(休載中)下町のグランと公爵家のオリヴァー

rifa

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オリヴァーの昔話

オリヴァーとミレーの夜中会話・6

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 もう寿命だった、と口では言ったが、そのボロボロの本を見た時、双眸から涙がこぼれ出るのが止められなかった。
 勝手に出てきた。
 悲しいとか、泣きたいとか思っているわけではない。
 悲しくないわけではないが、諦めていたはずの理解に反し、感情がそれを認めたくなかったのだ。
 声は出なかったが、涙だけが無限にあふれ出てくる。おして、それを止める気力もない。
 いま自分がどのような気持ちなのか、自分のことなのにまったくわからなかった。
 ただ、手に持っていたボロボロの本を、オリヴァーの手が優しく撫でた。
 彼もなにも言わなかった。
 だが、涙でゆがんだ視界からなんとか見えた彼の顔は、どこか慈愛に満ちていた。
「……オレも、この本読んでみようかな」
「え、でも、もうこれは読める状態じゃ……」
「この本は、カバンと一緒にちゃんと供養する。今までミレーを支えてくれたものだからな。オレは今、このカバンと本に約束したんだ。……今までこいつらがミレーの気持ちの拠り所になっていたんなら、今度はオレが代わりになってやるってな」
「……ぁ」
 そうか、とミレーは腑に落ちた。
 ボロボロになった大切なカバンと本が、その前はミレーの部屋にあった数少ない服や本や小物が処分された時悲しかったのは、今までつらいと感じていたミレーの心を支えてくれていたものたちが殺されたような気持ちになったからなのだ。
 自分は彼らを守れなかった。
 そう思うだけで、自分の胸が張り裂けそうだったのだ。
 否、ミレーの部屋の数少ない宝物が義妹の手によって処分されたときに、心はほとんど壊れていたのだろう。
 だから、今この本とカバンを見ても、涙を零す正常な感情が残っていなかったのだ。
「……りがとう」
 そんな自分の気持ちに気づいたとき、ようやく自分が、ずっとミレーを支えてくれていたものたちに感謝を伝えることが出来た。
「ありが、とう。ずっと、ありがと……う……ッ」
 ボロボロのカバンと本を抱きしめるミレーの身体を、オリヴァーがやさしく抱きしめてくれた。
 彼は何も言わずに、ミレーが落ち着くまでずっとそうしてくれていた。
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