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オリヴァーの昔話
幼少期の出会い・7
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ルイーザとミレーは一か月この下町に滞在することとなる。
貴族の観光にしてはやや長いかもしれないが、主人のいない母子だけの旅行なら、そういうことも可能なのかなと思った。
公務もある男主人が、海外に渡るわけでもないのに妻子と一緒に一か月も家を空けるのはなかなか難しいのだとマルクは言う。
「お前の親父さんはしょっちゅう下町に来るよな?」
「……まぁ、ね」
「お前もな、マルク」
「……友だちがいるんだから、来たくなるのは当たり前じゃないかい?」
マルクの口から「友だち」と言われたのは初めてだったので、グランは呆気に取られた。
グランのほうはもちろん、マルクのことを、貴族なのに下町の子どもと混じって普通に遊ぶ「風変わりな友だち」と思っていたが、マルク本人がグランを友だちと認めてくれたのはこれが初めてであった。
それが嬉しかったのか、グランの心は少し弾んだ。
「ともだちってなぁに?」
今日もルイーザのもとを訪れるロザリーに付き添って、グランとマルクは宿を訪れていた。
だが、グランとマルクの目的は、ロザリーをルイーザのもとに送り届けるのとは別の目的があった。
「「ミレー!!」」
クローバー母子がこの町に来て一週間経った。
第一印象こそ最悪だったが、わずか数日で下町に馴染むミレーに、グランもマルクも感心した。
マルクの父・アンドロに言わせると、グランも同じようなものだが、そのようなこと露も知らないグランは、素直に感心していた。
「友だちっていうのは、オレとマルクのような……仲のいい関係のことだよな?」
「なぜ疑問形なんだ」
自分も友だちと思っている、と言って良いのか迷った末そう訊ねれば、マルクは不服そうな声で返してきた。
そんな気まずくなりかけた空気を崩したのは、やはりミレーの声だった。
「わたしもともだち?!」
キラキラと輝く瞳でグランとマルクを見やるミレーに、二人は苦笑した。
「そうだな、友だちだよ」
「とっても大切なお友だち」
そう返すと、ミレーは「きゃあ!」と嬉しそうな声をあげ、ジャンプして喜んだ。
「ミレー、下の階に響くから、飛びはねてはダメよ!」
慌てて部屋から出てきたルイーザにたしなめられたが、ミレーは「わたし、グランとマルクの、とってもたいせつなおともだちなの!」
そう喜ぶ娘に、ルイーザは負けたと言って笑っていた。
一緒に顔を出したグランの母ロザリーも、何年かぶりに朗らかに笑っている顔を見ることが、グランは出来た。
そうして、わずか一週間の間にグランの心はすっかりミレーに傾倒していったのだ。
マルクも同じようで、どっちがミレーの家に早く行くか競い合っている。
「はやく、母さん、早く!」
グランは普段、そのように母を急かしたり我が儘を言ったりする子ではないのだが、ミレーがマルクに取られてしまうという焦りが、彼にそのような言動をとらせた。
ロザリーは下町で過ごすうちに体調が悪化し、最近ではすっかり心を閉ざして寝込んでいたのだが、ルイーザがミレーとこの町に来てから、ロザリーはすっかり元気になった。
とはいえ仕事が出来るほどでない。
しかしこの頃、家の稼ぎはグランが請け負っていたので、ミレーの下へ会いに行く以外の時間は仕事をしていた。
ロザリーは毎日ルイーザの下へ訪ねていくので、朝母とともにルイーザのもとへ行き、寝起きなのにしっかり身支度をしたミレーに挨拶をしてから仕事に出かけた。
休みの日はそのままミレーを広場に誘い出してみんなで遊んだ。
仕事中にマルクがミレーとの距離を縮めようとしているのではないかと考えたことが、なくもないが、やはり無かった。
マルクも毎日下町に来ることが出来るわけではない。泊りで何泊かしていくこともあるが、わざわざ貴族街から馬車を使ってこなくてはいけないのだ。
だから、グランのほうがミレーと会っている時間は多かった。
ロザリーが毎日ルイーザの下を訪れるので、卑怯かなと思いながらも、状況に甘んじて一歩リードさせてもらったと思っていた。
貴族の観光にしてはやや長いかもしれないが、主人のいない母子だけの旅行なら、そういうことも可能なのかなと思った。
公務もある男主人が、海外に渡るわけでもないのに妻子と一緒に一か月も家を空けるのはなかなか難しいのだとマルクは言う。
「お前の親父さんはしょっちゅう下町に来るよな?」
「……まぁ、ね」
「お前もな、マルク」
「……友だちがいるんだから、来たくなるのは当たり前じゃないかい?」
マルクの口から「友だち」と言われたのは初めてだったので、グランは呆気に取られた。
グランのほうはもちろん、マルクのことを、貴族なのに下町の子どもと混じって普通に遊ぶ「風変わりな友だち」と思っていたが、マルク本人がグランを友だちと認めてくれたのはこれが初めてであった。
それが嬉しかったのか、グランの心は少し弾んだ。
「ともだちってなぁに?」
今日もルイーザのもとを訪れるロザリーに付き添って、グランとマルクは宿を訪れていた。
だが、グランとマルクの目的は、ロザリーをルイーザのもとに送り届けるのとは別の目的があった。
「「ミレー!!」」
クローバー母子がこの町に来て一週間経った。
第一印象こそ最悪だったが、わずか数日で下町に馴染むミレーに、グランもマルクも感心した。
マルクの父・アンドロに言わせると、グランも同じようなものだが、そのようなこと露も知らないグランは、素直に感心していた。
「友だちっていうのは、オレとマルクのような……仲のいい関係のことだよな?」
「なぜ疑問形なんだ」
自分も友だちと思っている、と言って良いのか迷った末そう訊ねれば、マルクは不服そうな声で返してきた。
そんな気まずくなりかけた空気を崩したのは、やはりミレーの声だった。
「わたしもともだち?!」
キラキラと輝く瞳でグランとマルクを見やるミレーに、二人は苦笑した。
「そうだな、友だちだよ」
「とっても大切なお友だち」
そう返すと、ミレーは「きゃあ!」と嬉しそうな声をあげ、ジャンプして喜んだ。
「ミレー、下の階に響くから、飛びはねてはダメよ!」
慌てて部屋から出てきたルイーザにたしなめられたが、ミレーは「わたし、グランとマルクの、とってもたいせつなおともだちなの!」
そう喜ぶ娘に、ルイーザは負けたと言って笑っていた。
一緒に顔を出したグランの母ロザリーも、何年かぶりに朗らかに笑っている顔を見ることが、グランは出来た。
そうして、わずか一週間の間にグランの心はすっかりミレーに傾倒していったのだ。
マルクも同じようで、どっちがミレーの家に早く行くか競い合っている。
「はやく、母さん、早く!」
グランは普段、そのように母を急かしたり我が儘を言ったりする子ではないのだが、ミレーがマルクに取られてしまうという焦りが、彼にそのような言動をとらせた。
ロザリーは下町で過ごすうちに体調が悪化し、最近ではすっかり心を閉ざして寝込んでいたのだが、ルイーザがミレーとこの町に来てから、ロザリーはすっかり元気になった。
とはいえ仕事が出来るほどでない。
しかしこの頃、家の稼ぎはグランが請け負っていたので、ミレーの下へ会いに行く以外の時間は仕事をしていた。
ロザリーは毎日ルイーザの下へ訪ねていくので、朝母とともにルイーザのもとへ行き、寝起きなのにしっかり身支度をしたミレーに挨拶をしてから仕事に出かけた。
休みの日はそのままミレーを広場に誘い出してみんなで遊んだ。
仕事中にマルクがミレーとの距離を縮めようとしているのではないかと考えたことが、なくもないが、やはり無かった。
マルクも毎日下町に来ることが出来るわけではない。泊りで何泊かしていくこともあるが、わざわざ貴族街から馬車を使ってこなくてはいけないのだ。
だから、グランのほうがミレーと会っている時間は多かった。
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