1 / 145
長すぎる序章
話に入る前に……
しおりを挟む
今僕はワクワクしてる。普段乗る事のない電車に乗ってるから、なのかな?最近お父さんが亡くなってお葬式とか法要とかが続いてたし、お兄ちゃんの就職活動ってやつも落ち着いたから、久し振りに兄弟水入らずのお出掛け。でもどこへ行くのかな?聞いても教えてくれなくて僕は行き先を知らないんだ。
「ねぇねぇ、どこ行くの?」
「着いたら教える」
お兄ちゃん今日は何だか緊張してるみたいなんだ、いつもよりしゃべってくれないし……。
だからまずは僕たちの事を少しお話ししますね。僕の名前は畠中伽月、歳は九歳、小学四年生です。好きな食べ物はあんこで、特に赤福っていうお餅が大好きです。嫌いな食べ物は……すぐには思い浮かばない、食べるの大好きだから。好きな教科は図工、嫌いな教科は算数です。特技があって、僕相撲は結構強いんだよ。見ての通りのおデブだから……昔はただのコンプレックスだったこの体型も、相撲のお陰でからかわれたりしなくなったんだ。別に将来的に力士になろうとかは思ってないけど、今は相撲が大好きだから週に二回の稽古がとっても楽しいんだ。
そしてお兄ちゃんは畠中泰地、高校三年生で来年から引っ越し屋さんで働く事になってるんだ。お兄ちゃんはラグビーで将来を期待されてたから、推薦枠で大学に行く話もあったんだけど、この前お父さんが死んじゃってその話を断ったんだって。僕の事もあるし、ラグビーは高校までって決めてたからお父さんの事が無くても断るつもりだった、って言ってるけどホントなのかな?
「降りるよ」
自己紹介はこの辺にして……ってどこ?外の景色を見る限り全然お出掛けスポットじゃないよ、この街。僕は不安になってお兄ちゃんを見上げたけど、僕以上に不安そうな顔をして電車を降りるから慌てて付いていく。改札を出た僕はますます不安になって辺りをキョロキョロしてみるけどお店的な物なんてほとんど無い、どう見ても住宅街って感じ。お兄ちゃんはケータイいじって画面とにらめっこ、多分地図を見てるんだと思う。
「ここからは歩くよ、十分ほどだから」
うん……お兄ちゃんは地図を見ては進み、少し歩いては止まってケータイを見る、を繰り返してる。僕はそれに付いて行くだけで目的地がどこなのかすら分からない。ただこの状況だとお店と言うよりは……。
「ねぇ、誰かの家に行くの?」
「うん、実は……ここだ」
話の途中で僕たちが立ち止まった場所はそこそこ大きなマンションだった。お兄ちゃんは一つ大きく息を吐いてから僕を見て、実は、の続きを話した。
「兄さんの家……ここの六階にあるんだ」
えっ?お兄ちゃんって事は……星哉お兄ちゃんに会えるの?僕一度会ってみたかったんだ。お父さんが持ってた写真でしか見た事無いけど、とっても格好良くてほれぼれするくらいにキレイなお顔してるんだ。一体どんな人なのかな?
「ここに星哉お兄ちゃんが居るんだね」
「うん、まぁ……運が良ければ」
僕たちはまるで戦場にでも行くような気分でマンションの中に入る。僕の心臓はものすごくドキドキ言ってる、お兄ちゃんは……こんな顔見た事無いってくらいに怖い!怒ってると言うより緊張してるんだと思う。僕は握りこぶしを作っているお兄ちゃんの手を握ると、久し振りに手を繋いでくれた。
エレベーターに乗って六階に着くと、土曜日の昼間だからお料理の匂いがする。きっとそろそろお昼御飯なんだな、そう言えば僕お腹空いてきたなぁ……。
「僕お腹空いた……」
「今日は父さんの訃報を報せるだけだから、その後どこかお店に入ろう」
「じゃあ星哉お兄ちゃんも一緒に?」
それは無い。お兄ちゃんは首を横に振った。
「どうして?」
僕の問いかけにちょっと困った顔してる。ひょっとすると僕たちの事……。
「僕たちの事キライなのかな?」
「多分、そうだと思う……俺去年父さんの危篤を報せに一度ここに来て、その時はインターフォン越しでしか話出来なかったんだ」
お兄ちゃんは僕よりも重い足取りで、一番奥の七〇八号室の前で足を止めた。
「ねぇねぇ、どこ行くの?」
「着いたら教える」
お兄ちゃん今日は何だか緊張してるみたいなんだ、いつもよりしゃべってくれないし……。
だからまずは僕たちの事を少しお話ししますね。僕の名前は畠中伽月、歳は九歳、小学四年生です。好きな食べ物はあんこで、特に赤福っていうお餅が大好きです。嫌いな食べ物は……すぐには思い浮かばない、食べるの大好きだから。好きな教科は図工、嫌いな教科は算数です。特技があって、僕相撲は結構強いんだよ。見ての通りのおデブだから……昔はただのコンプレックスだったこの体型も、相撲のお陰でからかわれたりしなくなったんだ。別に将来的に力士になろうとかは思ってないけど、今は相撲が大好きだから週に二回の稽古がとっても楽しいんだ。
そしてお兄ちゃんは畠中泰地、高校三年生で来年から引っ越し屋さんで働く事になってるんだ。お兄ちゃんはラグビーで将来を期待されてたから、推薦枠で大学に行く話もあったんだけど、この前お父さんが死んじゃってその話を断ったんだって。僕の事もあるし、ラグビーは高校までって決めてたからお父さんの事が無くても断るつもりだった、って言ってるけどホントなのかな?
「降りるよ」
自己紹介はこの辺にして……ってどこ?外の景色を見る限り全然お出掛けスポットじゃないよ、この街。僕は不安になってお兄ちゃんを見上げたけど、僕以上に不安そうな顔をして電車を降りるから慌てて付いていく。改札を出た僕はますます不安になって辺りをキョロキョロしてみるけどお店的な物なんてほとんど無い、どう見ても住宅街って感じ。お兄ちゃんはケータイいじって画面とにらめっこ、多分地図を見てるんだと思う。
「ここからは歩くよ、十分ほどだから」
うん……お兄ちゃんは地図を見ては進み、少し歩いては止まってケータイを見る、を繰り返してる。僕はそれに付いて行くだけで目的地がどこなのかすら分からない。ただこの状況だとお店と言うよりは……。
「ねぇ、誰かの家に行くの?」
「うん、実は……ここだ」
話の途中で僕たちが立ち止まった場所はそこそこ大きなマンションだった。お兄ちゃんは一つ大きく息を吐いてから僕を見て、実は、の続きを話した。
「兄さんの家……ここの六階にあるんだ」
えっ?お兄ちゃんって事は……星哉お兄ちゃんに会えるの?僕一度会ってみたかったんだ。お父さんが持ってた写真でしか見た事無いけど、とっても格好良くてほれぼれするくらいにキレイなお顔してるんだ。一体どんな人なのかな?
「ここに星哉お兄ちゃんが居るんだね」
「うん、まぁ……運が良ければ」
僕たちはまるで戦場にでも行くような気分でマンションの中に入る。僕の心臓はものすごくドキドキ言ってる、お兄ちゃんは……こんな顔見た事無いってくらいに怖い!怒ってると言うより緊張してるんだと思う。僕は握りこぶしを作っているお兄ちゃんの手を握ると、久し振りに手を繋いでくれた。
エレベーターに乗って六階に着くと、土曜日の昼間だからお料理の匂いがする。きっとそろそろお昼御飯なんだな、そう言えば僕お腹空いてきたなぁ……。
「僕お腹空いた……」
「今日は父さんの訃報を報せるだけだから、その後どこかお店に入ろう」
「じゃあ星哉お兄ちゃんも一緒に?」
それは無い。お兄ちゃんは首を横に振った。
「どうして?」
僕の問いかけにちょっと困った顔してる。ひょっとすると僕たちの事……。
「僕たちの事キライなのかな?」
「多分、そうだと思う……俺去年父さんの危篤を報せに一度ここに来て、その時はインターフォン越しでしか話出来なかったんだ」
お兄ちゃんは僕よりも重い足取りで、一番奥の七〇八号室の前で足を止めた。
0
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる