2 / 145
長すぎる序章
昔話を少々……
しおりを挟む
ピンポン♪お兄ちゃんは緊張した面持ちでインターフォンを押す。僕は繋いでいる手に力がこもっちゃうけど、嫌がらないでそのままにしててくれる。
『はい』
ちょっと高めだったけど、お父さんとそっくりな声がスピーカーから聞こえてきた。凄く耳障りの良い懐かしい感じ、でも一度苦い思いをしてるお兄ちゃんの緊張はピークを迎えてるみたい。
「ご無沙汰してます、畠中泰地です」
あぁ……スピーカー越しの星哉お兄ちゃんの声が低くなったような気がする、やっぱり僕たちの事キライなのかな……?
「そのままで結構です、今日は父の訃報を報せに伺いました。一昨日四十九日法要を済ませましたので」
『そんな報告要らねぇよ』
「父の遺言に従ってるだけです」
二人の会話はとてもピリピリしててちょっと怖くなってくる。僕の手からお兄ちゃんの緊張感が伝わってきちゃうから僕まで胸がざわざわして何だか落ち着かない。
『律儀モンだなお前。泰地、だっけ?』
星哉お兄ちゃんの声の感じがちょっと変わった?ような気がする……僕はお兄ちゃんを顔色を窺って見るけど今のところ余裕は無いみたい。
「はい。用は済みましたので僕たちはこれで」
失礼します、ってお兄ちゃんが言いかけた時、カチャッと音がしてそっと玄関のドアが開く。ドアのかなり近くに経ってた僕たちは慌てて後ろに下がると、背が高くてビックリするくらいにカッコイイ男の人が顔を出してきた。お父さんに見せてもらってた写真よりも少し大人びていて、何と言うか……色っぽい印象だったんだ。こう言っちゃうとイヤらしい気もするけどそんな感じじゃないよ、子供の僕には表現出来ないのがもどかしい……。
あの……イケメンを前にお兄ちゃん完全に萎縮してる?そりゃあ実のお兄ちゃんがこんなに格好良かったら……。
「この辺りに飲食店、ありますか?」
アレ?そうでもなかったみたい、さっきまでの緊張感からは想像出来ないよ、その質問。
「上がんなよ、この辺に飯屋なんて無いからさ」
僕たちは初対面の星哉お兄ちゃんの家に上がらせてもらう事になって、ここからの泰地兄ちゃんは凄かった……。
「「おじゃまします」」
部屋の中はそんなに散らかってないんだけど、家具が黒いのばっかりで印象がどうしても暗い。
「今昼飯作ってんだ、大したモンは作れねぇんだけど……」
その言葉の通り、キッチンだけは物が散乱してる。傍らにはケータイが置いてあって、お料理サイトを見ながら作ってたんだな、っていうのは想像できた。この散乱ぶりは僕が見ても分かるくらいにこの人料理苦手だ、きっと。
これに泰地兄ちゃんの火が点いたみたいで、肩に掛けてた鞄をダイニングの椅子に置いてキッチンを見てた。こっちのお兄ちゃんは料理得意だからね、何でも目分量で作るからたまに変なの出来上がっちゃう事もあるんだけど……ここだけの話だよ、聞かれたら機嫌損ねちゃうから。
「差し障り無ければ僕が作って良いですか?」
へっ!?星哉お兄ちゃんはビックリして声が上ずってる。そりゃそうだよね、普通客で上がってきて住人のキッチンを使おうなんて思わないもんね、しかも実質初対面だし……。
「ちょっと待て!初めて上げる奴にそんな事させられるかよ?」
「だからと言ってこのままあなたにお任せしたら日が暮れます。これ切るだけに何分掛かりました?」
泰地兄ちゃんはまな板の上の玉ねぎを見てる。僕もチラッと覗き見……うわっ、ヘタクソ!細切り、ザク切り、どっち?ってか何作ろうとしてたのかな?ピーマンとベーコンとトマトケチャップがあって、パスタだとナポリタン、ご飯だとオムライスかなぁ?
「知らねぇよ、イチイチ時計なんて見ねえだろ?」
「ケータイそこにあるんですから見れるでしょ?それにナポリタンくらいでこんなの見ないでください」
泰地兄ちゃんは早速流し台に散らばっている玉ねぎの皮を片付けて、パスタどこです?と星哉お兄ちゃんをこき使ってる。
「皮なんて後でいいだろ?……ほれ、パスタ」
「塩入れて茹でてください、その太さですと八分くらいです。具材の方は僕がしますので」
この家のキッチンを占拠した泰地兄ちゃんは、朝のガチガチ振りが嘘みたいにその場を取り仕切ってる。この後僕も手伝いに駆り出されてお膳の準備をする。
「おい、その子にまでさせんなよ」
「僕は構いませんよ、皆で手分けした方が早いですから」
僕は泰地兄ちゃんよりも先に星哉お兄ちゃんに声を掛けた。そうしないと容赦無い一言が飛び出しそうで……。
「お気遣いなく、あなたはパスタにだけ集中しててください」
たまにそういう事言うんだよねぇ、ここ自宅じゃないのに。
『はい』
ちょっと高めだったけど、お父さんとそっくりな声がスピーカーから聞こえてきた。凄く耳障りの良い懐かしい感じ、でも一度苦い思いをしてるお兄ちゃんの緊張はピークを迎えてるみたい。
「ご無沙汰してます、畠中泰地です」
あぁ……スピーカー越しの星哉お兄ちゃんの声が低くなったような気がする、やっぱり僕たちの事キライなのかな……?
「そのままで結構です、今日は父の訃報を報せに伺いました。一昨日四十九日法要を済ませましたので」
『そんな報告要らねぇよ』
「父の遺言に従ってるだけです」
二人の会話はとてもピリピリしててちょっと怖くなってくる。僕の手からお兄ちゃんの緊張感が伝わってきちゃうから僕まで胸がざわざわして何だか落ち着かない。
『律儀モンだなお前。泰地、だっけ?』
星哉お兄ちゃんの声の感じがちょっと変わった?ような気がする……僕はお兄ちゃんを顔色を窺って見るけど今のところ余裕は無いみたい。
「はい。用は済みましたので僕たちはこれで」
失礼します、ってお兄ちゃんが言いかけた時、カチャッと音がしてそっと玄関のドアが開く。ドアのかなり近くに経ってた僕たちは慌てて後ろに下がると、背が高くてビックリするくらいにカッコイイ男の人が顔を出してきた。お父さんに見せてもらってた写真よりも少し大人びていて、何と言うか……色っぽい印象だったんだ。こう言っちゃうとイヤらしい気もするけどそんな感じじゃないよ、子供の僕には表現出来ないのがもどかしい……。
あの……イケメンを前にお兄ちゃん完全に萎縮してる?そりゃあ実のお兄ちゃんがこんなに格好良かったら……。
「この辺りに飲食店、ありますか?」
アレ?そうでもなかったみたい、さっきまでの緊張感からは想像出来ないよ、その質問。
「上がんなよ、この辺に飯屋なんて無いからさ」
僕たちは初対面の星哉お兄ちゃんの家に上がらせてもらう事になって、ここからの泰地兄ちゃんは凄かった……。
「「おじゃまします」」
部屋の中はそんなに散らかってないんだけど、家具が黒いのばっかりで印象がどうしても暗い。
「今昼飯作ってんだ、大したモンは作れねぇんだけど……」
その言葉の通り、キッチンだけは物が散乱してる。傍らにはケータイが置いてあって、お料理サイトを見ながら作ってたんだな、っていうのは想像できた。この散乱ぶりは僕が見ても分かるくらいにこの人料理苦手だ、きっと。
これに泰地兄ちゃんの火が点いたみたいで、肩に掛けてた鞄をダイニングの椅子に置いてキッチンを見てた。こっちのお兄ちゃんは料理得意だからね、何でも目分量で作るからたまに変なの出来上がっちゃう事もあるんだけど……ここだけの話だよ、聞かれたら機嫌損ねちゃうから。
「差し障り無ければ僕が作って良いですか?」
へっ!?星哉お兄ちゃんはビックリして声が上ずってる。そりゃそうだよね、普通客で上がってきて住人のキッチンを使おうなんて思わないもんね、しかも実質初対面だし……。
「ちょっと待て!初めて上げる奴にそんな事させられるかよ?」
「だからと言ってこのままあなたにお任せしたら日が暮れます。これ切るだけに何分掛かりました?」
泰地兄ちゃんはまな板の上の玉ねぎを見てる。僕もチラッと覗き見……うわっ、ヘタクソ!細切り、ザク切り、どっち?ってか何作ろうとしてたのかな?ピーマンとベーコンとトマトケチャップがあって、パスタだとナポリタン、ご飯だとオムライスかなぁ?
「知らねぇよ、イチイチ時計なんて見ねえだろ?」
「ケータイそこにあるんですから見れるでしょ?それにナポリタンくらいでこんなの見ないでください」
泰地兄ちゃんは早速流し台に散らばっている玉ねぎの皮を片付けて、パスタどこです?と星哉お兄ちゃんをこき使ってる。
「皮なんて後でいいだろ?……ほれ、パスタ」
「塩入れて茹でてください、その太さですと八分くらいです。具材の方は僕がしますので」
この家のキッチンを占拠した泰地兄ちゃんは、朝のガチガチ振りが嘘みたいにその場を取り仕切ってる。この後僕も手伝いに駆り出されてお膳の準備をする。
「おい、その子にまでさせんなよ」
「僕は構いませんよ、皆で手分けした方が早いですから」
僕は泰地兄ちゃんよりも先に星哉お兄ちゃんに声を掛けた。そうしないと容赦無い一言が飛び出しそうで……。
「お気遣いなく、あなたはパスタにだけ集中しててください」
たまにそういう事言うんだよねぇ、ここ自宅じゃないのに。
0
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる