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7話
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生きたいなどと感じたのは、いつぶりだろうか。思い出せないから、もしかしたら初めてかもしれない。
表情が自然と緩んでいく。
「ふふっ」と、喜びが口から漏れ出てしまった。
(あ、声が出る……?)
先ほど飲んだ薬草茶のおかげだろうか。喉に違和感がないように思えた。
ゆっくりと声を出してみる。
「あ、しる……さん。ありが……とう」
少しかすれていたが、なんとか喉を痛めることなく声を出すことが出来た。
緩んだ表情のままアシルを見上げると、彼は何故か眼に涙を溜めていた。
「え……? あ……」
困惑していると、アシルはルミナスの身体を強く抱きしめた。
生前、誰にも抱きしめられたことなどなかった。
否……最期にこうして抱きしめられたことがあったことを思い出す。
『見つけた』
その声も、このぬくもりも、間違いなくアシルのものだと思い出したルミナスは、自身の鼓動が激しくなっていくのを感じる。
死ぬ前に聞いた声がアシルのものであったとしたら、アシルを巻き込んで死んでしまったのだろうかと恐怖した。
つまり、アシルも一緒に死んでしまっているのだろうかと考えた瞬間、身体が震えだした。
「ルミナス……?」
「ごめ、ごめ……なさ…………わた、私の、せいで……」
「???」
アシルは突然身体を震わせたルミナスの言った意味が分からなかったらしい。それでも、謝るしか出来なかった。
しかし、泣きながら謝っている間も腹の虫がずっと鳴り続けていたため、かなり滑稽な光景だっただろう。
「とりあえず飯にしよう。腹、減っているだろう?」
アシルに気を遣われ、お腹の音を恥じながらもルミナスは頷いた。
「だろう?」
にこりと笑んだアシルの目元に、もう涙は溜まっていなかった。
アシルも、ルミナスが泣いた理由はわからないようだが、ルミナスもまた、アシルが目に涙を溜めていた理由がわからない。
自分が原因であることは間違いないだろうが、まさか名前を呼ばれたことが泣くほど嫌だったのだろうかと焦った。
(名前を呼ばないほうがいいかな……?)
よく考えれば、今まで自分が人の名前を呼ぶことはあまりなかった。職場では必要になるから呼ばざるを得ないが、話しかけた人は皆一様に不快だという表情を浮かべていた。
(もしかしたら、私には名前を呼ばれるのも不か……)
「むがぁ!」
考え事を強制的に中断させられた。
アシルがルミナスの口に、ブドウを一粒咥えさせたのだ。
「むぐぐ??」
「ルミナス……美味しいだろう?」
美味しいかと訊ねられても、突然口にブドウを咥えさせられただけなので、まだ味など分からない。
ブドウの皮は剝いてあったが、この状態では食べることも出来ないし、吐き出そうにも口の入り口を塞いでいるアシルの指が邪魔で吐き出すことも出来ない。
やや窒息の危機を感じていると、ようやくアシルが気づいてくれたようだ。
「あ、わるい」
アシルがブドウをどかしてくれたおかげで、ようやく口で息を吸うことが出来た。
「アシル……」
呆れたような声に前を見ると、テーブルの向かい側にサーナとナインが座って、視線でたしなめるようにアシルを見ていた。
「ルミナス、ごめんなさい。アシルってこう、考えが足らなくてデリカシーが無いから軽率な行動が多いけれど、悪意があるわけじゃないんです」
「フォローになってねえんだけど」
サーナの説明に、アシルが目を細めて呆れたように言い返す。
「あなたのフォローをした覚えがないからでしょう」
ナインはそう苦言を漏らしながら、グラスに注がれた水を飲んだ。
横に視線を向けると、アシルは何かに耐えるように顔をしかめていた。
表情が自然と緩んでいく。
「ふふっ」と、喜びが口から漏れ出てしまった。
(あ、声が出る……?)
先ほど飲んだ薬草茶のおかげだろうか。喉に違和感がないように思えた。
ゆっくりと声を出してみる。
「あ、しる……さん。ありが……とう」
少しかすれていたが、なんとか喉を痛めることなく声を出すことが出来た。
緩んだ表情のままアシルを見上げると、彼は何故か眼に涙を溜めていた。
「え……? あ……」
困惑していると、アシルはルミナスの身体を強く抱きしめた。
生前、誰にも抱きしめられたことなどなかった。
否……最期にこうして抱きしめられたことがあったことを思い出す。
『見つけた』
その声も、このぬくもりも、間違いなくアシルのものだと思い出したルミナスは、自身の鼓動が激しくなっていくのを感じる。
死ぬ前に聞いた声がアシルのものであったとしたら、アシルを巻き込んで死んでしまったのだろうかと恐怖した。
つまり、アシルも一緒に死んでしまっているのだろうかと考えた瞬間、身体が震えだした。
「ルミナス……?」
「ごめ、ごめ……なさ…………わた、私の、せいで……」
「???」
アシルは突然身体を震わせたルミナスの言った意味が分からなかったらしい。それでも、謝るしか出来なかった。
しかし、泣きながら謝っている間も腹の虫がずっと鳴り続けていたため、かなり滑稽な光景だっただろう。
「とりあえず飯にしよう。腹、減っているだろう?」
アシルに気を遣われ、お腹の音を恥じながらもルミナスは頷いた。
「だろう?」
にこりと笑んだアシルの目元に、もう涙は溜まっていなかった。
アシルも、ルミナスが泣いた理由はわからないようだが、ルミナスもまた、アシルが目に涙を溜めていた理由がわからない。
自分が原因であることは間違いないだろうが、まさか名前を呼ばれたことが泣くほど嫌だったのだろうかと焦った。
(名前を呼ばないほうがいいかな……?)
よく考えれば、今まで自分が人の名前を呼ぶことはあまりなかった。職場では必要になるから呼ばざるを得ないが、話しかけた人は皆一様に不快だという表情を浮かべていた。
(もしかしたら、私には名前を呼ばれるのも不か……)
「むがぁ!」
考え事を強制的に中断させられた。
アシルがルミナスの口に、ブドウを一粒咥えさせたのだ。
「むぐぐ??」
「ルミナス……美味しいだろう?」
美味しいかと訊ねられても、突然口にブドウを咥えさせられただけなので、まだ味など分からない。
ブドウの皮は剝いてあったが、この状態では食べることも出来ないし、吐き出そうにも口の入り口を塞いでいるアシルの指が邪魔で吐き出すことも出来ない。
やや窒息の危機を感じていると、ようやくアシルが気づいてくれたようだ。
「あ、わるい」
アシルがブドウをどかしてくれたおかげで、ようやく口で息を吸うことが出来た。
「アシル……」
呆れたような声に前を見ると、テーブルの向かい側にサーナとナインが座って、視線でたしなめるようにアシルを見ていた。
「ルミナス、ごめんなさい。アシルってこう、考えが足らなくてデリカシーが無いから軽率な行動が多いけれど、悪意があるわけじゃないんです」
「フォローになってねえんだけど」
サーナの説明に、アシルが目を細めて呆れたように言い返す。
「あなたのフォローをした覚えがないからでしょう」
ナインはそう苦言を漏らしながら、グラスに注がれた水を飲んだ。
横に視線を向けると、アシルは何かに耐えるように顔をしかめていた。
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