25 / 26
女
しおりを挟む
一時間くらいの時間がたち、豊と二人で飲んでいると、彼女はまた俺の目の前に現れた。
「ワタシがわかる?」
黙ってその顔を見つめていると、彼女は言った。
「まだ思い出せないのね?ワタシの事をーー」
うーん。
無意識のうちに、俺はうなり声を上げていたらしい。
隣に座っていた豊が言う。
「なんだよ、努ーーもしかして忘れてるのか?」
「分からないんだ。ただどこか、懐かしい感じがする」
「ーー彼女はお前の母親だよ?」
「え??ーーでも、あの時、俺の母親は亡くなったって言ってたよな?」
「ーーまぁ、、」
豊が頷く。
母親だと言う女は静かな口調で話始めた。
「ーー五年ほど前のあの日。ワタシはいろいろ合って精神が疲れはてていた。自殺する場所を探してたの。そんな時、たまたま同名の人が自殺していた事を知ったのーーそれならワタシが死んだ事にしようと思い、免許証をそこに置いた」
翌日、ワタシの死体(だと思っている)は、努、あなたのいる家に届けられた。
「あなたが大泣きしているのを、ワタシは遠目に眺めていた。
なぜならば、既に死んだ事になっている人間が、軽々しく姿を表す訳には行かなかった。
ワタシはずっとあなたの事を見守っていた。
あなたが撃たれたあの事件の通報をしたのもワタシよーーだけどあなたは少しも思い出してくれなかった」
寂しげに母親らしい女は肩を落とした。
「ーーそれならもっと早く出てきてくれれば良かったのに、、。」
努は涙を流した。
「俺、人をコロシチャッタんだ。だからもう警察に行かないと行けない。サヨウナラ」
「ワタシ、あなたの事を待ってる。ーーこの家でずっと待ってるから」
「ーーありがとう。かぁさん、、」
お会計を済ますと、俺は外に出た。
「豊、今までいろいろとありがとうな、、おかげで俺は俺を取り戻せたよ。これからも元気でな、、」
豊と母に頭を下げる。
店を出ると、先程の二人の男がいた。
「ムリ言ってすいません。もう大丈夫です」
努は頭を下げて、警察官に両手を差し出した。
カチャリ。
手錠の冷たい音がした。
うつむいたまま、俺はパトカーに乗った。
騒々しく鳴るサイレンを身近に感じながら、俺の体は警察署に到着する。
取り調べ室へと連れていかれると、警察官が言う。
「桜木努ーーこれから田中裕美殺害の件で事情聴取を始める」
「ワタシがわかる?」
黙ってその顔を見つめていると、彼女は言った。
「まだ思い出せないのね?ワタシの事をーー」
うーん。
無意識のうちに、俺はうなり声を上げていたらしい。
隣に座っていた豊が言う。
「なんだよ、努ーーもしかして忘れてるのか?」
「分からないんだ。ただどこか、懐かしい感じがする」
「ーー彼女はお前の母親だよ?」
「え??ーーでも、あの時、俺の母親は亡くなったって言ってたよな?」
「ーーまぁ、、」
豊が頷く。
母親だと言う女は静かな口調で話始めた。
「ーー五年ほど前のあの日。ワタシはいろいろ合って精神が疲れはてていた。自殺する場所を探してたの。そんな時、たまたま同名の人が自殺していた事を知ったのーーそれならワタシが死んだ事にしようと思い、免許証をそこに置いた」
翌日、ワタシの死体(だと思っている)は、努、あなたのいる家に届けられた。
「あなたが大泣きしているのを、ワタシは遠目に眺めていた。
なぜならば、既に死んだ事になっている人間が、軽々しく姿を表す訳には行かなかった。
ワタシはずっとあなたの事を見守っていた。
あなたが撃たれたあの事件の通報をしたのもワタシよーーだけどあなたは少しも思い出してくれなかった」
寂しげに母親らしい女は肩を落とした。
「ーーそれならもっと早く出てきてくれれば良かったのに、、。」
努は涙を流した。
「俺、人をコロシチャッタんだ。だからもう警察に行かないと行けない。サヨウナラ」
「ワタシ、あなたの事を待ってる。ーーこの家でずっと待ってるから」
「ーーありがとう。かぁさん、、」
お会計を済ますと、俺は外に出た。
「豊、今までいろいろとありがとうな、、おかげで俺は俺を取り戻せたよ。これからも元気でな、、」
豊と母に頭を下げる。
店を出ると、先程の二人の男がいた。
「ムリ言ってすいません。もう大丈夫です」
努は頭を下げて、警察官に両手を差し出した。
カチャリ。
手錠の冷たい音がした。
うつむいたまま、俺はパトカーに乗った。
騒々しく鳴るサイレンを身近に感じながら、俺の体は警察署に到着する。
取り調べ室へと連れていかれると、警察官が言う。
「桜木努ーーこれから田中裕美殺害の件で事情聴取を始める」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる