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第一話
死に別れた大切な人との再会を願う魂 -1-
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チリン……
酒場らしき店内の奥にひっそりとぶら下がっている鳥型のベルが、無風状態にも関わらず小さく揺れた。
「今日もお仕事みたいだよ♪」
本日も新たな客がやって来た様だ。この中に居る一番小さな女の子がいち早く出迎えに行く。
「いらっしゃいませ♪ビアホール【境界線】ヘようこそ♪」
女の子は早速猫人類の老婆に声を掛けたが、言葉が通じていないのかキョトンとした表情をしている。
「おっと間違えた♪」〈ビアホール【境界線】ヘヨウコソ♪〉
女の子はにっこりと微笑んで彼女が使っている言語に切り替えた。
〈……コノ地図二描イテアル場所ノ事カイ?〉
女性は手にしている紙を見せてくる。
〈ハイ♪本日ノゴ来店アリガトウゴザイマス♪ゴ案内ハ私“クー”ガ務メサセテ頂キマス♪〉
〈ゴ丁寧ニアリガトウネ、オ嬢チャン〉
〈『オ嬢チャン』デハナイケド……マァ良イヤ♪行キマショウ♪〉
二人が手を繋ぐと店の前まで一瞬で到着した。突然景色が変わって女性は辺りをキョロキョロとしている。
〈……絵本デ見タ死後ノ【道先案内所】ダネェ〉
〈ヨクゴ存知デ♪アナタノ国デハ割ト正確ニ伝ワッテル様デスカラネ♪ササッ、入リマショウ♪〉
クーがドアの前に立つとギギギ、と音を立てて自動で開く。二人で中に入ると、水の入ったグラスを乗せているトレーを持って立っている少年が、イラッシャイマセと声を掛けてきた。
「お客様、先ずはこちらをお飲みください」
〈???〉
〈コレハオ水デス♪飲ンデミテクダサイ♪〉
女性は戸惑いながらも言われるまま水を飲む。
「いかがですか?」
「普通のお冷やの様だけど……あらっ?」
少年と普通に会話が出来ている事に気付いた女性は手にしているグラスを驚いた表情で見つめている。
「お解り頂けましたか?これを飲めば世界中全ての言語を使えるようになるんです。僕たちだけなら言語の対応は問題ありませんが、お客様同士の交流も多いので入店時にお出ししているんです」
「とてもありがたいサービスですね」
「光栄なお言葉です、ここで出されるメニューは全て無料でご提供させて頂きます。ごゆっくり、心ゆくまでお楽しみくださいませ」
「では、お席へご案内致します♪」
クーは女性の手を引いて店内一番奥のテーブル席に案内した。
「良いのかしら?四人席を一人で使っても」
「勿論です♪あなたは【資格】を持ってここに来たのですから♪その地図は入店権利書みたいな物ですよ♪では、ここの従業員をさくっと紹介しますね♪
先ずは褐色肌の大男が店長のゾン♪
さっき水を出したのがメルクリウス♪
そこで女性客とチャラついてるのがマルス♪
そっちのおっさん客の相手してるのがジョーヴェ♪
懐中時計持ってる爺さんがクロノス♪
テーブル拭いてるのがプルートー♪
クネクネして酒運んでるのがネプテューヌ♪
几帳面に皿拭いてるのがウラーノ♪
厨房でフライパン振ってるのがヴィニエーラ♪
そして改めまして私がクー♪
以上がここの従業員です♪」
新たに九人もの名前を一気に言われてもすぐには覚えられそうになくて、女性の頭はクラクラしてくる。それにしても随分とまとまりの無いグループだなという印象を持った彼女は、クーにどのようにして集ったのかを訊ねてみた。
「……何となく、ですかね♪」
女性はその返答に苦笑いする事しか出来なかった。
酒場らしき店内の奥にひっそりとぶら下がっている鳥型のベルが、無風状態にも関わらず小さく揺れた。
「今日もお仕事みたいだよ♪」
本日も新たな客がやって来た様だ。この中に居る一番小さな女の子がいち早く出迎えに行く。
「いらっしゃいませ♪ビアホール【境界線】ヘようこそ♪」
女の子は早速猫人類の老婆に声を掛けたが、言葉が通じていないのかキョトンとした表情をしている。
「おっと間違えた♪」〈ビアホール【境界線】ヘヨウコソ♪〉
女の子はにっこりと微笑んで彼女が使っている言語に切り替えた。
〈……コノ地図二描イテアル場所ノ事カイ?〉
女性は手にしている紙を見せてくる。
〈ハイ♪本日ノゴ来店アリガトウゴザイマス♪ゴ案内ハ私“クー”ガ務メサセテ頂キマス♪〉
〈ゴ丁寧ニアリガトウネ、オ嬢チャン〉
〈『オ嬢チャン』デハナイケド……マァ良イヤ♪行キマショウ♪〉
二人が手を繋ぐと店の前まで一瞬で到着した。突然景色が変わって女性は辺りをキョロキョロとしている。
〈……絵本デ見タ死後ノ【道先案内所】ダネェ〉
〈ヨクゴ存知デ♪アナタノ国デハ割ト正確ニ伝ワッテル様デスカラネ♪ササッ、入リマショウ♪〉
クーがドアの前に立つとギギギ、と音を立てて自動で開く。二人で中に入ると、水の入ったグラスを乗せているトレーを持って立っている少年が、イラッシャイマセと声を掛けてきた。
「お客様、先ずはこちらをお飲みください」
〈???〉
〈コレハオ水デス♪飲ンデミテクダサイ♪〉
女性は戸惑いながらも言われるまま水を飲む。
「いかがですか?」
「普通のお冷やの様だけど……あらっ?」
少年と普通に会話が出来ている事に気付いた女性は手にしているグラスを驚いた表情で見つめている。
「お解り頂けましたか?これを飲めば世界中全ての言語を使えるようになるんです。僕たちだけなら言語の対応は問題ありませんが、お客様同士の交流も多いので入店時にお出ししているんです」
「とてもありがたいサービスですね」
「光栄なお言葉です、ここで出されるメニューは全て無料でご提供させて頂きます。ごゆっくり、心ゆくまでお楽しみくださいませ」
「では、お席へご案内致します♪」
クーは女性の手を引いて店内一番奥のテーブル席に案内した。
「良いのかしら?四人席を一人で使っても」
「勿論です♪あなたは【資格】を持ってここに来たのですから♪その地図は入店権利書みたいな物ですよ♪では、ここの従業員をさくっと紹介しますね♪
先ずは褐色肌の大男が店長のゾン♪
さっき水を出したのがメルクリウス♪
そこで女性客とチャラついてるのがマルス♪
そっちのおっさん客の相手してるのがジョーヴェ♪
懐中時計持ってる爺さんがクロノス♪
テーブル拭いてるのがプルートー♪
クネクネして酒運んでるのがネプテューヌ♪
几帳面に皿拭いてるのがウラーノ♪
厨房でフライパン振ってるのがヴィニエーラ♪
そして改めまして私がクー♪
以上がここの従業員です♪」
新たに九人もの名前を一気に言われてもすぐには覚えられそうになくて、女性の頭はクラクラしてくる。それにしても随分とまとまりの無いグループだなという印象を持った彼女は、クーにどのようにして集ったのかを訊ねてみた。
「……何となく、ですかね♪」
女性はその返答に苦笑いする事しか出来なかった。
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