冥土の土産に一杯どうだい?

谷内 朋

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第一話

死に別れた大切な人との再会を願う魂 -8-

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 「でも良かった……のよねぇ、シェリー。転生後ご主人とは伴侶になれないけどぉ」

 「確かに一瞬だけ残念には思ったけれど、彼の魂が母親でいてくれると思うと心強いわ。直前世で死に別れて百五十年、形は違えど夢そのものは叶っているのだからこれからが楽しみよ」

 ここへ来て“願い”を蒸し返してきたネプテューヌに、シェリーは希望に満ちた微笑みを見せる。そんな彼女の美しさに見惚れているヴィスキーオに後輩ヴィーンはもはや呆れている。

 「そろそろ現実に戻ってほしいんですけど」

 「いやぁ〜、俺は至って現実的だぞ」

 ((嘘付けや……!))

 ヴィーンとネプテューヌは薄気味悪そうにヴィスキーオを見る。そんな二人の視線などもろともせず、ヴィスキーオはシェリーの顔を見つめてニマニマとしていたのだが当人には全く相手にされていなかった。


 
 「……そろそろかも知れませんね」

 「そうさな、もうちょいで行き先も決まりそうだ」

 シェリーの道先案内の契約を終えたゾンとクロノスは、店の喧騒から離れて人影のみ・・が消えているテーブル席を見てコソコソと話している。

 「次なる魂の条件はなかなか厳しかったですからね」

 「確かにな。しっかしこれはこっちにとっても好都合だったんじゃあねえのか?」

 「結果論ですがその通りですね、きっといい働きを見せてくれると思いますよ。何しろ揃わなければ意味が無いですからね」

 クロノスは愛用している懐中時計を手に取って時間を確認する。

 「そのためには交流も必要さな、当分はこのままにしておこう。……それよりそろそろ時間かい?」

 ゾンはクロノスの動きをチラリと横目で見る。

 「いえ、もうしばらくかかるでしょう。道を間違えられている様でクーが迎えに行ってますね、その間少し休まれては?」

 クロノスは自身よりもはるかに背の高い店長を見上げた。

 「いいや問題無ぇ、次の奴さんは閻魔さんとこの預かりモンだからな」

 「でしたら尚の事……」

 「いや、相手はアクの強え【顧客】だ。従業員が欠けるのは好ましくねえだろ」

 「それもそうですね……もしものトラブルであればマルスで何とかなりますが、今回のパターンでは貴方に居て頂かないと困るのは事実です」

 「それだけは絶対させねぇ、安心しなって」

 ゾンは余裕綽々そうにニッと笑顔を作る。

 「なるべくお手間は取らせませんよ、私たちで滞りなく進めますから」

 「頼んだぞ」

 ゾンはクロノスの背中を叩いて頷いた。
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