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24話
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傍らで待機していたアシルは呆れたようにそう言い返してから、「ほんじゃま」と言いながら、ベッドで身体を起こしたルミナスをまた抱きかかえあげた。
「ひゃっ」
昨日から何度も抱きかかえられているが、やはりまだ慣れない。眼前いっぱいに端正な顔立ちが写り込むのは、正直心臓に悪い。
そんなルミナスの顔を見て、何かを察したように満足そうに微笑むアシル。
心を見透かされたような気持ちが。なんだか嫌だった。だが。
「ルミナスの怒った顔も可愛いな」
アシルの発言で、不機嫌な表情が顔に出ていたのかと慌てていると、耳元で心臓が震えそうになるほど優しい低音ボイスが囁かれる。
「お前の表情なら、たとえ微細な変化でも見逃さないから、気をつけろよ」
なるほど、とルミナスは先ほどのサーナの言っていたことの意味を理解した。
(本当にデリカシーがないな)
そう思わざるを得なかった。
そういうのは、出来れば言わずにそっとしておいてもらいたかったからだ。
こんなことを言われてしまえば、手足が不自由なく動いていればすぐにでも逃げ出しただろう。裸足のままでも。
「アシル、気持ち悪いですよ」
ルミナスの耳元で囁く程度の小声だったと思うが、隣を歩くサーナの耳には届いていたらしい。
とんでもない地獄耳だが、彼女のその言葉には同意しかない。
「オレのどこが気持ち悪いんだよ。な、ルミナス?」
突然アシルから同意を求められたルミナスは、しかし同意をすることも出来ず、困りながら視線をそらせた。
「……え、ルミナスも気持ち悪いと思ったのか? なんでだよ、なあ」
「そういうところですよ、アシル」
「どういうところ!?」
何も言葉を返すことが出来ずにいるルミナスの代わりに告げたサーナの言葉に、アシルが焦った様子を見せる。
そんなアシルに、サーナは呆れたようなため息を吐いた。
「……ルミナスに嫌われたくなかったなら、もう少し女心を……いえ、デリカシーを身に付けてください」
サーナは、本当はアシルに『女心を理解しろ』と言おうとしたのだろう。しかしそう言わずに『デリカシーを身に付けろ』と言い直したということは、アシルの配慮が足らないのは女性に対してだけではないのだろうとルミナスは理解した。
食堂に来ると、昨日と同じように豪奢な室内が、変わらず埃一つなさそうなほど綺麗に磨き上げられていた。
(ここに来るだけで気持ちが良くなるな……すごい)
室内の心地よさに感動していると、昨日と同じ席に座らされ、当然のようにその隣の席にアシルが腰を下ろした。
しかし一つだけ昨日と違う光景がある。
「……ナインさんは?」
向かい側の席にサーナが座るも、その横には昨日ナインが座っていた椅子自体がなかった。
「ナインは今日は朝の鍛錬をしております」
「た、鍛錬……?」
「朝練のようなもんだ」
ルミナスの疑問に、サーナがどう返そうとか悩んでいると、隣に座っていたアシルが口を挟んで教えてくれた。
「朝練のようなもんだ。あいつは真面目過ぎるから、朝決まった時間に起きて決まった時間にトレーニングをするのが日課になっているんだ」
「トレーニング……毎日? すごい……」
素直にそう感心すると、アシルがムッと拗ねたような表情で続けた。
「オレも毎日トレーニングしているけどな!」
まるでナインに対抗するかのような嫉妬心を露わにするアシルに、一瞬呆気に取られてしまったが、すぐにそれは笑い声に変わってルミナスの口から出てきた。
アシルとサーナはやさしい笑みで、笑い続けるルミナスを見守っていた。
しばらく笑っていたが、そんな二人のあたたかい眼差しに気づくと、慌てて顔を引き締めた。
「もっと笑っていてもいいのに」
サーナが物足りなさそうに眉尻を下げて、可愛く文句を言う。
しかし、人の欠点を笑うなど良くないという思いから、また「すみません」という言葉が出てしまった。
「お前は口を開けば謝るな」
アシルの怒ったような声に、身体が震えてしまった。
「ひゃっ」
昨日から何度も抱きかかえられているが、やはりまだ慣れない。眼前いっぱいに端正な顔立ちが写り込むのは、正直心臓に悪い。
そんなルミナスの顔を見て、何かを察したように満足そうに微笑むアシル。
心を見透かされたような気持ちが。なんだか嫌だった。だが。
「ルミナスの怒った顔も可愛いな」
アシルの発言で、不機嫌な表情が顔に出ていたのかと慌てていると、耳元で心臓が震えそうになるほど優しい低音ボイスが囁かれる。
「お前の表情なら、たとえ微細な変化でも見逃さないから、気をつけろよ」
なるほど、とルミナスは先ほどのサーナの言っていたことの意味を理解した。
(本当にデリカシーがないな)
そう思わざるを得なかった。
そういうのは、出来れば言わずにそっとしておいてもらいたかったからだ。
こんなことを言われてしまえば、手足が不自由なく動いていればすぐにでも逃げ出しただろう。裸足のままでも。
「アシル、気持ち悪いですよ」
ルミナスの耳元で囁く程度の小声だったと思うが、隣を歩くサーナの耳には届いていたらしい。
とんでもない地獄耳だが、彼女のその言葉には同意しかない。
「オレのどこが気持ち悪いんだよ。な、ルミナス?」
突然アシルから同意を求められたルミナスは、しかし同意をすることも出来ず、困りながら視線をそらせた。
「……え、ルミナスも気持ち悪いと思ったのか? なんでだよ、なあ」
「そういうところですよ、アシル」
「どういうところ!?」
何も言葉を返すことが出来ずにいるルミナスの代わりに告げたサーナの言葉に、アシルが焦った様子を見せる。
そんなアシルに、サーナは呆れたようなため息を吐いた。
「……ルミナスに嫌われたくなかったなら、もう少し女心を……いえ、デリカシーを身に付けてください」
サーナは、本当はアシルに『女心を理解しろ』と言おうとしたのだろう。しかしそう言わずに『デリカシーを身に付けろ』と言い直したということは、アシルの配慮が足らないのは女性に対してだけではないのだろうとルミナスは理解した。
食堂に来ると、昨日と同じように豪奢な室内が、変わらず埃一つなさそうなほど綺麗に磨き上げられていた。
(ここに来るだけで気持ちが良くなるな……すごい)
室内の心地よさに感動していると、昨日と同じ席に座らされ、当然のようにその隣の席にアシルが腰を下ろした。
しかし一つだけ昨日と違う光景がある。
「……ナインさんは?」
向かい側の席にサーナが座るも、その横には昨日ナインが座っていた椅子自体がなかった。
「ナインは今日は朝の鍛錬をしております」
「た、鍛錬……?」
「朝練のようなもんだ」
ルミナスの疑問に、サーナがどう返そうとか悩んでいると、隣に座っていたアシルが口を挟んで教えてくれた。
「朝練のようなもんだ。あいつは真面目過ぎるから、朝決まった時間に起きて決まった時間にトレーニングをするのが日課になっているんだ」
「トレーニング……毎日? すごい……」
素直にそう感心すると、アシルがムッと拗ねたような表情で続けた。
「オレも毎日トレーニングしているけどな!」
まるでナインに対抗するかのような嫉妬心を露わにするアシルに、一瞬呆気に取られてしまったが、すぐにそれは笑い声に変わってルミナスの口から出てきた。
アシルとサーナはやさしい笑みで、笑い続けるルミナスを見守っていた。
しばらく笑っていたが、そんな二人のあたたかい眼差しに気づくと、慌てて顔を引き締めた。
「もっと笑っていてもいいのに」
サーナが物足りなさそうに眉尻を下げて、可愛く文句を言う。
しかし、人の欠点を笑うなど良くないという思いから、また「すみません」という言葉が出てしまった。
「お前は口を開けば謝るな」
アシルの怒ったような声に、身体が震えてしまった。
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