートルだけは人数がずば抜けて多い。具体的に言えば陸上部の三分の二は短距離選手なのだ。これは他校の陸上部と比較しても異常な数字だと思う。
「火憐も短距離でしょ?」
「はい! ライバル多いけど頑張ります!」
本当にライバルだらけだ。女子だけでも一〇人の競争相手。その中には美由紀先輩も含まれている。
「よーし、一年集まれー」
私たちが話をしていると顧問の先生がやってきた。二子玉川高校陸上部をここまで押し上げた立役者。彼も高校で教鞭を執る前は、優秀なスプリンターだったらしい。
「さて……。まずはお前たちの実力を見せて貰おうかな?」
顧問の先生は苦虫を噛みつぶしたような口調で言うと陸上のトラックに目をやった。
「津神! お前がタイム係やれ!」
「はい!」
それから私たちはタイム測定のためにトラックに集められた。
「じゃあ、まずは御堂、小南の二人から」
「はい!」
顧問の先生に促されてスタートラインに立つ。一〇〇メートル先に美由紀先輩の姿が見えた。
トラックで感じる四月の春風は心地良い。ふくらはぎから太ももが少しだけひんやりした。本当に良い季節だ。
「位置について……」
私はその言葉を合図にクラウチングの体制を取った――。
私と陸上部の関係はそんな風に始まった。ただ全力で走り抜ける三年間になるだろう。そんな風に思った。そのときは……。
「陸上部にようこそ」
彼女はまるで知らない人間を迎え入れるような言い方をした。当然、知らないわけではない。
「美由紀先輩! お久しぶりです」
「火憐は相変わらずだね。ま、みんな気さくだから安心して練習してね」
津神美由紀。私と同じ中学校の先輩だ。入部するまで知らなかったけれど、どうやら彼女は陸上部の部長をしているらしい。
「やっぱり美由紀先輩すごいですね! 部長だもん」
「ハハハ、まぁ……。流れでね」
流れ。きっとそれは自然な流れだったのだろう。昔から美由紀先輩には前から人望があった。
「それより火憐すごいじゃん! 関東一だって?」
「ええ、まぁ……。それなりに頑張りましたからね」
「いやマジで尊敬するよ。あーあ、私より速くなっちゃったのかー」
そう言うと美由紀先輩は苦笑いを浮かべた。
高校の陸上部は全体で三〇人ほどの大所帯だ。当然、種目ごとはみんな違うけれど、一〇〇メートルだけは人数がずば抜けて多い。具体的に言えば陸上部の三分の二は短距離選手なのだ。これは他校の陸上部と比較しても異常な数字だと思う。
「火憐も短距離でしょ?」
「はい! ライバル多いけど頑張ります!」
本当にライバルだらけだ。女子だけでも一〇人の競争相手。その中には美由紀先輩も含まれている。
「よーし、一年集まれー」
私たちが話をしていると顧問の先生がやってきた。二子玉川高校陸上部をここまで押し上げた立役者。彼も高校で教鞭を執る前は、優秀なスプリンターだったらしい。
「さて……。まずはお前たちの実力を見せて貰おうかな?」
顧問の先生は苦虫を噛みつぶしたような口調で言うと陸上のトラックに目をやった。
「津神! お前がタイム係やれ!」
「はい!」
それから私たちはタイム測定のためにトラックに集められた。
「じゃあ、まずは御堂、小南の二人から」
「はい!」
顧問の先生に促されてスタートラインに立つ。一〇〇メートル先に美由紀先輩の姿が見えた。
トラックで感じる四月の春風は心地良い。ふくらはぎから太ももが少しだけひんやりした。本当に良い季節だ。
「位置について……」
私はその言葉を合図にクラウチングの体制を取った――。
私と陸上部の関係はそんな風に始まった。ただ全力で走り抜ける三年間になるだろう。そんな風に思った。そのときは……。
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