11 / 48
喧嘩
しおりを挟む
夕暮れに染まっていく街を、ただ歩いていた。
この街には、ガラの悪いヤツが多い。
特に関わりがあるわけでもないが、一昔前のチンピラ風の輩が、しょっちゅう喧嘩している。
俺も喧嘩は良くした方だし、それが悪いとも思わない。
だが、彼らは俺のケンカと少し違っている。
ーーケンカだ。
男は大声で騒いでいた。
ーーまたか。
この街ではよくある光景だ。この街の住人なら、そんな事はさほど気にしない。
せいぜい、ため息を一つつくくらいだ。
大声で騒いでいるあの男は、おそらくこの街の住人ではないのだろう。
「ーーおい、ケンカなんて辞めろ」
普段なら放っておく所だろうが、この日、拓海は珍しくそれを咎めようとした。
それは拓海の中の滅多に顔を出さない正義感だ。
胸ぐらを掴みあっている二人の顔を見る。
「ーー何があったんだ?」
二人の手を抑えながら、拓海は聞いた。
何も言わない。だが、その目は狂気に満ちていた。
睨み合ったまま、二人は未だに胸ぐらを掴んだままーー。
「いい加減にしろよ!お前ら!!」
これでもかって位の大きな声で、拓海はそれを咎める。
「ーー何なんだよ!関係ないヤツが、クビ突っ込んでくんじゃねーよ!」
背の高い方の男が振り回した拳が、拓海の頬をかすめた。
ーーってーな!
拓海はその男の胸ぐらを掴んだ。
もう自分を止める事は出来なかった。
ーーこのやろー!!
胸ぐらを掴んですぐ、拓海は相手を殴り付けた。相手が驚いてひざまづく。
殴った相手の名前すら知らないのだから、怖いものだ。
相手は胸ポケットから何かを取り出す。
暗闇の中で、それはキラリと光った。
ーー凶器だろう。
拓海には一目で、それとわかった。
だが、拓海には凶器などいらなかった。これまでのケンカで一度だって使った事はない。
だから今回もーー。
そう思っていた。
しかし、揉み合ううちに、相手が持っていたナイフが相手の腹部を貫いた、、。
はぁはぁ。
そのケンカを覚めた目で見ていた人が、救急車を呼んでくれた。
相手を刺してしまった事に動揺して、俺もひざまづく。
「おい、あんた、、大丈夫か?」
そう声をかけて来たのは、白髪でメガネの老人だ。
「俺、、俺、、」
体が震える。
初めての体験だった。
人を刺して、ケガをさせるなんてーー。
「ーー大丈夫だ。あんたは悪くない。ケンカをやめさせようとしてたんだから」
白髪の老人が拓海の肩に手を乗せる。
その温もりが伝わってきた気がした。
数分後。
救急車とパトカーが到着した。周りにいた住人たちがその時の状況を警察に話してくれている。俺は相変わらず、震えたままうずくまっていた。
「山崎拓海、傷害事件の現行犯で逮捕する」
そんな事はこの街ではよくある話だ。だが、俺には初めての事だ。だが、世の中そんなに甘くはない。ケンカをやめさせようとした俺が、相手に重症を負わせ、そのまま警察に連行された。
ーー彼はどうなっただろうか?
まだ心臓がバクバクしている。
ーーそして俺はこれからどうなるんだろう?
この街には、ガラの悪いヤツが多い。
特に関わりがあるわけでもないが、一昔前のチンピラ風の輩が、しょっちゅう喧嘩している。
俺も喧嘩は良くした方だし、それが悪いとも思わない。
だが、彼らは俺のケンカと少し違っている。
ーーケンカだ。
男は大声で騒いでいた。
ーーまたか。
この街ではよくある光景だ。この街の住人なら、そんな事はさほど気にしない。
せいぜい、ため息を一つつくくらいだ。
大声で騒いでいるあの男は、おそらくこの街の住人ではないのだろう。
「ーーおい、ケンカなんて辞めろ」
普段なら放っておく所だろうが、この日、拓海は珍しくそれを咎めようとした。
それは拓海の中の滅多に顔を出さない正義感だ。
胸ぐらを掴みあっている二人の顔を見る。
「ーー何があったんだ?」
二人の手を抑えながら、拓海は聞いた。
何も言わない。だが、その目は狂気に満ちていた。
睨み合ったまま、二人は未だに胸ぐらを掴んだままーー。
「いい加減にしろよ!お前ら!!」
これでもかって位の大きな声で、拓海はそれを咎める。
「ーー何なんだよ!関係ないヤツが、クビ突っ込んでくんじゃねーよ!」
背の高い方の男が振り回した拳が、拓海の頬をかすめた。
ーーってーな!
拓海はその男の胸ぐらを掴んだ。
もう自分を止める事は出来なかった。
ーーこのやろー!!
胸ぐらを掴んですぐ、拓海は相手を殴り付けた。相手が驚いてひざまづく。
殴った相手の名前すら知らないのだから、怖いものだ。
相手は胸ポケットから何かを取り出す。
暗闇の中で、それはキラリと光った。
ーー凶器だろう。
拓海には一目で、それとわかった。
だが、拓海には凶器などいらなかった。これまでのケンカで一度だって使った事はない。
だから今回もーー。
そう思っていた。
しかし、揉み合ううちに、相手が持っていたナイフが相手の腹部を貫いた、、。
はぁはぁ。
そのケンカを覚めた目で見ていた人が、救急車を呼んでくれた。
相手を刺してしまった事に動揺して、俺もひざまづく。
「おい、あんた、、大丈夫か?」
そう声をかけて来たのは、白髪でメガネの老人だ。
「俺、、俺、、」
体が震える。
初めての体験だった。
人を刺して、ケガをさせるなんてーー。
「ーー大丈夫だ。あんたは悪くない。ケンカをやめさせようとしてたんだから」
白髪の老人が拓海の肩に手を乗せる。
その温もりが伝わってきた気がした。
数分後。
救急車とパトカーが到着した。周りにいた住人たちがその時の状況を警察に話してくれている。俺は相変わらず、震えたままうずくまっていた。
「山崎拓海、傷害事件の現行犯で逮捕する」
そんな事はこの街ではよくある話だ。だが、俺には初めての事だ。だが、世の中そんなに甘くはない。ケンカをやめさせようとした俺が、相手に重症を負わせ、そのまま警察に連行された。
ーー彼はどうなっただろうか?
まだ心臓がバクバクしている。
ーーそして俺はこれからどうなるんだろう?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる