どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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長すぎる序章

どころではなくなってますが……

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 こういう時に使うのかな?『怪我の功名』ってことわざ。この事がきっかけで、僕たちは三兄弟として交流を持つようになりました。星哉お兄ちゃんは事情があってお父さんとは四歳くらいからずっと離れて暮らしてて、長い間施設に居たんだって。泰地兄ちゃんは大体知ってるみたいなんだけど、僕にはちょっと難しすぎる事情みたいで……。
 でもお父さん病院で泰地兄ちゃんに話してるの何度か漏れ聞こえちゃった事があって、その時『俺が未熟だった』とか『今思えば嫉妬してたんだろうな』とか言ってたんだ。僕にはお父さんの言葉を読み取る事は出来ないけど、それで星哉お兄ちゃんがいっぱい辛い目に遭ってきたのかな?と思ったりするんだ。
 僕がお父さんの話をしても星哉お兄ちゃんにはピンと来ないみたいなんだ。僕たちの中の『お父さん』はそれぞれ全然違う『お父さん』が居るのかな?同じ『お父さん』なんだけど……僕にはまだ難しいなぁ。
 
 ちょっとややこしい話になっちゃったけど、今日は星哉お兄ちゃんが家に遊びに来てくれてるんだ。最初にお話したかな?僕算数がとっても苦手で、今回の宿題が全然進まないんだ。それでね、泰地兄ちゃん今週末はアルバイトが入ってるから、ダメ元で『算数教えて』ってお願いしてみたら『良いよ』って。
 「この問題は正方形、ってのが答えを解くカギだな」
 「ん?どういう事?」
 「つまり、こことここの長さは同じ。こっちもそう、ここからここまでの長さがこれになるんだよ」
 「どうして?」
 「……正方形ってどんな形かは分かってるよな?」
 分かってるよ!お兄ちゃん僕の事バカにしてる!?とムッとなるけど、そんなの全然お構い無しで、紐あるか?と聞いてきた。
 「糸でもいい?」
 僕は棚から糸とハサミをお兄ちゃんに渡すと、問題の図形に合わせて糸と切るとさっきの説明を実演してくれた。やっと分かった!そういう事かぁ。僕はすっかり天才にでもなった気分でその問題を解いたんだけど、次の問題でまたつまづいて悪戦苦闘する。はぁ~何でこの世に算数なんてあるんだろう?この先僕の人生には全く役に立たないのにぃ!
 「伽月、お前相当算数嫌いなんだな」
 星哉お兄ちゃんは算数に向き合う僕を見て笑ってる。そう言えばあんまり笑う顔を見た事無かったなぁ……やっぱりイケメンの笑顔って男の僕が見ても惚れ惚れする、って言っても僕は弟だから変な風に捉えないでね。
 「ん?俺の顔に何か付いてるか?」
 「ううん、ただ何人の女の人泣かしたのかなぁ?って思っただけ」
 「マセた事言ってねぇで宿題終わらせろ」
 あいたっ!!!僕はお兄ちゃんのデコピンを食らって強制的に宿題を再開する。俺女嫌いなんだよ。この直後そう言ってたんだけど、僕はただの言い訳だと思って真剣に聞いてなかったんだ。だからこの後に起こった一つの出逢いでやっと意味が分かったって言うオチ付きなんだけど……。
 
 「そろそろ出るぞ」
 今日は十二月三十一日、僕たちは深夜零時に神社に着くよう身支度を済ませて外に出る。参拝場所はここから徒歩十分ほどで到着する近所の神社、去年まではお父さんと三人で行ってたんだけど、今年は現地で星哉お兄ちゃんと待ち合わせ。
 確か一人連れてくるって言ってたけど、どんな人なのかな?最近お付き合いを始めた方って聞いてるけど……お兄ちゃん面食いそうだからきっと綺麗な人なんだろうな、でも化粧濃くて香水プンプンの女の人だったらヤだなぁ……。
 「お兄ちゃんの彼女ってどんな人なのかな?」
 僕は何となく隣に居る泰地兄ちゃんに聞いてみる。彼女?この時変な表情してたんだけど、僕その意味がすぐに分かんなかったんだよね。
 「同じ会社の方だってさ、一年片思いしてやっと付き合える様になったって言ってたけど、俺もまだ会った事無いんだよ」
 へぇ。星哉お兄ちゃんに一年も片思いさせた人って……僕はその一言でお相手の方に興味が湧いてくる。子供の僕でも見れば分かるよ、きっとモテモテでお相手探しには苦労しなさそうだな、って事くらいはね。
 神社が見えてくるところで、星哉お兄ちゃんが待っているのが見えて僕は嬉しくなって手を振った。お兄ちゃんも僕に気付いて手を振ってくれて、泰地兄ちゃんと早足で駆け寄っちゃった。暗がりですぐに気付けなかったんだけど、お兄ちゃんの傍らにほっそりとした……男の人が立っていて、僕たちに向かってこんばんは。と男特有の低音なんだけど凄く可愛い声で挨拶をしてきたんだ。
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