(休載中)自殺したはずが何故か溺愛されまくる生活を送っております

rifa

文字の大きさ
2 / 37

1話

しおりを挟む
 優しい歌声が聞こえる。
 あたたかくて、いつまでも聞いていたくなる……。
(天国……?)
 死んだら地獄に行くだろうと思っていたが、もしかしたら地獄とはそんなに怖くないのだろうかとぼんやり考えているうちに、瞼を開ける元気があることに気づいて目を開く。
「……ん」
 視界に飛び込んできたのは光だ。それほど強い光ではないが、どれほど眠っていたのだろうか、微弱な光にすら眩しさを感じて、つい声が出てしまった。
 その時、先ほどまでの優しい歌声が途切れた。
(あ、もっと聞いていたかったのに……)
 その歌声を聴くことが出来ないことを名残惜しく思っていると、突然視界にレモンに似た黄色い髪の少女が飛び込んできた。
 突然のことにびくりと身体を跳ねさせると、少女の慌てた顔が視界から素早く消えてしまった。
 何やら声を上げながら自分の傍から離れていくようだ。声が遠ざかっていく。
(……なに、今の? 天使? 可愛かった。めっちゃ可愛かった。天使か! ということは、やっぱりここは……天国?)
 天使がいるのならここは天国だろうと思った。
 だが、あんな可愛らしい天使にも嫌な思いをさせてしまったのだなと落ち込んでいると、慌ただしい足音が戻ってきた。
「やっぱり目覚めています! ナイン、ナインッ!」
 優しい声が誰かを呼びつけているようだ。
 また視界に、先ほどの可愛らしい少女の顔が戻ってきた。
「!」
 足音が戻ってきたとき少し予感はしていたが、やはり突然現れると少し驚いてしまう。心臓に悪い。
「お目覚めになられましたか? どこか痛いところはありませんか?」
「はい」と答えようとしたが、声が上手く出なかったので、頷くしかこと出来なかった。
 だが頷いてみせると、少女は安心したように柔和な表情を浮かべ、それからにこりと微笑んでくれた。
「よかったです」
 優しい笑みに、こちらの胸も温かくなってしまう。
(うぅ……やっぱり天使だぁ)
 このように優しく微笑まれたことなどなかった人生なので、少し胸がくすぐったくなり、気恥ずかしさを覚えてしまう。
 そこでふと、天使のような少女の横にもう一人男性がいることに気づいた。
 こちらもまた端正な顔立ちで、優しい笑みを浮かべている。髪色が天使の少女と似ているが、少女のほうは柔らかい黄色……サンシャインイエローという感じだが、男性のほうはマスタードイエローという感じだ。
 少女はさらりとした真っすぐ伸びたサンシャインイエローのボブカットで、男性は同じく真っすぐ伸びたマスタードイエローを肩まで届かせていた。
 男性の瞳はブラウンだが、少女の瞳は桃色だった。
(不思議な色。でも、天使ならまぁ普通なのかな……)
 優しい桃色の瞳に見つめられて、うっとりと見返していると寝たきりの自分の手がふわふわとした真っ白な毛玉たちに優しくマッサージされていることに気づいた。
 だが起き上がることが出来ずに、いま何が起こっているのか分からず困惑していると、それを察した少女が状況を説明してくれた。
「あなたの身体は少し損傷……じゃなかった、疲れてしまったようなので、今少し回復のお手伝いにマッサージをさせてもらっているのですよ? この毛玉の子たちは『クーラーティオ』って言います。ふわふわして気持ちよくないですか?」
 言われると確かに、身体がふわふわ浮きそうなほど軽く感じられ、毛玉に触れられているようなくすぐったさは無く、しかしふわふわとした感触が肌に優しく触れており、とても気持ちが良かった。
 まだ声が出なかったので、こくりと頷いた。
「……まだ本調子ではなさそうですね。回復にはもう少しかかりそうです」
 少女は男性のほうへ振り返ると、マスタードイエローの髪の男性はこくりと頷いた。
「痛いところなどはなさそうですが、まだ安静が必要そうですね。食欲はありますか? 軽く食べられるスープから、しっかりとした食事まで用意が出来ていますので、すぐにお召し上がりいただけますよ」
 こちらの男性もまた優しそうに微笑んでくれる。自分に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない

柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。 バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。 カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。 そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。 愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。

処理中です...