貧弱テイマー。理不尽にパーティ追放されたので強くなるために魔王を召喚しようと思ったら第六天魔王が召喚されたので天下統一します。

農民サイド

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第1章 第六天魔王召喚

第4話 第六天魔王の力

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 ノブナガと熱い契約を交わした僕は、正式にノブナガの召喚者として認められたらしい。らしいというのも体感で感じられるものなど特になく、あるのはお尻の痛みととてつもない悲しみだけだ。ちなみに契約方法は召喚されたものによって異なるようで、精霊種……いわゆるカーバンクルや、フェアリーなど実態を持たないものは魂で結ばれたり、ドラゴンみたいな幻獣種と呼ばれるものは血肉を分け合ったりと色々あるそうだが、ノブナガは肉体的に交わることで契約が出来るそうだ……

「これで貴様とわしは、肉体、魔力、魂が深く繋がり本当の意味での一心同体となった。そして……」

 ノブナガは、また僕の唇を奪い、魔力を吸い上げる。

「わしは、貴様からこうして定期的に魔力をもらう、でなければ動けなくなるから注意するのだ」

 散々ベッドの中で弄ばれ、もはや反論する気にもなれない。
 
「なんだ貴様、わしの顔をじっと見て。惚れたか?」
「いや、惚れんわ! 僕に男の趣味はないよ!」
「そうか、わしはどちらでも構わんぞ」
「あ、そうですか……」

 はあ、これから先が思いやられるぜ……

「さて、魔力も十分もらったことだ。少しこの世界に慣れておかんとな……しえる、この辺りに強い敵はおるか?」
「強い敵? いや、無理無理無理! 僕、1人じゃゴブリンも倒せないよ」
「ごぶりん? なんだそれは」
「あ、ええーと、こんぐらいのサイズの緑色したモンスターだよ」

 僕は、身振り手振りでゴブリンの特徴を伝える。

「なんだ、あまり強そうな感じがせんな。わしはもっとでかくて強いやつがいいが……まあ、貴様の戦い方も目にして起きたいから、それで我慢してやるか……さっさと案内しろ」

 なんて勝手なやつなんだ……僕は乱れた服装をなおしながら、ベッドから出る。

「って、その前にノブナガは服を着ろよ」
「ああ、そうだったな」

 そう言ってノブナガは、パチンと指を鳴らす。すると、今まで全裸だった体に服が現れた。この辺では見かけないダボッとした不思議な服装だった。

「変わった服だね」
「わしが、記憶している服でもっとも地味なものを選んだ。目立つと貴様が困るだろう?」
「ああ、まあ……」

 確かに、今は静かに行動していたほうがいいな。下手したら街を追い出されかねないし……もう少し穏便にクビにされるべきだったなと今になっては後悔している。なにせ、ギオウたちの中じゃ僕はクビに逆上して仲間を襲ったことになっているし……

「まあ、いいや。行こうかノブナガ」
「ああ」


 ◇◇◇



 僕たちがこれから向かうのは、『エシュロニア』と言う国の南部の街から通門を越えて国外に出た、始まりの森と言われる森だ。ここではゴブリンのような弱いモンスターしか出ないため、比較的僕のような弱い人間でもなんとかなる場所だ。

「ノブナガ、あれがゴブリンだよ」

 森に入ってしばらく歩くと、緑色した人間の子供サイズのモンスターを見つける。目に見えるのは4体で周囲を警戒しながらこちらへと向ってくる。

「ほう……弱いな」

 確かにノブナガの言う通り、ゴブリンは大して強いモンスターではない。動きは単調だし、木の棒でしか攻撃してこないので1体処理するのは難しくない。しかし、やつらの本当の恐ろしさは巧みな連携にあり、意思疎通をしているようには見えないのにこちらを追い詰めるような動きをする。それで毎年多くの初心者が狩られているのもまた事実だ。

「油断しないでね。ノブナガ」
「ふん、無論だ……そもそも、余程の実力差がなければ相手を見下すことなど、わしにはない」
「そ、そうですか……なら良いのですが」

 一生かかっても僕にノブナガを言い負かすことが出来ないだろう。それぐらいノブナガの言葉に自信が溢れていた。僕とは全く正反対だ。

「さて、貴様はそこで見ていろ」
「え、いや、僕も手伝うよ!」
「せっかく、現し世に戻ってきたばかりだというのに、また地獄へと返されてはかなわんからな。貴様は手出しをするな」
「あ、はい」

 遠回しに僕が死ぬって言いたいのか? いや、僕が死ぬとノブナガも消えるのか……なら、それを利用すればもう少し扱いやすくなるかも知れないな……あとで試してみよう。

「見てるのはいいけど、ノブナガ武器は?」
「いらぬ」
「え? はっ? ちょっとそれは……」

 僕が言い終わる前に、ノブナガは高速でゴブリンの前まで到着していた。

「消えろっ! 雑魚が!」

 突然目の前に現れたノブナガの姿に驚いていたゴブリンは、目を見開いたままノブナガの拳の一撃を喰らい頭を失った。残った3体のゴブリンは、それぞれノブナガから距離を取り一斉に手に持った木の棒で殴りかかる。

「ふんっ!」

 ノブナガは、片足を軸に反対の足を360度振り回し、ゴブリンたちを蹴り飛ばす。さらに吹き飛ばされたゴブリン1体、1体を純に踏み潰すとあっと言う間に4体のゴブリンを倒してしまった。

「す、すげえ……」

 僕は素直に感心した。ゴブリンといえども4体を一瞬で倒してしまったことは、並大抵の冒険者でも難しい。しかもそれを、武器も使わず素手で行ったのだから、なおすごい。

「貴様にも、いずれはこれ以上の働きを期待しているぞ」
「は、はあ……」

 僕には、できそうな気がしないなと内心思っていたが、ノブナガの前で文句を言うとまた怒られそうなのでやめた。そもそも、召喚獣のノブナガと人間の僕じゃ基本スペックが違いするぎる気もするのだが……

「ところで貴様、このゴブリンも召喚できるのか?」
「え、出来るけど。召喚できる召喚獣は、多分一体だけだよ?」
「それは誰が決めたのだ?」
「いや、誰が決めたとかじゃないけど……不可能なんだ」
「なぜだ?」
「僕のギフトは、召喚に7日間かけて魔力を注いだ魔法陣を描き、その魔法陣と召喚したいモンスターの一部を媒介にしてモンスターを召喚できる。だけど、召喚されたモンスターは3日間しか使役できない。3日たつと消えてしまうんだ」

 7日かけて魔力を込めるのはモンスターを召喚するために必要な魔力を貯めるため。これが足りないと召喚が不完全になってしまう。さらに言えばこれは、最弱の精霊カーバンクルを召喚する際に必要な日数だ。もしゴブリンを召喚しようとするなら7日じゃ魔法陣の作成が終わらないだろう。もっとも、僕の魔力量がとてつもなく増えるとか、誰かが代わりに魔法陣の構造を理解して魔力を込めてくれるのならば話は別だけど……あいにく、魔法陣はサモナーにしか扱えない。昔、試したがだめだった。

「それは試したのか?」
「いや、試したことはないよ? そもそも、召喚したらすぐにでも出発しなきゃだったし、最初の7日もみんながクエストこなしてる間に、僕だけ残って1人で書いてただけだしね……」
「それなら、わしはどうだ? 貴様はなにもせずにわしを召喚した……これはどう説明する?」
「ど、どうって……」

 そもそも、ノブナガは僕が召喚したのかどうかさえ怪しいのだ。確かに契約したせいかノブナガの存在を強く感じることは出来るようになったが、それとこれとでは話が違う……気がする。

「ああ、せめてあの日記帳が残っていればな……」
「日記帳?」
「うん、結構分厚くて古い日記帳があったんだけど、それにノブナガと出会った遺跡の場所が書かれてたんだ……まあ、ノブナガも知ってると思うけど遺跡って名ばかりの何もない空間だったけど」

 あの時は、暗くて分からなかったけどノブナガが出てきてすぐは魔力の残滓で内部が見えたのだが、幅が僕の両手よりちょっと長いぐらいだったから2メートルぐらいで、3メートル程度の奥行きと高さが5メートルぐらいの狭い場所だった。しかも、中には何もなく、魔法陣すら描かれてなかったのでますますノブナガの存在が怪しい。

「それを読み解けば、もう少しサモナーの使い方も分かったかも知れないのに……あ、やっべディーナさんに本なくしたってまだ言ってない! お、怒られる……」
「ふん、わしが言ったのはそうではない。なんでもとにかく試せ、死ぬ以外は失敗とは呼ばん。なんでもやれ」

 まあ、やってやれないこともないか……? こうしてノブナガと出会えてのもなにかしらの切っ掛けあってのこと、だったらノブナガの言う通り、とにかくやってみるか。

「分かったよノブナガ、戻ったらゴブリンで色々試してみるよ!」

 そうと決まれば死体漁りだ、爪とか牙とか色々回収していこう。
 
――ドスン。

 突如、聞こえたのは大きな地響き。続いて聞こえてきたのは木々をなぎ倒す音。

「ノブナガ! 逃げようだ」

 僕がノブナガの方を振り向くと同時に、地響きが目の前で止まった。

「グギャアアアアアアアアアアアアア!!」

 辺りを揺らす咆哮に僕は思わず、その場で体勢を崩した。トロールの持つ威嚇という能力のせいだ。モンスターは僕ら人間と同じでギフトとまではい言わないが何かしら特出した能力をもっている。トロールが持つのは威嚇と、超再生だ。威嚇は僕のような弱者の動きを止めてしまう、超再生は浅い傷ならば即座に再生してしまう。

「ノ、ノブナガ……」

 僕は力の限りを尽くしてノブナガへと手を伸ばす。しかし、ノブナガはそんな僕を見て笑っていた。

「丁度いい、貴様にどれほどの覚悟があるか見てやろう。そこから一歩でも動いて見せれば、わしが助けてやる。だが……

 はあ? こいつ、こんな時に何いってんだ……やっぱ頭がおかしいただの変態じゃないか。

「ノ、ノブナガ……僕が死んだら、おまえも地獄ってやつに戻るんじゃ……」

 これなら、ノブナガだって馬鹿なこと言わずに助けてくれるだろうと思っていた。しかし、ノブナガの答えは僕の想像の範囲を越えていた。

「これで貴様が死ぬようなものならば、わしは大人しく地獄に帰ってやろう。さあ、選べ! ここで死ぬか、わしと生きるか!」

 選択肢がおかしいだろう……なんでおまえと生きる前提なんだよ……ああ、短い間だってけど、こんな人生悪くないかなって思えてきたわ。僕は生まれてから今日までのことをすべて思い出していた。これが走馬灯ってやつかと呑気に考えていると、ノブナガとの熱いベッドシーンが蘇ってきた……

「こちとら童貞のまま死ねるかああああああああああ」

 半ば半狂乱になりながら、立ち上がりノブナガへと向かうとその余裕たっぷりで僕を値踏みするような目をしていた顔面を思いっきり殴りつけた。

「ふざけんな! 経験人1人、しかも男って……そんなんで死ねるかボケッ!! 早くトロール倒してこいやっ!」
「……ぐっ……それでこそ、わしが見惚れた男よ!」

 ノブナガは、嬉しそうな声を上げながら立ち上がる、よく見ると手元には黄金の鞘と赤い紐が結ばれた変わった武器を持っていた。

「しえるよ! とくと見よ、これが第六天魔王の力よ!」

 そう言うとノブナガは鞘から剣を抜いた。若干曲線を描いたその剣は美しくとても武器には見えなかった。そのまま、剣を構え大きく地を蹴ったと思うと、30メートルはあろうトロールを一撃で縦に両断した。

「き、綺麗だ……」

 ノブナガが剣を鞘に収めると同時にトロールの体は左右に割けて倒れた。

「他愛もない……」

 そう呟いたノブナガの横顔があまりのも美しく見え、同時に自分でも分からない妙な高揚感が心臓から溢れ出し、思わず胸を抑える。

「ち、違う……これは急に走ったからで……そう、そうだ」

 まるで自分に言い聞かせるように呟き、心臓を落ち着ける。だけど……

――ノブナガからは目を離すことが出来なかった。
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