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15話
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アシルから視線を外すと、テーブルの向かい側に居たサーナとナインが、心配するようにこちらを見ていた。
だが、その視線すらツラく、ルミナスはうつむいて下を向く。
自分の腕と足をマッサージしていた毛玉たちは、なおもマッサージをしてくれていた。
(なんで……なんでみんな、私に優しくするの……?)
この毛玉を振り払ってやれば、自分が優しくされるような人間ではないとここの人たちに教えてやれるだろう。
なのに、出来なかった。
自分に懸命に寄り添ってくれる存在を、振り払うことが出来なかったのだ。
うつむいたまま、震えた声で独りごちる。
「私は……これから、どうすればいいの?」
生きてしまった。生かされてしまった。こんな自分に行き場などない。
そう絶望に暮れていると、ルミナスの顎に指が添えられ、顔を持ち上げられてしまった。
視線の先では、アシルのバイオレット色の瞳がルミナスを見つめていた。
(あれ……? そういえばさっき、アシルの瞳って真っ黒だった気が……)
しかし今は、やや影が落ちているものの、綺麗なバイオレットカラーに戻っていた。
「ここにいろ」
「……え?」
自分がぼやいた言葉をすっかり忘れていたが、そんな言葉にアシルが答えを返していた。
「行き場所がないのなら、オレたちと一緒に此処に住め。オレの傍にいてくれ。お前を幸せにすると、約束するから。……オレと一緒に生きて?」
甘えるようで、どこか縋るような声でルミナスを見つめるアシル。
それは、命令のようにも聞こえるが、願いにも聞こえ、そして懇願に聞こえた。
この人が自分に何を求めているのか分からない。分からないが、それは決して嫌な感情ではないはずだろう。
なのに、怖い。今まで感じ得たこともないような感情を向けられ、逃げ出したい衝動さえ湧き出てくる。
それでも逃げないのは、諦めだったかもしれない。
死のうと宙を舞ったこの身を、どうやってか分からないが助け出された。そして、生かされた。
自分を生かした者に主導権を預けるのは当然だろうという、諦めの感情だ。
ルミナスは諦めから、降伏のつもりで頷いた。
それをどう受け止めたのかを知るつもりはないが、アシルは満面の笑みを作ってルミナスの手の甲に優しい口づけをした。
「それじゃあ、これからよろしくな。ルミナス♡」
これから自分の人生がどう変わっていくかなど、ルミナスはその時考えもしなかったし、興味もなかった。
ただ、疲れてしまった心にとって、アシルたちがいるこの空間は居心地が良く、アシルに従って生きよう、と思った瞬間に緊張の糸が解け、ゆっくり意識を手放していった。
■ ■ ■
「寝ちゃいましたね……」
突然くたりとアシルの腕の中で意識を失ったルミナスに驚き、駆け寄ってきたサーナとナインは、すやすやと眠る彼女の姿に安堵したようだ。
「さっき起きたばかりですが……やはりまだ異次元を抜けた身体の疲労が残っていたのでしょうか」
ナインの言葉に、アシルは「そうかもな」とだけ返し、眠るルミナスを起こさない程度の力加減で、彼女の赤茶けてしまった色の髪を撫でた。
「……ルミナスを『あっちの』世界で見つけた時は、髪の色が真っ黒だった、ような気がする。暗がりだからそう見えただけかもしれないが」
「暗闇でも相手の目の色が見えるあなたの視力で、見間違いはないでしょう。おそらく、その世界でこの方の髪色はあなたと同じ黒だったのでしょう」
「……お揃いだったかもしれないのになぁ……」
「良いじゃないですか。この色のほうが、『ルミナス』っぽくて」
サーナの言葉に、アシルは「うーん」と唸る。
「どんな色でもルミナスが愛おしいことには変わらないんだが……お揃いっていいじゃん?」
「こだわりますね……」
ナインの呆れたような言葉に「うるせえ」と乱暴に返し、アシルはルミナスの身体を抱きかかえて立ち上がった。
だが、その視線すらツラく、ルミナスはうつむいて下を向く。
自分の腕と足をマッサージしていた毛玉たちは、なおもマッサージをしてくれていた。
(なんで……なんでみんな、私に優しくするの……?)
この毛玉を振り払ってやれば、自分が優しくされるような人間ではないとここの人たちに教えてやれるだろう。
なのに、出来なかった。
自分に懸命に寄り添ってくれる存在を、振り払うことが出来なかったのだ。
うつむいたまま、震えた声で独りごちる。
「私は……これから、どうすればいいの?」
生きてしまった。生かされてしまった。こんな自分に行き場などない。
そう絶望に暮れていると、ルミナスの顎に指が添えられ、顔を持ち上げられてしまった。
視線の先では、アシルのバイオレット色の瞳がルミナスを見つめていた。
(あれ……? そういえばさっき、アシルの瞳って真っ黒だった気が……)
しかし今は、やや影が落ちているものの、綺麗なバイオレットカラーに戻っていた。
「ここにいろ」
「……え?」
自分がぼやいた言葉をすっかり忘れていたが、そんな言葉にアシルが答えを返していた。
「行き場所がないのなら、オレたちと一緒に此処に住め。オレの傍にいてくれ。お前を幸せにすると、約束するから。……オレと一緒に生きて?」
甘えるようで、どこか縋るような声でルミナスを見つめるアシル。
それは、命令のようにも聞こえるが、願いにも聞こえ、そして懇願に聞こえた。
この人が自分に何を求めているのか分からない。分からないが、それは決して嫌な感情ではないはずだろう。
なのに、怖い。今まで感じ得たこともないような感情を向けられ、逃げ出したい衝動さえ湧き出てくる。
それでも逃げないのは、諦めだったかもしれない。
死のうと宙を舞ったこの身を、どうやってか分からないが助け出された。そして、生かされた。
自分を生かした者に主導権を預けるのは当然だろうという、諦めの感情だ。
ルミナスは諦めから、降伏のつもりで頷いた。
それをどう受け止めたのかを知るつもりはないが、アシルは満面の笑みを作ってルミナスの手の甲に優しい口づけをした。
「それじゃあ、これからよろしくな。ルミナス♡」
これから自分の人生がどう変わっていくかなど、ルミナスはその時考えもしなかったし、興味もなかった。
ただ、疲れてしまった心にとって、アシルたちがいるこの空間は居心地が良く、アシルに従って生きよう、と思った瞬間に緊張の糸が解け、ゆっくり意識を手放していった。
■ ■ ■
「寝ちゃいましたね……」
突然くたりとアシルの腕の中で意識を失ったルミナスに驚き、駆け寄ってきたサーナとナインは、すやすやと眠る彼女の姿に安堵したようだ。
「さっき起きたばかりですが……やはりまだ異次元を抜けた身体の疲労が残っていたのでしょうか」
ナインの言葉に、アシルは「そうかもな」とだけ返し、眠るルミナスを起こさない程度の力加減で、彼女の赤茶けてしまった色の髪を撫でた。
「……ルミナスを『あっちの』世界で見つけた時は、髪の色が真っ黒だった、ような気がする。暗がりだからそう見えただけかもしれないが」
「暗闇でも相手の目の色が見えるあなたの視力で、見間違いはないでしょう。おそらく、その世界でこの方の髪色はあなたと同じ黒だったのでしょう」
「……お揃いだったかもしれないのになぁ……」
「良いじゃないですか。この色のほうが、『ルミナス』っぽくて」
サーナの言葉に、アシルは「うーん」と唸る。
「どんな色でもルミナスが愛おしいことには変わらないんだが……お揃いっていいじゃん?」
「こだわりますね……」
ナインの呆れたような言葉に「うるせえ」と乱暴に返し、アシルはルミナスの身体を抱きかかえて立ち上がった。
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