1 / 7
黒猫
しおりを挟む
とある小さな町に黒猫のお眼鏡にかなった者だけが訪れることのできるーー不思議な店がある。
店の名は『喫茶 黒猫』
黒猫に魅入られ、その店に足を踏み入れた“客”は、珈琲代の代わりに“あるモノ”を支払うことになるーーー
夢うつつのごとく……艶めかしくしっぽを揺らしながら黒猫はふらりと街にやってくる。
ビー玉のような大きな瞳を光らせて“客を物色”するためにーーー
お眼鏡にかなう者(客)はいるのか……次はどんな者(客)が訪れるのか……それは誰にもわからない……。
すべては黒猫の気分しだいーーー
黒猫は今日も“記憶(おもいで)”を紡いでいくーーー
✽
「もう無理だ~!」
仕事で田舎の小さな町にやって来た黒瀬亨(くろせとおる)は、履き崩した靴を脱ぎ捨てると公園のベンチに勢いよく仰向けになった。
目に飛び込んでくるのは嫌味なほどの青空。
今日はいける! と、新規の客を獲得するためにいつも以上に張り切って営業に回ったものの、不況の煽りもあってどこの企業もなかなか良い返事をくれない。
結局一件も契約を取れずに気づけば昼を過ぎていた。
課長になんて言おう……そんなことを考えるだけで胃がキリキリと痛む。会社に戻れば盛大な皮肉満載のおこごとが待っているのは容易に想像できた。
就職して五年、高校を卒業して入った飲食関係の会社は想像していたよりはるかにハードで残業、休日出勤は当たり前のブラック企業だった。
世の中の大変さとは無縁だった子供の頃……何も知らず夢や希望に胸を膨らませていたときがいちばん幸せだった……と目を細める。
昔を懐かしんだところで状況は何も変わらないのはわかっているが、弱った心はいつでも幸せだった瞬間(とき)を想い出させる。
このままどこかへ消えてしまいたい……いやいや社会人として許されない行為だ……いっそ転職でもしようか……そんなジレンマと葛藤に苛まれていると、雑草の陰から綺麗な黒猫が現れてしなりしなりと近づいて来る……すると黒瀬の前で立ち止り礼儀正しくお座りをする。
予想外の黒猫の行動に少し驚きつつなぜか目が離せない。
「お前、迷子か?」
妙な空気感のあと黒瀬はポツリと黒猫に投げかけて、そっと頭を撫でる。とりわけ猫が好きなわけでもなかったが、何となく手が伸びてしまった。 毛並みがとても綺麗で手入れの行き届いた見るからに大切にされている猫だとわかる。飼い主が心配して探し回ってないだろうか?
そんな黒瀬の心配など猫にはどこ吹く風のようで、黒猫は大きな目でジッと黒瀬を見つめていた。
しなやかに揺れる艶やかなしっぽ。キラキラと光るビー玉みたいな瞳がついて来いと語りかけているように思えた。ニャア~と鳴いたと思うと踵を返す黒猫に誘われるように黒瀬の体は自然と動いていた。
すれ違う人が皆「こんにちは」とあいさつをしていくことに戸惑いつつ黒瀬もつられて頭を下げる。人との触れ合いが希薄な都会ではあまり見ない光景だ。世間の喧騒とはほど遠い土地で暮らしていると、こんな風に穏やかな表情で誰かに接することが出来るのだろうか……?
いや自分も昔はそうだったはず。けれど仕事に追われ時間に追われていく中で、いつの間にか周囲に気を遣う余裕なんてなくなっていた。 いつも誰かの目を気にして、心の裏を読んで……生き馬の目を抜くみたいな生活には疲れてしまった。
“本当はーーわかっている”
少し歩いたところで猫の足がピタッと止まり、目の前の坂道を見上げた。
(ここを上がるのか?)
黒猫が見つめる先を黒瀬も見つめる。アスファルトの坂がゆるやかなカーブを描きながら果てしなく続いている。
登った先には何があるのか……お菓子のオマケをわくわくしながら開けていた子供の頃みたいに不思議と胸が高鳴った。
大人になるにつれどこか冷めた目で物事を見てしまいがちになる。それは悪い事ではないのかもしれないが……大切な何かをおき忘れてきたみたいで、時々寂しい気持ちになる。
黒瀬は躊躇しながらも引き込まれるようにゆっくりと坂道を歩きはじめた。いつの間にか猫はずいぶんと先を行っていて、時折後ろを振り向いたかと思えば催促するようにジッと黒瀬を見る。梅雨はまだ少し先なのに絡みつく生温かい空気に額がジワリと汗ばみはじめる。
余裕だと思っていた坂道は黒瀬の前に立ちはだかる山と化していた。
汗をハンカチで拭きながら、猫の優雅な後ろ姿に見惚れているうちに、気づけば坂を登りきっていた。
少し高台にあるそこは見晴しもよく街が一望できる静かな場所だった。気持ちのいい風が全身を通り過ぎ、黒瀬は大きく息を吸い込んだ。
黒猫に誘われるままここまで来たが、意外な穴場を教えてもらえていい運動にもなった。横道にはそれてしまったが結果的に良かったのだろう。
「リフレッシュできたし、また営業に励みますか~その前に腹ごしらえしないとな」
黒瀬が坂道を下りようとした時、黒猫はこっちだと言わんばかりにズボンの裾に爪を立てる。
「ここに連れて来たかったんじゃないのか?」と思わず口にする。 猫は顎をクイとするような仕草をしてゆっくりと走り出した。
(人間みたいな猫だな)
どうして自分は猫の後を追いかけてるんだ? と今さらながら頭を傾げつつ黒瀬は後を追うのをやめられなかった。魅惑的な黒猫に魅入られてしまったのか? 馴染みのない土地で冒険気分を味わいたかったのか? もしくは現実逃避をしたかったのか……どちらにせよ黒瀬は黒猫に魔法をかけられて動かされているような……そんな気がしてならなかった。
「どこに行くんだ……?」
見失わないように必死で後を追う。 少し行った先の建物の前で立ち止まり黒猫は黒瀬の方に向き直すと、ニャア~と鳴いて小さくお辞儀をした……ように見えた。
そして役目は終ったと言いたげにフイとどこかに消えてしまった。
“また勝手に……”
“心配するな”《ニャア~》
建物の中から猫の甘えた鳴き声と女性のそんな声が聞こえた。
(ここに連れて来たかったのか?)
古びた三角屋根と赤煉瓦の建物。どこかあやしげでうら寂しい感じのする店だった。
視線を上げるとギーギーと錆びついた突き出し看板が嫌な音をたてて揺れている。看板には薄っすらと『喫茶 黒猫』とある。
「喫茶……黒猫、 こんな場所(ところ)に喫茶店があるなんて……」
黒瀬は訝しな表情を浮かべた。駅から離れてる上にゆるやかな坂道とはいえ、わざわざ登らないとわからないような辺鄙な場所に“ある”ことに。 けれど黒猫がここまで連れてきた(勝手についてきた)のには、何か意味があるのかもしれない……坂道を登って汗もかいて喉もカラカラだ。せっかくだから冷たいものでも飲んで行こう。黒瀬は古びた扉のノブに手を掛けた。
カラン……。
小さくドアベルが鳴り黒瀬は伺うように中へと入る。店内は薄暗くシンと静まり返っていた。別に悪さをしに入ったわけではないのになぜか罪悪感が湧き上がってくる。子供の頃にボールを探しに知らない家の庭に忍び込んだ時に少し似ていた。
「いらっしゃいませ」
「ひっ!」
突然の声に黒瀬の背中はピシッと伸びる。慌てて振り向くとカウンターの奥からひとりの女性が現れた。きれいな黒髪を一つに束ねて黒のタートルネックのインナーと黒の長エプロンに身を包んだ……二十代半ばから後半くらいの、どこかミステリアスな雰囲気を纏った女性だった。
「さっきの猫!?」
「はい?」
「いえ、な、なんでもないです……」
さっきの黒猫が人間になって現れたのかと思った。そんなことあるわけないのに……と頭をブンブン振ると扉にいちばん近いカウンター席に座った。
「ご注文は?」
(淡々とした女性だな……)
メニューボードを見ると、ホット・アイスとしか書いてない。金額の記載もなく少し不安になる。
(ぼったくりの店じゃないよな……)
「えっと……アイスコーヒーをお願いします」
「かしこまりました」
夜の店ではなさそうだし……ぼったくられる心配はないだろう……変な緊張感に頭がぐるぐるする。
女性は軽く頭を下げるとカウンターの奥に消えていった。中から豆を挽く音が聞こえて、作り置きじゃない少し得した気分と変な店はわざわざ豆は挽かないだろうという妙な安心感に胸がほっとする。
愛想が良いとはいえないが挽きたて淹れたてが飲めるなら……まあいいか。と黒瀬はアイスコーヒーが出てくるのを楽しみに待った。
「おまたせしました。どうぞ」
「ど、どうも…」
出てきたアイスコーヒーはキラキラと輝いていた。飲むのが勿体ないぐらいに。
「……うまっ!」
思わず目を見開く。珈琲にこだわりはないがたまに行く近所の喫茶店やコンビニで買う数百円のアイスコーヒーとは比べるのも申し訳ないほど美味しかった。
コクがあってスッキリとした味わい。そして程よい酸味……テンプレしたようなありきたりな表現ではあるが、感動するくらい美味しいのは本当で。それと同じくらいに懐かしさも感じた。大人になって飲み始めた珈琲の味に懐かしさも何もないが、なぜだか……すごく懐かしい。
ほっとする落ち着くではなく、懐かしい……のだ。
なんだ……この感覚は? と黒瀬は戸惑ってしまった。
「お客様、珈琲のお味はいかがでしたか? 感想をお聞かせ頂けましたら幸いでございます」
いきなり女性がそんなことを言ってきた。さっきまで客に無関心とばかりに淡々としていたのに……。
「味……の、感想ですか?」
「ええ、どんな味がしますか?」
急に饒舌になり感想を求めてきた。どんな味……、懐かしい味と言ったら変に思われるだろうか? 言葉に困っていると「懐かしい味ですか」と女性が心を読んだように口にした。
「どうして……?」と表情が強張る。 ふふっと女性の目が一瞬妖しく光ったように見えた。黒瀬は背筋が凍るような得体の知れない恐怖を感じ、やっぱり危ない店だった!と手早く千円札を取り出しカウンターに置くと椅子から立ち上がる。
すると足首にスルリと何かが纏わりついてきて黒瀬は「ひっ」と背筋を伸ばした。
「わっ、なんだ!」
《ニャア……》
「あっ、さっきの黒猫!」
見ると黒瀬をこの店まで連れてきた黒猫がいた。 黒猫はピョンと軽やかにカウンターの上にのぼると、射るような眼差しで見つめてきた。 黒猫のビー玉のような大きな金色の瞳が今度は万華鏡のようにたくさんの色彩を宿しキラキラと輝き出す。気を抜くと吸い込まれてしまいそうなほどに神秘的で美しい………。
女性が「お代はけっこうです、代わりに“あるモノ”を頂きたいのです」と言った。
《ニャア~》
黒猫も女性の言葉に応えるように声高らかに鳴いた。
「それは、どういう……」
命ーーではない……と、女性がまた心を先読みしたように呟いた。
「”彼“は黒猫のダナ。私はアリス、彼に仕える者」 「彼って……? 仕えるって?」
「あなたの飲んだ珈琲は、あなたの大切な思い出の味なのです」
「……はい?」
アイスコーヒーの水面が静かに揺れたかと思うと、アリスの言葉とともに店内は均衡を失ったかのように歪みだす。
“体の力が抜ける……やっぱり騙され……んだ……! ”
そこで黒瀬の意識は途切れた。
【あなたのいちばん大切に思っている……いちばん幸せだった時の記憶(おもいで)を私たちに見せて……】
「彼でしょうか」
『それは、わからない……』
アリス以外の声がする。もちろん黒瀬ではない。ただこの場にいる者にとって、そんなことはどうでも良かった。
【ではこの者のいちばん大切な記憶を見せてもらいましょう】
混沌とした空間が煌びやかに色づきはじめるーーー
……ゴリ……ガッガツ……ゴッゴッ……ガッ……ゴリ……
“子供の頃、父さんが家にいるといつも豆を挽く音が
家中に響いてたな……”
ーーお父さん、これ何してるの?
ーーこれはな珈琲の豆をすり潰してるんだ。直前に豆を
挽くと美味しい珈琲が淹れられて、豆の香りがとて
も心を落ち着かせてくれるんだよ。
“そういえば珈琲を淹れてる時の父さんって穏やかで
幸せそうだったな”
ーーゔぇ苦いよ、何これ全然美味しくないじゃん。
ーーまだ亨には早かったかな。
“俺が父さんの目を盗んで珈琲を飲んだ時、笑って
たけど、なんだか嬉しそうだったし……”
ーーお父さん、僕、大きくなったらお父さんみたいに人
を助けられるひとになりたいんだ。
ーーおお、そうか亨は偉いな。その為にはいっぱい勉強
して、いっぱい色んな経験をしないとな。
ーーうん、僕、頑張るね。
ーー僕、今日学校で一番になったんだ。
ーー頑張ったな、偉いぞ!
ーー亨、大学に行かずに就職するって本当か?
ーーうん、父さんが倒れて母さんも大変なのに、僕だけ
悠長に大学なんて行けないよ。
ーー弁護士になるのが夢だったんだろ?
ーーでも今は父さんの入院費を稼ぐ方が大事だから、
高校はあと一年で卒業だし、なんとかやめずに済ん
で感謝してるよ。
ーーすまない、父さんのせいでお前の人生が……
ーーなに言ってんの父さんは自分の体の心配してよ。大
学なんて行こうと思えばいつでも行けるんだから。
ーー亨、もし父さんに何かあったら母さんのこと頼む
な。
ーーそんなこと考えないで、早く元気になって昔みたい
に三人で山に登ろうよ。
ーーああ、そうだな早く元気になって母さんやお前とま
た山に登りたい!
ーーそうそう その意気だよ。
ーーあなた!!
ーー父さん!!
ーー母さん大丈夫……無理してない? 俺バイト増やす
から……それにもう少しで卒業だし就職したら、少し
は楽させてあげれると思うから待っててよ。
ーーありがとう。亨には母さんもお父さんも迷惑をかけ
てばかりね。あなたは心配しなくていいから。高校
生活を楽しみなさい。母さんは大丈夫だから。
ーー迷惑なんて思ってないよ! もし……母さんま
で……
“最近……忙しくて連絡してないな。たまには顔みせない
と”
『父親のために夢を諦め就職したが、とんでもないブラック企業だったようだな。こやつを支えているのは家族で過ごした時間……。子供の頃のいちばん幸せだった記憶(おもいで)なのだな……なかなか苦労しておる。もう限界みたいだがな』
「どうされますか? ダナ様」
『この記憶(おもいで)を貰うわけにはいかないな。その代わり……』
ーー……様、お客様。
「お客様、お目覚めですか」
「あ、あれ……俺どうしたんだっけ?」
ぼうっとした頭で黒瀬は体を起こした。
「お疲れだったようで、珈琲を飲んだあと眠られてしまって」
「え!? す、すみません、ご迷惑を掛けしてしまって!」
「いえいえ、こちらは大丈夫です。ご覧の通りお客様以外に誰もおりませんので」
「本当すみません! えっと……珈琲いくらですか?」
「先に頂きましたので大丈夫ですよ」
「え?」
深々と見送られ黒瀬は店を後にした。 後ろ髪を引かれながら、なんかおかしいな……? と頭を傾げるが、それがなんなのか思い出せない。ただ、ずっと重かった頭と体がなんとなく軽くなった気が……する。
「寝落ちなんてクソ恥ずかしい。 まあ久しぶりに父さんの夢も見れたしーー大学に行かせてやれなかったって最後まで気にしてたっけ。大学か……今からでも頑張ってみるのもいいかも!」
スッキリとした面持ちで黒瀬は清々しい空の下に戻って行くーー新しいステージのために。
(あれ、ところで俺、なんで、あんなところに……いたんだ?)
『あの者に“負”の記憶は必要ないだろう。今の職場も早々に辞めることになる。もう一度、人生をやり直すために……』
【では、あの者のここ数年の“負”の記憶(おもいで)を頂くということで、よろしいですね】
『ああ……』
ぴちょん……ーーどこかで水の滴り落ちる音が聞こえた。
「……今回も違いましたね」
『そうだな』
「訪れますかね」
『気長に待つとするさ……』
「長いこと待ってますけどね」
『まあ時間だけは無駄にあるからな』
黒猫のダナと女店主アリス……一匹とひとりの声色が切なくて哀しげに聞こえたのは気のせいだろうか……。
黒猫に魅入られ『喫茶 黒猫』に訪れた“客”はーー大切な記憶(思い出)を支払わなければならない。
それが幸となるか……不幸となるか……。
それは黒猫の気分しだいーーー
三角屋根と赤煉瓦の建物が目を引く『喫茶 黒猫』は、小さな町のどこかで“客”の訪れを待っている。
気まぐれに艶やかなしっぽを揺らしながら……黒猫は今日も街に現れる。
次の“客”を物色するためにーーー
店の名は『喫茶 黒猫』
黒猫に魅入られ、その店に足を踏み入れた“客”は、珈琲代の代わりに“あるモノ”を支払うことになるーーー
夢うつつのごとく……艶めかしくしっぽを揺らしながら黒猫はふらりと街にやってくる。
ビー玉のような大きな瞳を光らせて“客を物色”するためにーーー
お眼鏡にかなう者(客)はいるのか……次はどんな者(客)が訪れるのか……それは誰にもわからない……。
すべては黒猫の気分しだいーーー
黒猫は今日も“記憶(おもいで)”を紡いでいくーーー
✽
「もう無理だ~!」
仕事で田舎の小さな町にやって来た黒瀬亨(くろせとおる)は、履き崩した靴を脱ぎ捨てると公園のベンチに勢いよく仰向けになった。
目に飛び込んでくるのは嫌味なほどの青空。
今日はいける! と、新規の客を獲得するためにいつも以上に張り切って営業に回ったものの、不況の煽りもあってどこの企業もなかなか良い返事をくれない。
結局一件も契約を取れずに気づけば昼を過ぎていた。
課長になんて言おう……そんなことを考えるだけで胃がキリキリと痛む。会社に戻れば盛大な皮肉満載のおこごとが待っているのは容易に想像できた。
就職して五年、高校を卒業して入った飲食関係の会社は想像していたよりはるかにハードで残業、休日出勤は当たり前のブラック企業だった。
世の中の大変さとは無縁だった子供の頃……何も知らず夢や希望に胸を膨らませていたときがいちばん幸せだった……と目を細める。
昔を懐かしんだところで状況は何も変わらないのはわかっているが、弱った心はいつでも幸せだった瞬間(とき)を想い出させる。
このままどこかへ消えてしまいたい……いやいや社会人として許されない行為だ……いっそ転職でもしようか……そんなジレンマと葛藤に苛まれていると、雑草の陰から綺麗な黒猫が現れてしなりしなりと近づいて来る……すると黒瀬の前で立ち止り礼儀正しくお座りをする。
予想外の黒猫の行動に少し驚きつつなぜか目が離せない。
「お前、迷子か?」
妙な空気感のあと黒瀬はポツリと黒猫に投げかけて、そっと頭を撫でる。とりわけ猫が好きなわけでもなかったが、何となく手が伸びてしまった。 毛並みがとても綺麗で手入れの行き届いた見るからに大切にされている猫だとわかる。飼い主が心配して探し回ってないだろうか?
そんな黒瀬の心配など猫にはどこ吹く風のようで、黒猫は大きな目でジッと黒瀬を見つめていた。
しなやかに揺れる艶やかなしっぽ。キラキラと光るビー玉みたいな瞳がついて来いと語りかけているように思えた。ニャア~と鳴いたと思うと踵を返す黒猫に誘われるように黒瀬の体は自然と動いていた。
すれ違う人が皆「こんにちは」とあいさつをしていくことに戸惑いつつ黒瀬もつられて頭を下げる。人との触れ合いが希薄な都会ではあまり見ない光景だ。世間の喧騒とはほど遠い土地で暮らしていると、こんな風に穏やかな表情で誰かに接することが出来るのだろうか……?
いや自分も昔はそうだったはず。けれど仕事に追われ時間に追われていく中で、いつの間にか周囲に気を遣う余裕なんてなくなっていた。 いつも誰かの目を気にして、心の裏を読んで……生き馬の目を抜くみたいな生活には疲れてしまった。
“本当はーーわかっている”
少し歩いたところで猫の足がピタッと止まり、目の前の坂道を見上げた。
(ここを上がるのか?)
黒猫が見つめる先を黒瀬も見つめる。アスファルトの坂がゆるやかなカーブを描きながら果てしなく続いている。
登った先には何があるのか……お菓子のオマケをわくわくしながら開けていた子供の頃みたいに不思議と胸が高鳴った。
大人になるにつれどこか冷めた目で物事を見てしまいがちになる。それは悪い事ではないのかもしれないが……大切な何かをおき忘れてきたみたいで、時々寂しい気持ちになる。
黒瀬は躊躇しながらも引き込まれるようにゆっくりと坂道を歩きはじめた。いつの間にか猫はずいぶんと先を行っていて、時折後ろを振り向いたかと思えば催促するようにジッと黒瀬を見る。梅雨はまだ少し先なのに絡みつく生温かい空気に額がジワリと汗ばみはじめる。
余裕だと思っていた坂道は黒瀬の前に立ちはだかる山と化していた。
汗をハンカチで拭きながら、猫の優雅な後ろ姿に見惚れているうちに、気づけば坂を登りきっていた。
少し高台にあるそこは見晴しもよく街が一望できる静かな場所だった。気持ちのいい風が全身を通り過ぎ、黒瀬は大きく息を吸い込んだ。
黒猫に誘われるままここまで来たが、意外な穴場を教えてもらえていい運動にもなった。横道にはそれてしまったが結果的に良かったのだろう。
「リフレッシュできたし、また営業に励みますか~その前に腹ごしらえしないとな」
黒瀬が坂道を下りようとした時、黒猫はこっちだと言わんばかりにズボンの裾に爪を立てる。
「ここに連れて来たかったんじゃないのか?」と思わず口にする。 猫は顎をクイとするような仕草をしてゆっくりと走り出した。
(人間みたいな猫だな)
どうして自分は猫の後を追いかけてるんだ? と今さらながら頭を傾げつつ黒瀬は後を追うのをやめられなかった。魅惑的な黒猫に魅入られてしまったのか? 馴染みのない土地で冒険気分を味わいたかったのか? もしくは現実逃避をしたかったのか……どちらにせよ黒瀬は黒猫に魔法をかけられて動かされているような……そんな気がしてならなかった。
「どこに行くんだ……?」
見失わないように必死で後を追う。 少し行った先の建物の前で立ち止まり黒猫は黒瀬の方に向き直すと、ニャア~と鳴いて小さくお辞儀をした……ように見えた。
そして役目は終ったと言いたげにフイとどこかに消えてしまった。
“また勝手に……”
“心配するな”《ニャア~》
建物の中から猫の甘えた鳴き声と女性のそんな声が聞こえた。
(ここに連れて来たかったのか?)
古びた三角屋根と赤煉瓦の建物。どこかあやしげでうら寂しい感じのする店だった。
視線を上げるとギーギーと錆びついた突き出し看板が嫌な音をたてて揺れている。看板には薄っすらと『喫茶 黒猫』とある。
「喫茶……黒猫、 こんな場所(ところ)に喫茶店があるなんて……」
黒瀬は訝しな表情を浮かべた。駅から離れてる上にゆるやかな坂道とはいえ、わざわざ登らないとわからないような辺鄙な場所に“ある”ことに。 けれど黒猫がここまで連れてきた(勝手についてきた)のには、何か意味があるのかもしれない……坂道を登って汗もかいて喉もカラカラだ。せっかくだから冷たいものでも飲んで行こう。黒瀬は古びた扉のノブに手を掛けた。
カラン……。
小さくドアベルが鳴り黒瀬は伺うように中へと入る。店内は薄暗くシンと静まり返っていた。別に悪さをしに入ったわけではないのになぜか罪悪感が湧き上がってくる。子供の頃にボールを探しに知らない家の庭に忍び込んだ時に少し似ていた。
「いらっしゃいませ」
「ひっ!」
突然の声に黒瀬の背中はピシッと伸びる。慌てて振り向くとカウンターの奥からひとりの女性が現れた。きれいな黒髪を一つに束ねて黒のタートルネックのインナーと黒の長エプロンに身を包んだ……二十代半ばから後半くらいの、どこかミステリアスな雰囲気を纏った女性だった。
「さっきの猫!?」
「はい?」
「いえ、な、なんでもないです……」
さっきの黒猫が人間になって現れたのかと思った。そんなことあるわけないのに……と頭をブンブン振ると扉にいちばん近いカウンター席に座った。
「ご注文は?」
(淡々とした女性だな……)
メニューボードを見ると、ホット・アイスとしか書いてない。金額の記載もなく少し不安になる。
(ぼったくりの店じゃないよな……)
「えっと……アイスコーヒーをお願いします」
「かしこまりました」
夜の店ではなさそうだし……ぼったくられる心配はないだろう……変な緊張感に頭がぐるぐるする。
女性は軽く頭を下げるとカウンターの奥に消えていった。中から豆を挽く音が聞こえて、作り置きじゃない少し得した気分と変な店はわざわざ豆は挽かないだろうという妙な安心感に胸がほっとする。
愛想が良いとはいえないが挽きたて淹れたてが飲めるなら……まあいいか。と黒瀬はアイスコーヒーが出てくるのを楽しみに待った。
「おまたせしました。どうぞ」
「ど、どうも…」
出てきたアイスコーヒーはキラキラと輝いていた。飲むのが勿体ないぐらいに。
「……うまっ!」
思わず目を見開く。珈琲にこだわりはないがたまに行く近所の喫茶店やコンビニで買う数百円のアイスコーヒーとは比べるのも申し訳ないほど美味しかった。
コクがあってスッキリとした味わい。そして程よい酸味……テンプレしたようなありきたりな表現ではあるが、感動するくらい美味しいのは本当で。それと同じくらいに懐かしさも感じた。大人になって飲み始めた珈琲の味に懐かしさも何もないが、なぜだか……すごく懐かしい。
ほっとする落ち着くではなく、懐かしい……のだ。
なんだ……この感覚は? と黒瀬は戸惑ってしまった。
「お客様、珈琲のお味はいかがでしたか? 感想をお聞かせ頂けましたら幸いでございます」
いきなり女性がそんなことを言ってきた。さっきまで客に無関心とばかりに淡々としていたのに……。
「味……の、感想ですか?」
「ええ、どんな味がしますか?」
急に饒舌になり感想を求めてきた。どんな味……、懐かしい味と言ったら変に思われるだろうか? 言葉に困っていると「懐かしい味ですか」と女性が心を読んだように口にした。
「どうして……?」と表情が強張る。 ふふっと女性の目が一瞬妖しく光ったように見えた。黒瀬は背筋が凍るような得体の知れない恐怖を感じ、やっぱり危ない店だった!と手早く千円札を取り出しカウンターに置くと椅子から立ち上がる。
すると足首にスルリと何かが纏わりついてきて黒瀬は「ひっ」と背筋を伸ばした。
「わっ、なんだ!」
《ニャア……》
「あっ、さっきの黒猫!」
見ると黒瀬をこの店まで連れてきた黒猫がいた。 黒猫はピョンと軽やかにカウンターの上にのぼると、射るような眼差しで見つめてきた。 黒猫のビー玉のような大きな金色の瞳が今度は万華鏡のようにたくさんの色彩を宿しキラキラと輝き出す。気を抜くと吸い込まれてしまいそうなほどに神秘的で美しい………。
女性が「お代はけっこうです、代わりに“あるモノ”を頂きたいのです」と言った。
《ニャア~》
黒猫も女性の言葉に応えるように声高らかに鳴いた。
「それは、どういう……」
命ーーではない……と、女性がまた心を先読みしたように呟いた。
「”彼“は黒猫のダナ。私はアリス、彼に仕える者」 「彼って……? 仕えるって?」
「あなたの飲んだ珈琲は、あなたの大切な思い出の味なのです」
「……はい?」
アイスコーヒーの水面が静かに揺れたかと思うと、アリスの言葉とともに店内は均衡を失ったかのように歪みだす。
“体の力が抜ける……やっぱり騙され……んだ……! ”
そこで黒瀬の意識は途切れた。
【あなたのいちばん大切に思っている……いちばん幸せだった時の記憶(おもいで)を私たちに見せて……】
「彼でしょうか」
『それは、わからない……』
アリス以外の声がする。もちろん黒瀬ではない。ただこの場にいる者にとって、そんなことはどうでも良かった。
【ではこの者のいちばん大切な記憶を見せてもらいましょう】
混沌とした空間が煌びやかに色づきはじめるーーー
……ゴリ……ガッガツ……ゴッゴッ……ガッ……ゴリ……
“子供の頃、父さんが家にいるといつも豆を挽く音が
家中に響いてたな……”
ーーお父さん、これ何してるの?
ーーこれはな珈琲の豆をすり潰してるんだ。直前に豆を
挽くと美味しい珈琲が淹れられて、豆の香りがとて
も心を落ち着かせてくれるんだよ。
“そういえば珈琲を淹れてる時の父さんって穏やかで
幸せそうだったな”
ーーゔぇ苦いよ、何これ全然美味しくないじゃん。
ーーまだ亨には早かったかな。
“俺が父さんの目を盗んで珈琲を飲んだ時、笑って
たけど、なんだか嬉しそうだったし……”
ーーお父さん、僕、大きくなったらお父さんみたいに人
を助けられるひとになりたいんだ。
ーーおお、そうか亨は偉いな。その為にはいっぱい勉強
して、いっぱい色んな経験をしないとな。
ーーうん、僕、頑張るね。
ーー僕、今日学校で一番になったんだ。
ーー頑張ったな、偉いぞ!
ーー亨、大学に行かずに就職するって本当か?
ーーうん、父さんが倒れて母さんも大変なのに、僕だけ
悠長に大学なんて行けないよ。
ーー弁護士になるのが夢だったんだろ?
ーーでも今は父さんの入院費を稼ぐ方が大事だから、
高校はあと一年で卒業だし、なんとかやめずに済ん
で感謝してるよ。
ーーすまない、父さんのせいでお前の人生が……
ーーなに言ってんの父さんは自分の体の心配してよ。大
学なんて行こうと思えばいつでも行けるんだから。
ーー亨、もし父さんに何かあったら母さんのこと頼む
な。
ーーそんなこと考えないで、早く元気になって昔みたい
に三人で山に登ろうよ。
ーーああ、そうだな早く元気になって母さんやお前とま
た山に登りたい!
ーーそうそう その意気だよ。
ーーあなた!!
ーー父さん!!
ーー母さん大丈夫……無理してない? 俺バイト増やす
から……それにもう少しで卒業だし就職したら、少し
は楽させてあげれると思うから待っててよ。
ーーありがとう。亨には母さんもお父さんも迷惑をかけ
てばかりね。あなたは心配しなくていいから。高校
生活を楽しみなさい。母さんは大丈夫だから。
ーー迷惑なんて思ってないよ! もし……母さんま
で……
“最近……忙しくて連絡してないな。たまには顔みせない
と”
『父親のために夢を諦め就職したが、とんでもないブラック企業だったようだな。こやつを支えているのは家族で過ごした時間……。子供の頃のいちばん幸せだった記憶(おもいで)なのだな……なかなか苦労しておる。もう限界みたいだがな』
「どうされますか? ダナ様」
『この記憶(おもいで)を貰うわけにはいかないな。その代わり……』
ーー……様、お客様。
「お客様、お目覚めですか」
「あ、あれ……俺どうしたんだっけ?」
ぼうっとした頭で黒瀬は体を起こした。
「お疲れだったようで、珈琲を飲んだあと眠られてしまって」
「え!? す、すみません、ご迷惑を掛けしてしまって!」
「いえいえ、こちらは大丈夫です。ご覧の通りお客様以外に誰もおりませんので」
「本当すみません! えっと……珈琲いくらですか?」
「先に頂きましたので大丈夫ですよ」
「え?」
深々と見送られ黒瀬は店を後にした。 後ろ髪を引かれながら、なんかおかしいな……? と頭を傾げるが、それがなんなのか思い出せない。ただ、ずっと重かった頭と体がなんとなく軽くなった気が……する。
「寝落ちなんてクソ恥ずかしい。 まあ久しぶりに父さんの夢も見れたしーー大学に行かせてやれなかったって最後まで気にしてたっけ。大学か……今からでも頑張ってみるのもいいかも!」
スッキリとした面持ちで黒瀬は清々しい空の下に戻って行くーー新しいステージのために。
(あれ、ところで俺、なんで、あんなところに……いたんだ?)
『あの者に“負”の記憶は必要ないだろう。今の職場も早々に辞めることになる。もう一度、人生をやり直すために……』
【では、あの者のここ数年の“負”の記憶(おもいで)を頂くということで、よろしいですね】
『ああ……』
ぴちょん……ーーどこかで水の滴り落ちる音が聞こえた。
「……今回も違いましたね」
『そうだな』
「訪れますかね」
『気長に待つとするさ……』
「長いこと待ってますけどね」
『まあ時間だけは無駄にあるからな』
黒猫のダナと女店主アリス……一匹とひとりの声色が切なくて哀しげに聞こえたのは気のせいだろうか……。
黒猫に魅入られ『喫茶 黒猫』に訪れた“客”はーー大切な記憶(思い出)を支払わなければならない。
それが幸となるか……不幸となるか……。
それは黒猫の気分しだいーーー
三角屋根と赤煉瓦の建物が目を引く『喫茶 黒猫』は、小さな町のどこかで“客”の訪れを待っている。
気まぐれに艶やかなしっぽを揺らしながら……黒猫は今日も街に現れる。
次の“客”を物色するためにーーー
1
あなたにおすすめの小説
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる