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出会い
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私が侯爵家に『買われて』来てから、そろそろ半年になる。
半年前まで私は貴族街の外れの『小屋』で、貴族たちの『慰み者』としてこの身体を弄ばれていた。
まだ幼かった私は、両親が殺され身寄りがなくなり、小屋に売られた。
その精神的ショックからか、私は自分の名前を忘れてしまった。
一夜この身を無責任に弄ぶ貴族にとって、私に名前があるかないかなどは些末なことであった。
『売られている商品』に名前など必要ない。私もそう思っていた。
しかし半年前、その小屋の責任者を検挙したスタンフォール侯爵家のダイナ様が、私の身の上に同情してくれたらしく、「オレが買う」と言って私を侯爵家へ招いてくれた。
私にとっては、自身の身体を売る場所と相手が変わっただけで、それ以上ではなかった。……はずだ。
なのに、このダイナ・スタンフォール侯爵という殿方は、やや変わっているようだ。
この半年間、まだ私の身体を弄ぶことがないのだ。
話は半年前に遡る。
ダイナ・スタンフォール侯爵……見上げると私の首が疲れる程度に高い背丈に、くしゃくしゃの癖の強い黒い短髪と紫色の瞳が印象的な美丈夫だ。
私は、このダイナ・スタンフォールという男に買われたのは間違いないはずだ。ならばその役目は果たさなければと、毎夜「抱いてはくれないのか」と尋ねる。
そのたびスタンフォール侯爵閣下が言うのは「抱く気はない」だった。
「それは、困ります……」
私は懇願した。
抱かれないというコトは、自分は役立たずだからだ。そうなればお役御免の可能性もある。
ここを追い出されてしまえば、私に行くところなど無い。
私にはこの道しか、生きる術がないのだから。
必死に伝えると、侯爵閣下は何故か長いため息を吐き、私の頭を優しく撫でた。
「わかった。じゃあ、身体を触るだけ、な」
そう言って侯爵閣下は私の胸に優しく触れ、さわさわと服の上から軽く撫でた。
「これで満足か?」
不思議なことを言う。私が満足したいのではなく、閣下を満足させたいのだ。
それなのに、満足かどうか尋ねた閣下は、そのまま行為を終えようとしたので驚いた。
「ま、待ってください。私はまだ何もされていません!」
「しただろう。胸を触った」
「そんなことであなたが満足されているとは思いません。私では、役立たずでしょうか?」
「誰がそんなことを言った?」
「誰も言っていません。ですが、私は、玩具です。玩具で遊ばないということは、その玩具に興味がないということです。それでは、私は役立たずということです」
そう伝えると、閣下は整ったその顔を不快そうにしかめた。
「君は玩具ではない」
「ですが、あなたは私を買いました」
「君の身体を弄ぶためではない」
「ではなぜ?」
「オレとしては、君を保護したにすぎないつもりだ」
「……保護?」
知らないわけではないが、聞きなれない単語だ。だから首を傾げると、閣下はやや思案した。
「そうだな。ここに居れば、君は身体を売ることがない。これから君が身体を売らなくても生きていける場所を探すまで、ここに置いておくということだ」
「?」
「なんだ、その顔は」
「身体を売らなくても生きていける方法なんて、ないですよ?」
「そんなことはない。現にオレは身体を売ったことなど、一度もない」
「それは、侯爵閣下が買い手だからでしょう。私は、閣下とは立場が違いすぎます」
「同じ人間だ」
「違います」
頑なにそれを受け入れまいとしていると、閣下は疲れたように溜息を吐いた。
「良いから、君は何も考えず、身体と心を癒すことだけ考えろ」
癒せ、と言われてますます意味が分からない。別に疲れてなどいないからだ。
それでも、それが命令ならば従うしかない。
ここを追い出されるわけにはいかないからだ。
半年前まで私は貴族街の外れの『小屋』で、貴族たちの『慰み者』としてこの身体を弄ばれていた。
まだ幼かった私は、両親が殺され身寄りがなくなり、小屋に売られた。
その精神的ショックからか、私は自分の名前を忘れてしまった。
一夜この身を無責任に弄ぶ貴族にとって、私に名前があるかないかなどは些末なことであった。
『売られている商品』に名前など必要ない。私もそう思っていた。
しかし半年前、その小屋の責任者を検挙したスタンフォール侯爵家のダイナ様が、私の身の上に同情してくれたらしく、「オレが買う」と言って私を侯爵家へ招いてくれた。
私にとっては、自身の身体を売る場所と相手が変わっただけで、それ以上ではなかった。……はずだ。
なのに、このダイナ・スタンフォール侯爵という殿方は、やや変わっているようだ。
この半年間、まだ私の身体を弄ぶことがないのだ。
話は半年前に遡る。
ダイナ・スタンフォール侯爵……見上げると私の首が疲れる程度に高い背丈に、くしゃくしゃの癖の強い黒い短髪と紫色の瞳が印象的な美丈夫だ。
私は、このダイナ・スタンフォールという男に買われたのは間違いないはずだ。ならばその役目は果たさなければと、毎夜「抱いてはくれないのか」と尋ねる。
そのたびスタンフォール侯爵閣下が言うのは「抱く気はない」だった。
「それは、困ります……」
私は懇願した。
抱かれないというコトは、自分は役立たずだからだ。そうなればお役御免の可能性もある。
ここを追い出されてしまえば、私に行くところなど無い。
私にはこの道しか、生きる術がないのだから。
必死に伝えると、侯爵閣下は何故か長いため息を吐き、私の頭を優しく撫でた。
「わかった。じゃあ、身体を触るだけ、な」
そう言って侯爵閣下は私の胸に優しく触れ、さわさわと服の上から軽く撫でた。
「これで満足か?」
不思議なことを言う。私が満足したいのではなく、閣下を満足させたいのだ。
それなのに、満足かどうか尋ねた閣下は、そのまま行為を終えようとしたので驚いた。
「ま、待ってください。私はまだ何もされていません!」
「しただろう。胸を触った」
「そんなことであなたが満足されているとは思いません。私では、役立たずでしょうか?」
「誰がそんなことを言った?」
「誰も言っていません。ですが、私は、玩具です。玩具で遊ばないということは、その玩具に興味がないということです。それでは、私は役立たずということです」
そう伝えると、閣下は整ったその顔を不快そうにしかめた。
「君は玩具ではない」
「ですが、あなたは私を買いました」
「君の身体を弄ぶためではない」
「ではなぜ?」
「オレとしては、君を保護したにすぎないつもりだ」
「……保護?」
知らないわけではないが、聞きなれない単語だ。だから首を傾げると、閣下はやや思案した。
「そうだな。ここに居れば、君は身体を売ることがない。これから君が身体を売らなくても生きていける場所を探すまで、ここに置いておくということだ」
「?」
「なんだ、その顔は」
「身体を売らなくても生きていける方法なんて、ないですよ?」
「そんなことはない。現にオレは身体を売ったことなど、一度もない」
「それは、侯爵閣下が買い手だからでしょう。私は、閣下とは立場が違いすぎます」
「同じ人間だ」
「違います」
頑なにそれを受け入れまいとしていると、閣下は疲れたように溜息を吐いた。
「良いから、君は何も考えず、身体と心を癒すことだけ考えろ」
癒せ、と言われてますます意味が分からない。別に疲れてなどいないからだ。
それでも、それが命令ならば従うしかない。
ここを追い出されるわけにはいかないからだ。
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