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僕の家
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裕太くんに案内してもらい、僕は家にたどり着いた。家を見た瞬間、なぜかホッとした。
ーー帰って来れたんだ。
圭くんは後から来ると言っていた。住所を伝え、家で待つことになった。
「お母さん、ただいま!僕は友達に家まで連れてきてもらったんだ。後からもう一人、遊びに来るからね!」
お母さんが駆け足で玄関に立つ。
「うちの京一郎を連れてきてくれて、ありがとう。今後も仲良くしてあげてね」
「僕の部屋、二階なんだ。裕太くん、上がって!」
裕太くんを僕の部屋に呼んだ。
「お邪魔します」
キチンと靴を揃えて室内に入り、階段のところで裕太くんが止まっている。
「どうしたの?裕太くん、コッチにおいでよ」
階段の手すりに手を乗せ、裕太くんがようやく階段を上り始めようとしたその時だった。
ピンポーン。
「はーい」
エプロンをつけたまま、お母さんが玄関に向かう。
「あの…自分は京一郎くんと遊ぶ約束をしていて…」
栗原圭だ。
「初めまして。京一郎の母です。これからも京一郎をよろしくね」
階段からヒョッコリと顔を出して、僕は栗原圭を呼んだ。
「僕の部屋、二階なんだ。コッチにきてよ!」
圭くんは階段を見上げる。
そして裕太くんと共に、ゆっくりと階段を上り始めた。
※
二階に上がると、圭くんが興味深そうにあたりを見渡している。
「この家…」
ーーはぁぁぁぁ。
圭くんが突然大きなため息をついた。
「え…?え…?」
突然、大きなため息をついた圭くん。
僕は圭くんに何かイヤな事をしたのだろうか?
考えても思い当たる部分がない。それなのに、このため息は…不安になってしまう。
そんな時。
僕の気持ちを察した様な裕太くんに、腕を引っ張られ、部屋の端っこに連れて行かれた。
「言ったろ?アイツの行動は、気にしなくていい。例の病気が出たんだ」
裕太くんが小声で僕にそう言った。
「病気?」
僕は聞き返した。
「アイツには他の人に見えないーーつまり、霊が見えるんだ。だから、霊がいるとかそろそろ言い出すはずさ」
圭くんの行動パターンが読めているのか?
随分と落ち着いた口調で、裕太くんが僕に言った。
「京一郎くんと言ったね?」
名前を確認するようにして、圭くんが言葉を話した。
「ーーそうだけど」
「ーー京一郎くん、君は歓迎されていないようだよ?この家の主にーー」
ーーは?
「ーー何を言ってんの?ここは僕の家だよ?主は僕たち一家だよ」
「京一郎くん、君は階段から落ちたんじゃないか?」
大真面目な顔で、圭くんが僕に言う。
「だから何なの?階段から落ちるくらい誰にだってあるでしょ?」
必死で僕はそう答えた。
圭くんは部屋の隅をそっと指さした。
「い…いるんだよ。そこに!!」
真っ青な顔で、圭くんが言う。
「お前な、いい加減にしろよ!ーー人の家に遊びに行く度にそこに幽霊が…とか、ふざけた事ばっかり言いやがって!」
裕太くんが今にも圭くんを殴りそうな勢いで、圭くんの胸を掴んだその時、階段を上がる足音が聞こえた。
ーーお母さんだ。
「お菓子とジュースを持ってきたわよ!楽しんで行ってねー!」
お盆を置き、子供たちの顔を見ると、お母さんが言った。
「何かあったの?」
「いえ、別に…」
裕太くんは学校にいた時と同じように、穏やかな表情に変わった。
「この話しを聞いておかないと、あなた方は大変なことになりますよ?」
お母さんの前でも、圭くんはそう言った。
「君、名前は?」
お母さんが圭くんに名前を聞く。
「栗原圭です」
「圭くんね、あなたの話しは私が聞きましょう」
裕太くんがお母さんに耳打ちする。
おそらくさっき僕に言ってくれたような助言だろう。
「大丈夫よ。心配しないで」
お母さんは、裕太くんに笑顔でそう返事してから「裕太くんは京一郎と遊んでいてね」と言った。
そして圭くんとお母さんは一階に下りていく。
「京一郎、お前のお母さん、大丈夫かなぁ?」
裕太くんが心配そうに、僕に言った。
ーー帰って来れたんだ。
圭くんは後から来ると言っていた。住所を伝え、家で待つことになった。
「お母さん、ただいま!僕は友達に家まで連れてきてもらったんだ。後からもう一人、遊びに来るからね!」
お母さんが駆け足で玄関に立つ。
「うちの京一郎を連れてきてくれて、ありがとう。今後も仲良くしてあげてね」
「僕の部屋、二階なんだ。裕太くん、上がって!」
裕太くんを僕の部屋に呼んだ。
「お邪魔します」
キチンと靴を揃えて室内に入り、階段のところで裕太くんが止まっている。
「どうしたの?裕太くん、コッチにおいでよ」
階段の手すりに手を乗せ、裕太くんがようやく階段を上り始めようとしたその時だった。
ピンポーン。
「はーい」
エプロンをつけたまま、お母さんが玄関に向かう。
「あの…自分は京一郎くんと遊ぶ約束をしていて…」
栗原圭だ。
「初めまして。京一郎の母です。これからも京一郎をよろしくね」
階段からヒョッコリと顔を出して、僕は栗原圭を呼んだ。
「僕の部屋、二階なんだ。コッチにきてよ!」
圭くんは階段を見上げる。
そして裕太くんと共に、ゆっくりと階段を上り始めた。
※
二階に上がると、圭くんが興味深そうにあたりを見渡している。
「この家…」
ーーはぁぁぁぁ。
圭くんが突然大きなため息をついた。
「え…?え…?」
突然、大きなため息をついた圭くん。
僕は圭くんに何かイヤな事をしたのだろうか?
考えても思い当たる部分がない。それなのに、このため息は…不安になってしまう。
そんな時。
僕の気持ちを察した様な裕太くんに、腕を引っ張られ、部屋の端っこに連れて行かれた。
「言ったろ?アイツの行動は、気にしなくていい。例の病気が出たんだ」
裕太くんが小声で僕にそう言った。
「病気?」
僕は聞き返した。
「アイツには他の人に見えないーーつまり、霊が見えるんだ。だから、霊がいるとかそろそろ言い出すはずさ」
圭くんの行動パターンが読めているのか?
随分と落ち着いた口調で、裕太くんが僕に言った。
「京一郎くんと言ったね?」
名前を確認するようにして、圭くんが言葉を話した。
「ーーそうだけど」
「ーー京一郎くん、君は歓迎されていないようだよ?この家の主にーー」
ーーは?
「ーー何を言ってんの?ここは僕の家だよ?主は僕たち一家だよ」
「京一郎くん、君は階段から落ちたんじゃないか?」
大真面目な顔で、圭くんが僕に言う。
「だから何なの?階段から落ちるくらい誰にだってあるでしょ?」
必死で僕はそう答えた。
圭くんは部屋の隅をそっと指さした。
「い…いるんだよ。そこに!!」
真っ青な顔で、圭くんが言う。
「お前な、いい加減にしろよ!ーー人の家に遊びに行く度にそこに幽霊が…とか、ふざけた事ばっかり言いやがって!」
裕太くんが今にも圭くんを殴りそうな勢いで、圭くんの胸を掴んだその時、階段を上がる足音が聞こえた。
ーーお母さんだ。
「お菓子とジュースを持ってきたわよ!楽しんで行ってねー!」
お盆を置き、子供たちの顔を見ると、お母さんが言った。
「何かあったの?」
「いえ、別に…」
裕太くんは学校にいた時と同じように、穏やかな表情に変わった。
「この話しを聞いておかないと、あなた方は大変なことになりますよ?」
お母さんの前でも、圭くんはそう言った。
「君、名前は?」
お母さんが圭くんに名前を聞く。
「栗原圭です」
「圭くんね、あなたの話しは私が聞きましょう」
裕太くんがお母さんに耳打ちする。
おそらくさっき僕に言ってくれたような助言だろう。
「大丈夫よ。心配しないで」
お母さんは、裕太くんに笑顔でそう返事してから「裕太くんは京一郎と遊んでいてね」と言った。
そして圭くんとお母さんは一階に下りていく。
「京一郎、お前のお母さん、大丈夫かなぁ?」
裕太くんが心配そうに、僕に言った。
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