26 / 39
第三話
【デスタウン】のお巡りさん -2-
しおりを挟む
マスターはすっかり慣れっこな様子で鳩二羽に近付き、“モリーツェ”で汚れた顔を丁寧に拭いてやる。
「“モリーツェ”はお気に召して頂けましたか?」
「「うんっ、また作ってね!」」
「畏まりました、定期的に入荷しておきましょう」
鳩二羽がマスターに懐いているのでトートは迂闊に手が出せず歯ぎしりをしている。
「止しなさいな、歯ぎしりなんてマナーの悪い」
竜人女性は一人VS二羽の睨み合いなど気にすること無く優雅にティータイムを過ごしている。
「そもそもあんの双子が横取りするからでしょうが、しかも頭ごと突っ込みやがって……」
女性は鳩の双子が食い散らかした料理の残骸を見てため息を吐く。
「まぁそれも大概よね……ディオス、ムエルテ、あなたたちで責任持って完食しなさい」
「「はーい、ホントトートってマナーが悪いよね」」
ディオスとムエルテと言う名の鳩の双子は大人しく元いた場所に戻って食事を再開する。
「……俺のせいじゃないだろ」
「そこは我慢なさい、あなたも後輩としてもう少し二人に敬意を払う必要があると思うわ」
「イヤイヤ、まずは敬意を払える行いをして欲しいもんですよ……」
トートは不服そうに竜人女性の顔を見る。
「「やっぱりスミューチェもそう思うよね?トートは態度デカイよね?」」
「私を巻き込まないでもらえる?」
「「冷たっ!スミューチェの人でなしっ!」」
「何か言ったかしら?」
スミューチェこと竜人女性はガッと目を見開いてディオスとムエルテを威嚇すると、鳩の双子はビクッと体を震わせて冷や汗をかいている。
「「なっ何でもございませーん……」」
ディオスとムエルテはスミューチェからパッと視線を逸らし、“モリーツェ”を必死に食べ始めた。
「スミューチェさん、もうそれくらいで……」
マスターは苦笑いしながら別の軽食を出してきた。このマスターどうも双子の鳩がお気に入りの様だ。
「こちらは?」
「甘いものに目が無いスミューチェさんならきっと気に入って頂けるのでは。こちらは“シフォンケイク”と言う名の焼き菓子でございます」
「甘い匂いがしてきますね、じゅるっ」
スミューチェはちろりと長い舌を出して口の周りをぺろりと舐める。上機嫌でいるはずなのに黄金の瞳がギラギラとしていてむしろ不気味に見えてくる。
「その顔怖いです」
トートは隣に居る竜人女性にバッサリと言い切ってやるが、そんなものもろともせず“シフォンケイク”を愛でてニヤニヤしている。
「黙れ骸骨、早速頂くとしましょう」
スミューチェはフォークを手にして“シフォンケイク”をぐさりと突き刺す。その状態で口まで運び、見た目はおちょぼ口に近い口が耳元までバックリと開いて一口で食べてしまった。
「毎度思うんですが味わって食べません?」
「「その口でどれだけの同胞がバックリ食われた事か……」」
「「ガクブル、ガクブル」」
ディオスとムエルテはスミューチェの形相を見て震えている。同胞と言っても“焼鳥”と言う名の料理の事なのだが、鳥人類の二羽だか二人だかは“共食い”になると言って鳥肉は食べないのだ。
「「我が同胞を食べるなんてお郷が知れるよね」」
「それがですねお二方、案外多いんですよ鳥肉を食べる惑星って。私は草食人類ですから肉そのものを頂きませんが」
マスターは可愛らしい鼻をひくひくとさせている。
「「なっなんて残酷な……」」
「何言ってやがる、食文化の範疇だろうが」
「「だったら“ミミズ”でもいいじゃないか!」」
「冗談じゃねぇ!あんなもん食えるか!」
「これはなかなか美味ですね」
スミューチェは三人のやり取りなど全く聞いていなかった。
「“モリーツェ”はお気に召して頂けましたか?」
「「うんっ、また作ってね!」」
「畏まりました、定期的に入荷しておきましょう」
鳩二羽がマスターに懐いているのでトートは迂闊に手が出せず歯ぎしりをしている。
「止しなさいな、歯ぎしりなんてマナーの悪い」
竜人女性は一人VS二羽の睨み合いなど気にすること無く優雅にティータイムを過ごしている。
「そもそもあんの双子が横取りするからでしょうが、しかも頭ごと突っ込みやがって……」
女性は鳩の双子が食い散らかした料理の残骸を見てため息を吐く。
「まぁそれも大概よね……ディオス、ムエルテ、あなたたちで責任持って完食しなさい」
「「はーい、ホントトートってマナーが悪いよね」」
ディオスとムエルテと言う名の鳩の双子は大人しく元いた場所に戻って食事を再開する。
「……俺のせいじゃないだろ」
「そこは我慢なさい、あなたも後輩としてもう少し二人に敬意を払う必要があると思うわ」
「イヤイヤ、まずは敬意を払える行いをして欲しいもんですよ……」
トートは不服そうに竜人女性の顔を見る。
「「やっぱりスミューチェもそう思うよね?トートは態度デカイよね?」」
「私を巻き込まないでもらえる?」
「「冷たっ!スミューチェの人でなしっ!」」
「何か言ったかしら?」
スミューチェこと竜人女性はガッと目を見開いてディオスとムエルテを威嚇すると、鳩の双子はビクッと体を震わせて冷や汗をかいている。
「「なっ何でもございませーん……」」
ディオスとムエルテはスミューチェからパッと視線を逸らし、“モリーツェ”を必死に食べ始めた。
「スミューチェさん、もうそれくらいで……」
マスターは苦笑いしながら別の軽食を出してきた。このマスターどうも双子の鳩がお気に入りの様だ。
「こちらは?」
「甘いものに目が無いスミューチェさんならきっと気に入って頂けるのでは。こちらは“シフォンケイク”と言う名の焼き菓子でございます」
「甘い匂いがしてきますね、じゅるっ」
スミューチェはちろりと長い舌を出して口の周りをぺろりと舐める。上機嫌でいるはずなのに黄金の瞳がギラギラとしていてむしろ不気味に見えてくる。
「その顔怖いです」
トートは隣に居る竜人女性にバッサリと言い切ってやるが、そんなものもろともせず“シフォンケイク”を愛でてニヤニヤしている。
「黙れ骸骨、早速頂くとしましょう」
スミューチェはフォークを手にして“シフォンケイク”をぐさりと突き刺す。その状態で口まで運び、見た目はおちょぼ口に近い口が耳元までバックリと開いて一口で食べてしまった。
「毎度思うんですが味わって食べません?」
「「その口でどれだけの同胞がバックリ食われた事か……」」
「「ガクブル、ガクブル」」
ディオスとムエルテはスミューチェの形相を見て震えている。同胞と言っても“焼鳥”と言う名の料理の事なのだが、鳥人類の二羽だか二人だかは“共食い”になると言って鳥肉は食べないのだ。
「「我が同胞を食べるなんてお郷が知れるよね」」
「それがですねお二方、案外多いんですよ鳥肉を食べる惑星って。私は草食人類ですから肉そのものを頂きませんが」
マスターは可愛らしい鼻をひくひくとさせている。
「「なっなんて残酷な……」」
「何言ってやがる、食文化の範疇だろうが」
「「だったら“ミミズ”でもいいじゃないか!」」
「冗談じゃねぇ!あんなもん食えるか!」
「これはなかなか美味ですね」
スミューチェは三人のやり取りなど全く聞いていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる