どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

バースデーパーティー……

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 この日がついに来たよ、俺は波那ちゃんと兄さんと一緒に小田原邸にお邪魔する。もちろんプレゼントを抱えて……って大袈裟じゃないぞ、見た目も含めかなりデカイ代物だからな。
 どんな安物でも五桁の代物なので、話し合いの結果全員からのプレゼントと言うところに収まった。誠にとっては高頻度に使うであろう物だし、それなら兄貴も含めた四人からにしてランクを上げた方が良いと言う波那ちゃんの意見を採用して決めたんだ。
 「こんばんは、お招きありがとうございます」
 「いらっしゃい、準備できてるからな上がって」
 出迎えてくれたおじさんは俺たちを客間に案内した。既に小田原家の面々も揃っていて、料理の方も準備万端だ。う~腹減ってきたわ。
 「んじゃ今回も席決めね」
 「またぁ!?」
 勇の一声に晋は不満の声を上げてるがあっさり却下、それにしても勇の奴何で毎回席決めなんかするんだ?
 「最上座は兄ちゃん、今日の主役だからね」
 勇は有無を言わせず誠を誕生日席に座らせる。
 「上座側は伽月君、波那ちゃん、星哉君の順で座ってね」
 俺たちは言われた通り上座に移動、毎回なんだが俺の隣には常に誠がいる。まぁそれに対してどうこう思った事は一度も無いが。
 「んじゃ下座側はお父さん、お母さん、姉ちゃんの順ね。晋は星哉君か姉ちゃんの隣、どっちでも良いよ」
 「僕まこ兄ちゃんの隣が良い!」
 晋が珍しく反旗を翻す。この展開前にも一度あったなぁ。
 「何でそうなるんだよ?お父さんより上座っておかしいだろ」
 「それならまこ兄ちゃんの隣は波那ちゃんだよね?」
 「伽月君は兄ちゃんの彼氏なんだから隣に座るのは当然だろ?」
 んーこりゃ完全にあん時のデジャブだわ、晋が五歳くらいん時に俺の隣に座りたがって大泣きしたのを思い出す。
 「今それ言う?五年前からずっとじゃん」
 今回は譲らねぇなぁ晋……ここは折れた方が良さそうだぞ勇。
 「夏海、綾、席一つずつずれて。晋、おいで」
 結局喧嘩になる前におじさんたちが席をずらして晋の願いが叶えられる。確か前回も誠が席を譲って晋は俺の隣に座ったんだった、んで勇が誠に向かいの席を譲って……あれ?これひょっとしてひょっとするのか?
 「また末っ子の特権使いやがった……」
 「フォーマルな場でもないのに何で席決めなんかするの?」
 晋はしれっとして誠の隣に座る。最近はなりを潜めてるけど晋も何だかんだで超が付くほどのお兄ちゃん子だ。勇はマジで溺愛レベル、とは言ってもベタベタするのとはまた違うんだが。
 「そんなワガママ本来通用しないんだからな」
 「だから家ん中で行使してバランス取ってんの」
 あ~あ、兄弟喧嘩が始まっちまった。この二人歳も三つしか離れてないからこの手の喧嘩はしょっちゅうだけど、俺は兄さんで十六、兄貴とも八つ離れてるから兄弟喧嘩なんてした記憶が無い。でもこうやって本音をぶつけ合えて、ちょっとの時間で仲直りしちまうこの二人の関係性は正直羨ましく思う事もある。
 「もうそれ位にしない?折角のお料理が冷めちゃうよ」
 ここで誠が仲裁に入る。これもいつもの展開、二人共誠の言う事は案外素直に聞く。一見頼んねぇ風に見えるけど誠はしっかりお兄ちゃんしてるんだよ。
 「夏海さん、冷蔵庫お借りしてもいい?」
 兄弟喧嘩が収まったところで波那ちゃんが手にしている箱を掲げてみせると、おばさんはそれを受け取って客間から出て行った。俺は中身を知ってるからワクワクしてる、あ~早く食いたい♪もう食欲も二人分に戻ってるから現時点でかなり腹ペコだ。
 それから少ししておばさんが茶色の物を持って……さっき波那ちゃんが渡してた箱の中身だ、その上に軽くバースデー仕様にデコレイトして既にろうそくにも火が灯ってる。
 「晋、電気消してくれる?」
 おばさんの一声に晋は電気を消しに行く。誠は満面の笑顔で目の前に置かれてる……波那ちゃん特製“特大どら焼(バースデー仕様)”を見つめてる。誠の瞳がろうそくの火に照らされてキラキラと輝いてる。俺はこの笑顔が大好きだ、絶対に失わせないと密かに心に誓った事は内緒にしておく。こういうのは言葉にすると一気に安っぽくなる、しかも『俺がお前を守る』とか言ってる奴に限って恋に恋して相手の事を思いやってないのがほとんどだ。
 中坊に毛が生えた程度の俺が言えるこっちゃないけど、恋愛は相手が居てこそ成立するものだから自分の思いだけを恩着せがましく押し付けるのは違うと思うんだ。これまで付き合ってきた女の子に対してろくに考えてこなかったのが申し訳無いくらいだよ、それどころか受け身過ぎてただただ流されてたとも言えるんだけどさ(なぎさに対してはそんな事無かったと言い訳させてくれ)。こんな事考えてたら恋愛が難しく感じてきた、取り敢えず誠の十六歳を祝おうではないか。
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