悪魔の手の中 番外編

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???side:蝶

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(???side)

ほんの少し前をトタトタと走る、幼い彼の髪を撫でる。

つややかな黒髪はするりと指の間をすり抜けていく。

その指に反応して、遅れて黒目がちな大きな瞳がこちらを向いた。

なんの穢れも知らない純潔な黒い瞳に俺の顔が映った。

「真澄くん、蝶々さん捕まえられた?」

ふっくらした頬が愛らしくて触れたくなる衝動を抑えながら、尋ねる。そうしなければ、俺はきっと、一線を越えて彼にとってトラウマになるような酷いことをしてしまう。

ふるふると首を横に振った彼は俺に近づくと、ズボンの端をぎゅっと握った。

「りんちゃん……とって……」

もじもじしながら、すぐそばの公園の花壇の花の上を飛び回る、モンシロチョウを指差す。

生まれてこの方ずっと、気に入ったことないその名前を小ぶりの唇が呼べば、まるで魔法にかかったかのようだ。自分の名前がこの世で一番素晴らしいもののように思える。

「あっちの蝶々さんじゃなくていいの?」

俺は、同じ花壇で、黒と黄色の模様の大きな羽をひらりと揺らしながら、優雅に飛んでいるアゲハチョウを指した。

「うん…こっちのほうが、ちっちゃくてかわいい……」

そうだね。君のように小さくて可憐で、真っ白でかわいいよね。

思わず溢れそうになった言葉を寸前で飲み込む。花壇の前まで行き、花の中心に止まって蜜を吸っていたモンシロチョウを手のひらで包み込んだ。

それから彼の小さな手のひらに移す。

彼は大きく瞳を開いて、じっとその小さな蝶を見つめた。

「りんちゃんっ、ありがとっ!」

そして勢いよく俺の顔を見上げ、大人しい彼にしては珍しいくらい明るい声と笑顔でお礼を言った。

その眩しすぎる笑顔を見て、理性で必死に抑えていた欲望が顔を覗かせる。

小さな肩に手を添え、服の襟元まで指を這わせる。息が詰まりそうになりながら、そのまま指を服の中に滑り込ませようとした瞬間、ハッと我に返り、彼から手を離した。

不思議そうにこちらを見つめている無垢な彼に、慌てて取り繕うように普段通りの柔らかい笑顔をつくる。

「……真澄くんのお母さんが待ってるから、帰ろっか。」

彼はコクリと静かに頷くと、手のひらからふわりと飛び立っていったモンシロチョウを、悲しげに目で追った。

その儚げで美しい視線に、彼の純真さを守らないとと、心の中で誓う。

そして胸の奥で渦巻いたままの欲望を、握り潰し、締め殺した。

君はいつまでもモンシロチョウのように可憐で真っ白な心で、ありのままの飾らない美しさで、変わらずにいてね。

柔らかな日差しに照らされた小さな背中に、そっと視線を送った。
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