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3話
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「わ、わっ……! 大丈夫か? 悪い、まだ話せなかったのか……!」
アシルと名乗った男性が慌てだした。
傍にいた少女が慌てて喉に手を当て撫でてくれた。じんわりと痛みが引いていくようだ。しかし、まだ声を出せそうな気が、なんとなくしない。
「アシル!」
「悪かったって、サーナ」
サーナと呼ばれた少女の声が、またアシルを責める。アシルも今回は受け流さず真摯に受け止め反省している様子を見せている。
しかし、怒っても美少女は美少女だなと感心した。よく見ると、サーナと呼ばれた少女も色白く、綺麗な肌をしていた。
だが感心している間も、ずっと腹の虫が空腹を訴え続けている。三人の視線が自分に集まるのを感じて、いたたまれなくなってきた。
「とりあえず飯だな!」
アシルの言葉に驚いて顔を上げると、彼は有無を言わさぬ圧を感じる笑みでこちらを向いた。
「食うだろう?」
どこか労わるような声に、思わずうなずいてしまった。
怒られるかもしれないと我に返り身構えるが、三人の誰も、自分を責めることはなく、むしろ安堵したように笑ってくれた。
「では食堂に……と、その前に、自己紹介がまだでしたね」
マスタードイエローの髪の男性が振り返って口を開く。
「ボクの名前はナイン。ナイン・アーカイブって言います。アースライス国で商いを営んでおります」
そうして丁寧に礼をした。
ナインの自己紹介を隣で見ていた少女が倣うように自己紹介をしてくれた。
「私はサーナ・マレポンスと申します。しがない魔法使い見習いをしております。どうぞ、お見知りおきを」
サーナと名乗った少女は、ふわりとかぼちゃのように膨らみあがった白のロングスカートを摘まみ上げ、丁寧なお辞儀をした。
(綺麗……)
うっとりとそのさまを眺めながら、ふと疑問を抱いた。
(魔法、使い……? 天使じゃなくて? え? ていうか魔法……まほう? って??)
突然ファンタジーのようなことを言われて少女の正気を疑っていると、身体がふわりと浮いて、先ほどよりアシルの顔が近くに寄せられた。
「!?!?!!??」
驚きのあまり身体をのけ反らせると、頭から下に落ちそうになる。
(あ……)
刹那、ビルの上から落下した時の感覚を思い出す。
そして今頭から落ちそうになるのをアシルに支えられた感覚が、気を失う前の感覚に酷似していた。
わけがわからなくなり混乱するが、アシルは落下を止められたことに安堵した様子を見せただけで、何も言わない。
何も言わないが、目が合った時、にこりと微笑んでくれたその表情があったかくなるような柔らかいもので、何か楽しいことがあったわけではないのにつられて笑んでしまった。
それを見たアシルは一瞬目を丸くしてから、また嬉しそうな笑顔になった。
「ま、細かい話はあとにして、ひとまず飯にしようか」
アシルが自分の身体を抱きかかえながら歩き出すと、サーナとナインが後から付いてきた。
サーナが小走りで先を行ってしまった。
女の人が自分以外いなくなってしまったことに若干の心細さはあったが、 なんとなくこの二人は信用できると感じるから、不安になることはなかった。
むしろ、アシルの胸の鼓動を聴いていると落ち着いて、耳を寄せるように顔をアシルの胸に預けると、ドッドッと強い鼓動が聞こえた。
見上げると、彼は顔を真っ赤にして、他所を向いていた。
(もしかして不快だったかな)
たしかに、初めて会った……しかも他の誰ならまだしも、自分なんかに身を寄せられたら……気分を害するはずだ。
しかし表情を暗くすれば「根暗だ」とまた不愉快にさせるかもしれない。
同じく相手の気分を害するのなら、自分の気持ちとは反対の表情を浮かべるほうが良いと思って、にこりと笑みを浮かべた。ただし、彼の顔を見る勇気がないため、彼の隣を歩いているナインに向けて笑んでみた。
その視線に気づいたようで、ナインはにこりと笑みを返してくれた。優しい人だなと感じていると、ふいに頭上から声がかけられる。
「何か食いたいものはあるか?」
そう問いかけられ顔をあげると、何故か彼はにっこり力強い笑顔でこちらを見下ろしていた。
アシルと名乗った男性が慌てだした。
傍にいた少女が慌てて喉に手を当て撫でてくれた。じんわりと痛みが引いていくようだ。しかし、まだ声を出せそうな気が、なんとなくしない。
「アシル!」
「悪かったって、サーナ」
サーナと呼ばれた少女の声が、またアシルを責める。アシルも今回は受け流さず真摯に受け止め反省している様子を見せている。
しかし、怒っても美少女は美少女だなと感心した。よく見ると、サーナと呼ばれた少女も色白く、綺麗な肌をしていた。
だが感心している間も、ずっと腹の虫が空腹を訴え続けている。三人の視線が自分に集まるのを感じて、いたたまれなくなってきた。
「とりあえず飯だな!」
アシルの言葉に驚いて顔を上げると、彼は有無を言わさぬ圧を感じる笑みでこちらを向いた。
「食うだろう?」
どこか労わるような声に、思わずうなずいてしまった。
怒られるかもしれないと我に返り身構えるが、三人の誰も、自分を責めることはなく、むしろ安堵したように笑ってくれた。
「では食堂に……と、その前に、自己紹介がまだでしたね」
マスタードイエローの髪の男性が振り返って口を開く。
「ボクの名前はナイン。ナイン・アーカイブって言います。アースライス国で商いを営んでおります」
そうして丁寧に礼をした。
ナインの自己紹介を隣で見ていた少女が倣うように自己紹介をしてくれた。
「私はサーナ・マレポンスと申します。しがない魔法使い見習いをしております。どうぞ、お見知りおきを」
サーナと名乗った少女は、ふわりとかぼちゃのように膨らみあがった白のロングスカートを摘まみ上げ、丁寧なお辞儀をした。
(綺麗……)
うっとりとそのさまを眺めながら、ふと疑問を抱いた。
(魔法、使い……? 天使じゃなくて? え? ていうか魔法……まほう? って??)
突然ファンタジーのようなことを言われて少女の正気を疑っていると、身体がふわりと浮いて、先ほどよりアシルの顔が近くに寄せられた。
「!?!?!!??」
驚きのあまり身体をのけ反らせると、頭から下に落ちそうになる。
(あ……)
刹那、ビルの上から落下した時の感覚を思い出す。
そして今頭から落ちそうになるのをアシルに支えられた感覚が、気を失う前の感覚に酷似していた。
わけがわからなくなり混乱するが、アシルは落下を止められたことに安堵した様子を見せただけで、何も言わない。
何も言わないが、目が合った時、にこりと微笑んでくれたその表情があったかくなるような柔らかいもので、何か楽しいことがあったわけではないのにつられて笑んでしまった。
それを見たアシルは一瞬目を丸くしてから、また嬉しそうな笑顔になった。
「ま、細かい話はあとにして、ひとまず飯にしようか」
アシルが自分の身体を抱きかかえながら歩き出すと、サーナとナインが後から付いてきた。
サーナが小走りで先を行ってしまった。
女の人が自分以外いなくなってしまったことに若干の心細さはあったが、 なんとなくこの二人は信用できると感じるから、不安になることはなかった。
むしろ、アシルの胸の鼓動を聴いていると落ち着いて、耳を寄せるように顔をアシルの胸に預けると、ドッドッと強い鼓動が聞こえた。
見上げると、彼は顔を真っ赤にして、他所を向いていた。
(もしかして不快だったかな)
たしかに、初めて会った……しかも他の誰ならまだしも、自分なんかに身を寄せられたら……気分を害するはずだ。
しかし表情を暗くすれば「根暗だ」とまた不愉快にさせるかもしれない。
同じく相手の気分を害するのなら、自分の気持ちとは反対の表情を浮かべるほうが良いと思って、にこりと笑みを浮かべた。ただし、彼の顔を見る勇気がないため、彼の隣を歩いているナインに向けて笑んでみた。
その視線に気づいたようで、ナインはにこりと笑みを返してくれた。優しい人だなと感じていると、ふいに頭上から声がかけられる。
「何か食いたいものはあるか?」
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