どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

……波那ちゃんのどら焼♪

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 「ハーッピバースデートォーユー♪」

 イヤイヤ晋、バースデーソングは要らないよ。しかも一人で大熱唱してるし……まだ変声期の来てない弟の声はとってもキレイで、誰に似たのか歌がとっても上手なんです。家族でたまにカラオケに行きますが基本小田原家歌は上手くありません。お姉ちゃんに至っては音程もまともに取れず崩壊してます、声はそこそこ良いのに……。
 「まこ兄ちゃん、ろうそくの火、消して」
 はっ!脳内で話を脱線させてて晋の歌が終わってた事に気付かなかった!僕は慌てて火を吹き消すと皆おめでとー、と拍手してくれます。僕は無事十六歳になりました、高校生になるともっと大人な気分なのかと思っていましたが、この歳になっても誕生日(正確には月曜日だったのですが)を祝ってもらえるのは嬉しいし幸せな事だと思います。
 「僕先にどら焼食べたいなぁ……」
 「んじゃ先に切り分けよう、家の食事で順番なんてどうだって良いんだから」
 お父さんは僕のワガママをあっさり聞いてくれて“特大どら焼”を九等分に切り分けます。お母さんと波那ちゃんが出来上がっている料理を取り分けています。僕は何をしたらいいのかな?
 「主役は何もしなくていいんだよ」
 と伽月君、波那ちゃんから廻ってきたローストポーク(記念日にお母さんが必ず作ってくれます)を僕の前に置いてくれました。
 「でもじっとしてるの落ち着かなくて……」
 それにしても伽月君、僕の考えてる事良く分かったね。
 「主役にチョロチョロされたらこっちが落ち着かねぇわ、何でも良いから真っ先に食え」
 うっうん……僕はどら焼から頂く事にします。切れ目から見えてるイチゴの紅がとってもキレイ、ホイップクリームの白とこし餡の紫の存在でより一層引き立っています。
 僕ははやる気持ちを抑えられずにぱくっと一口いただきます。イチゴは時期外れなので旬のものより酸味がありましたが、ホイップクリームとこし餡がそれを見事に中和してくれています。いちごとあんこ?と思う人も居るかもだけど、いちご大福を想像してみればこの組み合わせは“アリ”です。
 「美味し〜♪」
 「ホント?良かったぁ」
 本当に波那ちゃんが作るものは何でも美味しいんです、僕の周りには料理上手な方が多くて僕ももっと上手になりたいです。波那ちゃんやお父さん、お母さんみたいにみんなを幸せにするお料理が作れるようこれからも精進しよう。
 
 ひとしきり食事を楽しんだ僕たちはそのまま客間でまったりと過ごしていました。お父さん、波那ちゃん、星哉君はリビングで晩酌(?お父さんと波那ちゃんは飲めないはずなんだけど)、お母さんとお姉ちゃんは後片付け中です。僕も手伝うって言ったんだけど、今日はいいからと断られてしまいました。
 「そろそろ移動しない?」
 勇の一声で全員立ち上がります。そう言えば伽月君さっきからずっと大きな箱持ってるけど……。
 「まこ兄ちゃんの部屋でトランプしようよ」
 「何言ってんだ、二人の邪魔しちゃだめだろ?」
 勇と晋はまたも兄弟喧嘩を始めます。勇もそこまで気を回さなくていいから……と思ってたら伽月君が二人を仲裁してくれました。
 「うしっ、四人でトランプしようぜ」
 「えっ?良いの?」
 と勇は伽月君と僕を交互に見てきます。その隣で晋はやったぁ!と小躍り……そこまで喜ばなくても。うん、僕もトランプ寄りだったから全員問題無いよ、勇の気遣いも勿論嬉しいよ。
 「良いじゃない勇、トランプするの久し振りだし」
 「うん、明日でもいいかなって思ってただけだから」
 「明日部活休みなんだね」 
 「うん、折角だから星哉君に勉強教えてもらう約束取り付けてるんだ」
 勇はクシャッとした笑顔を見せて頷きました。

 「まこ兄ちゃん三連敗ー!」
 僕たちは四人でトランプをしている……のですが、今日は僕が餌食状態で三連敗による罰ゲーム『しっぺ』が決定してしまいました、ぐすん。
 「ヤダ、痛いのヤダ!」
 「えーっ!ルールでしょー!」
 晋は容赦無く僕のシャツの袖を捲ります。
 「諦めろ誠、負けるのが悪い」
 伽月君も楽しそうに言ってます、悪い顔してるなぁ……。
 「てっ手加減してよ……」
 こうなったら悪あがきしてやるー!
 「……兄ちゃん」
 今度は勇が何か言いたそうです。なっ何かな?弟よ、ルール緩和してくれるかな?
 「ここは勝負の世界、手加減はしないよ」
 ぬうぅ、勇はこういう時やたらと厳しくなるから……すこしでも甘い考えをおこした自分にちょっと後悔、僕は三人に腕を掴まれて物凄い緊張感を味わっています。
 「んじゃ行くぞー、一、二の」
 「「「三っ!!!」」」
 バチコーンッ!!!
 ひいぃぃぃっ!痛すぎて声も出ない……改めて両腕を見ると、右腕に一本(伽月君)、左腕に二本(勇と晋)、しっかりと赤い線が付いています。腕がじんじんする、しばらくは使えないよぉ(大袈裟)。
 「お風呂、先に入っちゃって」
 部屋の外からお姉ちゃんの声が聞こえてきます。取り敢えずはぁい、と返事をしてから順番決めのじゃんけんをし、勇と晋が先に入る事になりました。
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