上 下
32 / 39
第三話

【デスタウン】のお巡りさん ー8ー

しおりを挟む
 〈〈〈〈〈一体何ガ始マルンダ……?〉〉〉〉〉

 “迷い魂”たちは集合体の中央に降り立ったトートを不安そうに見つめている。

 〈〈〈〈〈何カヤバソウナノガ来タ……〉〉〉〉〉

 トートはそんな言葉も気にせず大鎌を握りしめて精神を集中させている。骸骨姿の大男が徐々に新人類の姿形になり、フードから微かに覗く顔は誰もが見惚れる美男子に変貌を遂げていた。

 〈〈〈〈〈オイッ!イケメンニ変ワッタゾ!〉〉〉〉〉

 〈〈〈〈〈コンナイイ男見タ事無イワ……〉〉〉〉〉

 “迷い魂”たちがざわつく中でトートは大鎌を振り上げる。配置に着いている“死神部隊”たちは彼の動きに集中する。

 「ふんッ!!!」

 トートは思いっ切り大鎌を振り下ろして透明な橋に先端を突き刺す。あっという間に放射線状にヒビが入り、パリン!という音と共に橋が砕け散った。

 〈〈〈〈〈〈〈〈〈ウワアァ~~~!!!〉〉〉〉〉〉〉〉〉

 九万も居た集合体はそのまま下に落ちていき、ほんの僅かに残った“迷い魂”は自分たちが浮いたままである事に慌て始めていた。

 「行きますよ皆さん!」

 「「「「「「はっ!!!」」」」」」

 スミューチェのひと声で“死神部隊”たちの動きが慌ただしくなる。新人部員君は一瞬出遅れたものの、気を取り直して一番近くにいた“迷い魂”の女性を救出する。
 彼は学科で習った通りの手順で女性の行き先を読み取ると、彼女は本来【関所】へ行くべき魂である事が分かった。

 「【六番関所】……ここからだと全力で十分程ってところか……」

 「……………………余り時間が無い、リミットは二十七分……………………」

 「さ、サー・グリムリーパー!!!」

 新人部員君は“死神部隊”のトップに声を掛けられてガチガチに緊張している。ススンは敬礼を止めるようサッと右手の平を見せる。

 「……………………振り返るな、前のみ見て集中しろ……………………」

 「……はっ!!!あ、ありがたきお言葉ッ!!!」

 新人部員君はススンの言葉に感激して瞳を潤ませつつも、ここは所謂“戦場”であるためすぐさま気を取り直して女性を抱え直した。

 〈今カラアナタヲ然ルベキ場所ニオ連レ致シマス、シッカリ掴マッテテクダサイネ〉

 〈……アリガトウゴザイマス、ヨロシクオ願イシマス〉

 「サー・グリムリーパー、私は持ち場を離れますっ!」

 「……………………うむ、行くがよい………………」

 新人部員君はススンに見送られ、女性を【関所】へ送り届けていった。



 同じ頃、空中ではディオスとムエルテが好き放題に暴れ回って“オジャマタクシ”を殲滅中だ。お陰で燃料収集に駆り出されている下層部員たちは大忙しである。

 「「ちょっと新技使ってみない?」」

 「「そうしようそうしよう!じゃ行くよー!」」

 二人は横並びになって羽を思いっきり広げ、互いの羽の先端をくっつけ合って三角形を作る。

 「「フ○○○○ンッ!!!」」

 二人の羽から大量の羽根が放射線状に発射され、容赦無く“オジャマタクシ”を射抜いていく。しかもその羽根は狙った獲物をどこまでも追い掛ける、相手にとってはたちの悪い性質を持っている。

 「お二方!それ大丈夫なやつですか!?」

 「「え~っ、何がぁ?」」

 「どこかの惑星の“パクリ”じゃないでしょうね!?」

 「「さぁね~、やったモン勝ち……あ痛っ!!!」」

 二人は不意打ちを食らって真っ逆さまに落ちていく……。
しおりを挟む

処理中です...