どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

文字の大きさ
15 / 145
やっとこさ本編

…今年入って初めてか…

しおりを挟む
 こうして星哉君と伽月君は僕ん家にお泊まりする事になり、只でさえ賑やかな小田原家の夕食はいつも以上に豪華で楽しい一時となりました。僕はふと波那ちゃんを一人にしてしまった事を申し訳無く思いましたが、今日は飼い犬のミソラちゃんを連れてご実家に居るそうです。
 
 夕食を終えて、勇はすぐに勉強をしたいと自分の食器を片付けて部屋に入っていきました。因みに今きょうだいの部屋割りはお姉ちゃんと僕は一人部屋、勇と晋は二人で一部屋です。僕高校生にしてやっと一人部屋、きょうだい四人だし部屋数だって限られてるから仕方無いのですが。
 「じゃ、俺も行きます。ご馳走さまでした」
 星哉君も勇に付いてダイニングをあとにしました。晋は見たいテレビ番組があるから、とお父さんと一緒にテレビを見ています。僕とお母さんは後片付け、伽月君はお姉ちゃんと何やら話をしています。
 「誠」
 お母さんは片付けの手を休めずに僕の名前を呼びました。
 「ん?何?」
 「高校入って楽しそうに学校行くようになったね。中学よりは水が合ってる気はしてたけど」
 うん。僕はお母さんを見て頷きました。中学時代は……特に一年生の時は本当に辛かったんです、いじめにも遭いました。変な噂も立てられました。でも家に帰ると両親が居て、きょうだいが居て、毎日僕を優しく迎え入れてくれました。
 一人で泣く事もあったけど、時々体調崩して一杯心配掛けちゃったけど、絶対的な居場所を作ってくれていたお陰で、中学生活も何とか乗り切る事が出来ました。それに学校とは関係の無いところで伽月君が友達で居てくれた事も大きかったと思います。
 そう言えば一度インフルエンザに掛かった事にして、波那ちゃんの療養に一週間付き添いでご実家にお世話になった事もありました。
 そう思えば僕は家族にとても恵まれていると思います。波那ちゃんともそんな話をたくさんしました。彼は病院と半々の生活で学校に馴染めなかった時期があった事を知り、学校であった僕の話を聞いて一緒に泣いてくれました。
 僕も家族に恵まれてたから、お医者さんに何度も寿命のリミットを告げられても今こうして生きていられるんだ、って。皆が僕を生かしてくれてるんだ、って。僕はこの時学校を休ませてくれた両親に感謝しました。きっと学校で色々あった事に気付いていたんだと思います。
 皆僕に生きてて欲しいと願ってくれている、一人で抱え込んで精神的に追い込まれないように。僕が話さなかったのも心配掛けたくないからだ、って言うのもお見通しだったんだな、とこの時初めて知ってやっと気持ちが吹っ切れました。
 「うん、女の子ばっかりで最初は戸惑ったけど、最近やっと慣れてきたんだ」
 大丈夫だよ。僕はお母さんの目を見てしっかりと答えました。お母さんは僕の顔を見て優しく微笑み返してくれました。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 それにしても女という生き物はよく分からん。夕食の後綾姉さんとちょこっと恋バナをしたんだ。女心とやらをレクチャーしてくれたのはありがたいが全く分からんままだった。数学の方程式並み、イヤそれよりも難しい気がしたぞ、俺には。
 で、風呂もしっかりと頂いて今は誠の部屋でまったりしてる。誠はクラスの奴とL○○E中、何でも実習の予定変更があったらしい。にしても誠が学校に馴染めてるのは俺としても嬉しい話だよ、ご家族にも話せなかったらしいけど一時期えげつないいじめ受けてたからな。掃除箱に閉じ込められて転がされた話聞いた時は絶句した、俺話聞いてただけで恐ろしかった。
 その話して目の前で泣いてたアイツの頭撫でて肩擦ってやる事しか出来なかったからなぁ……今思えば抱き締めるくらいは出来た気もするけど、それはあくまでも結果論だし、あの地獄の中学生活を耐え抜いた誠は強いと思うよ、俺本気で尊敬してる。
 「ゴメンね、こんな時にL○○Eなんかして」
 誠は用事の終わったケータイを勉強机の上に置いた。
 「構わないよ、学校の用事なんだからさ」
 俺はおばさんが夜食として用意してくれたサンドウィッチをつまんでいる。ホントよく食べるよね、誠は俺の食欲を呆れ半分で笑いながら見てる。
 「それで痩せてっちゃった、てのが未だに不思議」
 そう、俺相撲してた時とほとんど食事量変わってないのに。
 「俺にも分かんないんだよ、自分の体のメカニズムが」
 「遺伝なんじゃないの?星哉君も泰地君も痩せ型だから」
 「そうなんだろうな、父さんも細かったし。でも中学入ってみるみる痩せてった時は病気も疑ったんだ、兄さんには病気してる奴がそんなに食える訳ないだろ?って笑われたけど」
 そう思うよ。誠はサンドウィッチを手にしてる俺を見て頷いた。好きで痩せてった訳じゃなかったから、思春期で色気付いたと揶揄された時はホント悔しかった。プロの力士になれなくても実業団に入って続ける事も考えてただけに、相撲辞めなきゃなんなくなった時は泣きまくったんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

処理中です...