どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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長すぎる序章

話に入る前に……

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 今僕はワクワクしてる。普段乗る事のない電車に乗ってるから、なのかな?最近お父さんが亡くなってお葬式とか法要とかが続いてたし、お兄ちゃんの就職活動ってやつも落ち着いたから、久し振りに兄弟水入らずのお出掛け。でもどこへ行くのかな?聞いても教えてくれなくて僕は行き先を知らないんだ。
 「ねぇねぇ、どこ行くの?」
 「着いたら教える」
 お兄ちゃん今日は何だか緊張してるみたいなんだ、いつもよりしゃべってくれないし……。

 だからまずは僕たちの事を少しお話ししますね。僕の名前は畠中伽月ハタナカカツキ、歳は九歳、小学四年生です。好きな食べ物はあんこで、特に赤福っていうお餅が大好きです。嫌いな食べ物は……すぐには思い浮かばない、食べるの大好きだから。好きな教科は図工、嫌いな教科は算数です。特技があって、僕相撲は結構強いんだよ。見ての通りのおデブだから……昔はただのコンプレックスだったこの体型も、相撲のお陰でからかわれたりしなくなったんだ。別に将来的に力士になろうとかは思ってないけど、今は相撲が大好きだから週に二回の稽古がとっても楽しいんだ。
 そしてお兄ちゃんは畠中泰地ハタナカタイチ、高校三年生で来年から引っ越し屋さんで働く事になってるんだ。お兄ちゃんはラグビーで将来を期待されてたから、推薦枠で大学に行く話もあったんだけど、この前お父さんが死んじゃってその話を断ったんだって。僕の事もあるし、ラグビーは高校までって決めてたからお父さんの事が無くても断るつもりだった、って言ってるけどホントなのかな?

 「降りるよ」
 自己紹介はこの辺にして……ってどこ?外の景色を見る限り全然お出掛けスポットじゃないよ、この街。僕は不安になってお兄ちゃんを見上げたけど、僕以上に不安そうな顔をして電車を降りるから慌てて付いていく。改札を出た僕はますます不安になって辺りをキョロキョロしてみるけどお店的な物なんてほとんど無い、どう見ても住宅街って感じ。お兄ちゃんはケータイいじって画面とにらめっこ、多分地図を見てるんだと思う。
 「ここからは歩くよ、十分ほどだから」
 うん……お兄ちゃんは地図を見ては進み、少し歩いては止まってケータイを見る、を繰り返してる。僕はそれに付いて行くだけで目的地がどこなのかすら分からない。ただこの状況だとお店と言うよりは……。
 「ねぇ、誰かの家に行くの?」
 「うん、実は……ここだ」
 話の途中で僕たちが立ち止まった場所はそこそこ大きなマンションだった。お兄ちゃんは一つ大きく息を吐いてから僕を見て、実は、の続きを話した。
 「兄さんの家……ここの六階にあるんだ」
 えっ?お兄ちゃんって事は……星哉セイヤお兄ちゃんに会えるの?僕一度会ってみたかったんだ。お父さんが持ってた写真でしか見た事無いけど、とっても格好良くてほれぼれするくらいにキレイなお顔してるんだ。一体どんな人なのかな?
 「ここに星哉お兄ちゃんが居るんだね」
 「うん、まぁ……運が良ければ」
 僕たちはまるで戦場にでも行くような気分でマンションの中に入る。僕の心臓はものすごくドキドキ言ってる、お兄ちゃんは……こんな顔見た事無いってくらいに怖い!怒ってると言うより緊張してるんだと思う。僕は握りこぶしを作っているお兄ちゃんの手を握ると、久し振りに手を繋いでくれた。
 エレベーターに乗って六階に着くと、土曜日の昼間だからお料理の匂いがする。きっとそろそろお昼御飯なんだな、そう言えば僕お腹空いてきたなぁ……。
 「僕お腹空いた……」
 「今日は父さんの訃報を報せるだけだから、その後どこかお店に入ろう」
 「じゃあ星哉お兄ちゃんも一緒に?」
 それは無い。お兄ちゃんは首を横に振った。
 「どうして?」
 僕の問いかけにちょっと困った顔してる。ひょっとすると僕たちの事……。
 「僕たちの事キライなのかな?」
 「多分、そうだと思う……俺去年父さんの危篤を報せに一度ここに来て、その時はインターフォン越しでしか話出来なかったんだ」
 お兄ちゃんは僕よりも重い足取りで、一番奥の七〇八号室の前で足を止めた。
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