(休載中)自殺したはずが何故か溺愛されまくる生活を送っております

rifa

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9話

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「料理……冷めてしまいます……」
 静かな食堂に、淡々とした少女の声が聞こえた。
「あぁ、ミンクさん、申し訳ありませんでした。アシル、ミンクが食事を出すタイミングに困っています。ルミナスさんもお腹が減って限界でしょうし……」
 今まで泣きじゃくりながらも、やはりお腹の音は止まらなかった。
 ナインの指摘が恥ずかしすぎて、別の意味で顔を上げたくなかったが、誰かが困っているようなので早く立ち上がろうと顔を上げる。
 しかし立ち上がることが出来ないでいると、毛玉たちがまたルミナスの腕に絡みつき、その毛玉ごとアシルがルミナスの身体を持ち上げて椅子に座らせてくれた。
「あ……ごめんなさ……」
「ありがとう、だろう。この場合」
 指摘しながら、アシルがニッと笑んでみせた。
 言い間違いを指摘されたのに、何故だか嫌な感じはしない。むしろ、ごめんなさいが口癖になってしまった自分に、この場合に適している言葉まで教えてくれたことは、感謝である。
「あ、りがと……う」
 本当にこの言葉で合っていたのだろうか、ごめんなさいのほうが適切ではないだろうかと不安になっていたが、アシルが「やっぱりありがとうのほうがいいな」と言ってくれたので、安心した。
 自分なんか抱きかかえて重くなかっただろうかと、別の不安が湧いてきた。
 何をしても、次から次へと湧き上がる不安は尽きない。
 それを見抜いたように、アシルが言い放った。
「ルミナス、ちょっと軽いぞ。昨日持ち上げた荷物より軽い気がする。飯、しっかり食ってんのか?」
 自分が重かったのではと危惧している考えに対し、ずばり反対の疑問を突きつけてきたアシルの発言に驚いてしまった。
「んだよ、その顔は」
 アシルが怪訝な表情を浮かべるので、びくりと身体が跳ねてしまった。慌てて弁解するような言葉が口から出てくる。
「わ、わた……し、そんなおなか……減って、いな……いから……大丈夫、なんです……だから……」
 必死に弁解していると、喉がまた掠れてきた。だがそんなことより、早くアシルの機嫌を取らなくてはと必死になっているが、アシルの冷たい視線に睨まれると、言葉がすべて消えたように黙った。
 どんな罵声を浴びてしまうのだろうと、判決を怯えて待つ死刑囚のように身体を縮こまらせた。
 アシルから視線を外そうとすると「こっち向け」と言われるので、視線を外すことは出来ない。
 そんなルミナスの様をどう思ったのか、アシルが「はぁ~~」と盛大にため息を吐いてから、弱弱しい表情を見せた。
「そんな顔すんなよ……。お前を怯えさせたいわけじゃないんだ。むしろ、心の底から喜んで笑ってほしいって願ってさえいるんだ。……今すぐは難しいんだったら、ゆっくりでいい。ルミナスのペースで良いから……さ」
 今にも泣きそうだ。まるで飼い主に見捨てられたペットのような面差しにも見え、ルミナスはとっさにアシルの頭を撫でてしまった。
「…………??」
 アシルがぽかんとした表情でルミナスを見遣った。
 その表情にルミナスは首を傾げたが、ようやく自分が何をしてしまったか気づいて咄嗟に手を引っ込めた。
 アシルから顔を背けると、テーブルの向かい側に座っていたサーナとナインが何故か口元を抑えて身体を震わせている。
 どうしたのだろうかと気になったが、また切ない声が聞こえた。
「お食事……冷めちゃ……ぐすん」
 幼い少女の声に驚いてそちらの方へ向くと、エプロンをした10歳くらいの少女がスープの乗ったトレイを持って、泣きそうな顔をしていた。
「ミンクさん、ごめんなさい! スープ、冷めないうちにいただきましょう! テーブルに置いていただいていいですか?」
 サーナが慌てながら指示を出した。ナインも焦った様子で「お願いします」と言っている。
 ミンクと呼ばれた幼い容姿をした少女は、指示をもらうとまた淡々とした声で「かしこまりました」と返事をした。
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