冥土の土産に一杯どうだい?

谷内 朋

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第一話

死に別れた大切な人との再会を願う魂 -7-

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 「今日はねぇ、もう一人ここに来るのぉ」

 えっ?シェリーはその話に興味を示す。

 「ここに連れてきてくれた……クーさんがその様な事を仰っていたわ。どんな方なのかお話してみたいわ」

 「それは不可能ぅ、ルールに反するからぁ」

 ネプテューヌは指でバッテン印を作って自身の口元に当てる。

 「確かここはほぼ・・無法地帯のはず……」

 「そぉ、ほぼ・・なのぉ。シェリーなら言わなくても理解してくれてそうだったからぁ」

 ネプテューヌはここに来る【顧客】は自分から話し掛けてはいけないというルールがある事を説明した。

 「きっと【住民】と【顧客】は滞在の目的が違うから、時として【住民】の生活を脅かす事になりかねない、ってところかしら?」

 「それも一つの正解よぉ。考え方はどうであれぇ、ルールの主旨さえ理解してくれてればそれで良いのぉ。私たち従業員相手であれば大丈夫なんだけどぉ、混乱されても困るからなるべくこっちから声を掛ける様にはしてるぅ」

 「と言う事は私ってとてもラッキーな体験をしているのね?だってヴィスキーオとヴィーンは私に縁を感じて下さった、これはとてもありがたい事だわ」

 シェリーは向かいに座っている二人組に笑い掛けると、ヴィスキーオは顔を真っ赤にして狼狽えている。

 「しぇ、シェリー……//」

 「イヤイヤ先輩、『話し掛けてくれてありがとう』って仰ってるだけですからね。一体何の妄想してるんです?」

 「わっ分かってらぁ!」

 呆れ口調の後輩をヴィスキーオはグーで頭をどつく。シェリーはそれを見て、仲が良ろしいのねと微笑ましく見つめていた。

 「そこはしっかりスルーするのねぇ……まぁむしろありがたい事だけどぉ」

 「先輩、変な気起こさないで下さいよ」

 「だぁーもう!修行魂の底意地を舐めんなよーッ!!!」

 「大丈夫だってばぁヴィーン、それを力に変えられる男だから修行魂の資格があるのよぉ」

 「でなきゃ困りますよー……あれ?空気変わりましたね」

 ヴィーンの耳がピクピクと動き出す。ヴィスキーオの表情も引き締まり、ネプテューヌとシェリーは入口の方に顔を向けている。

 「来るわねぇ、二人目の【顧客】がぁ」

 ネプテューヌの声に三人は頷いた。

 「「正直ここで会いたくなかった種類だな」ですね」

 新型猫人類の二人組は嫌そうな顔をしている。

 「だと思います、お二人の事を考えれば……」

 シェリーも二人組の事情は分かっている様だった。

 「だったら向こうが近付けないようにすればいいのねぇ」

 ネプテューヌが手を広げると小さなキューブがひょこっと現れた。

 「それは何かしら?」

 「結界ぃ、これで少なくとも私たちの姿が見えなくなるのぉ」

 キューブはみるみる大きくなり、あっという間に四人席を覆った。ところがネプテューヌはただねぇ、とニヤッと笑う。

 「お料理は見えたまんまなのぉ」

 「……」

 「「要らん演出すんなっ!!!」しないでくださいっ!!!」

 「えぇ〜、その方が気味悪がって近付かないかなぁ、って思ってぇ」

 ネプテューヌの“おふざけ”に三人は苦笑いするしかなかった。
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