犬

真相

回想。

カミナリの音が繰り返された。

ゴロロロー。
ガシャーン。

どう表現するべきなのか？わからないけど、それは俺の体に直撃した。
カミナリだ。
カミナリが俺の体に落ちたようだ。

たちまち意識を失ったのだろうか。
何が起きたのか。
俺にはわからないまま。

「ーー柴ちゃーーんっ」

夕夏はボロボロと涙を流している。
その時、俺は自分の体と泣きわめく夕夏の姿を眺めていた。

「ーーあれ？俺の姿が何で見えるんだ？」

本来は自分の体など見えるはずがない。

え？
どうなってる？
なんで？？

不思議に思う気持ちばかりが溢れていた時、もう65際くらいの老婆が現れた。
そう、前の飼い主だ。
彼女は言った。

「あなたも言葉を覚えなさいーーそして、自分の気持ちを伝えられるようになりなさい」と。

「ワンッ」

俺は返事をした。

「ーーそう言う時はね、はいって言うのよ」

ワンッ。ワンッ。

「違うでしょ？はいって言ってみて」
前の飼い主は動かなくなったはずなのに、あの時は目の前で動き、話をしていた。
考えてみれば不思議な話だ。

は。
「ほら言ってみて」
優しく笑っているが、彼女はもう無に帰っているはずだ。

「は」

見よう見まねで口を動かしてみる。

あ。言えた。

「そうよ。そしたら「い」って言ってみて」

「い」

お？以外に直ぐに話せるようになったように感じる。どれくらいの時間が経ったのかはわからないけど。

「はい」

「そうよ。上手、上手」
顔を撫でて、大喜びしているのは前の飼い主だ。

そうだ。
俺は一度死んだんだ。
でも、前の飼い主に「まだこちらに来ては行けない」と追い返されたんだ。
この国に。

「ーーこの国に返してくれてありがとう」

柴ちゃんがぼやくように言う。
そして、涙を流した。

俺はこうして一つ一つの言葉を覚えた。