悪魔の手の中 改訂版

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前編

図書室での逢瀬

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放課後の図書室に一人で向かう。

いつも放課後は楓と一緒に帰るか、場所も選ばず、二人して淫らな行為に耽るかのどっちかだった。新鮮な気持ちになり、今朝より足取りが軽い。

学校にある図書室はやや狭く、本棚に並んでいる本は娯楽小説や漫画などは少ない。小難しいものが多いので利用する生徒は少なかった。今日も例外ではなく、図書室には誰もいない。

本棚の前で、ある本へと手を伸ばした。

『死に至る病 キルケゴール著』

重々しいタイトルのその本の著者は、倫理の授業で先生が軽く触れたものだった。哲学の話を聞くのは、少し好きだった。楓との関係を持つ前に感じていた虚しさを埋めてくれる、なんとなくそう思っていたから。

本に指をかけ、本棚から取り出そうとしたところで、ふわりと爽やかな香りが俺を包み込む。

「…真澄、難しそうな本、読むんだね。こんな本読んでたら気が滅入っちゃうよ。」

くすりと笑って俺の指の上に手を重ね、本を本棚へと戻す。

いつの間にか現れた楓に、心の中を読みとられた気がして恥ずかしくなる。

哲学への純粋な興味だけではなく、小難しい本を読んで背伸びをしたかったのがバレた気がして。

黙りこんでしまう俺の手を楓は優しく引く。

「ほら、むこうに面白そうな本もあったよ。一緒に読もうよ。」

楓は午後の光が暖かく差し込む、窓側の本棚の方に行くと、適当に本を取り出し俺に渡す。

「ね、ページ開いて。」

「……う、うん。」

柔らかい口調の楓に昨日感じた違和感はない。少し、安心して本のページをめくる。

ぱらぱらと本のページをめくる音だけが、静かな図書室に響く。

背後から同じ本を読んでいる楓の存在もいつの間にか忘れ、本の世界に入りこんでいた時、するりと太ももを撫でられる。

「図書室って、静かでいい場所だよね。」

意図を持って動かされるその手に、本の文字を上手く追えなくなる。

その手がだんだんと、下半身の敏感な所をかすめながら、お腹から胸元まで上がってくる。

ぴくりと体が反応し、鼓動が速くなるのを感じた。

「手、止まってるよ。続き読まないの?」

耳元で吐息とともに甘い声で囁かれ、呼吸が乱れそうになるのを抑えながら、再び本のページをめくる。

楓の手がブレザーの隙間に入り込んできて、シャツの上から胸元をなぞる。くすぐったいような気持ちのいいような、その感覚に戸惑う。

「……っ、」

次の瞬間、湿った舌で耳たぶを舐め上げられ、パタンと本を床に落としてしまった。

それを合図に、楓の体に強く引き寄せられる。

「大丈夫。すぐに気持ちよくしてあげる。」

快楽を知った体はいとも簡単に流される。どっちみち、彼が俺を求める以上、俺は彼を拒むことはないだろう。
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