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1章 導入
4話 巫女との邂逅
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「あった・・・!」
手に取ると、いつもの形。
指紋認証で開いたホーム画面も、紛れもない私のスマホのものだった。
安心して、ほっと胸を撫で下ろす。また画面をロックし直してから、手に持ったまま立ち上がった。
その瞬間、酷い目眩が襲って、ふわりとした浮遊感と共に力が抜けて。
頭と背中に小さな衝撃を感じた時に、初めて立ち眩みをしてしまったのだと気づいた。
「Warina de-ra?」
聞こえた声はぼやけていて、キニータ族の人だろうと言う事しか分からなくて。
「あ、すいません・・・」
じわじわと血の気が戻ってくる頭に喝を入れて、無理やり姿勢を戻そうとした。
けど、そこでやっとその人の腕が私のお腹に回されていることに気づく。
「あの・・・」
「Tana Yu-ma. Kini Rua-a Warina denai.」
元気を取り戻してきた耳が、拾った声は聞いた事があるものだった。
「Sia Tana Yu-reba Warina-a luan-dera?」
低くて澄んだ、優しい声。
あの、シャーマンの人の声だ。
「あ、もう、大丈夫、ですよ・・・?」
背中を包む温もりが、何故かこそばゆくて。
でも、身を任せてはいけないと、本能的に思った。
「Sia-te mo Ni-a Muru Tani-de. Tani Rua-o Tani Yuma-a shi-Tana-a Kini Rua-a shi Ni-o, Wa-a Yana Yuman.」
どうしようかと悩んでいた所に、柔らかいものが首筋に触れた。
それが唇だと、分かった瞬間に、シャーマンの腕を振りほどいていた。
振り返ると、立っていたのは、私と同じくらいの背の女性。
目尻と唇だけが紅く、腰までの長髪は闇のような黒だった。
肌は暗がりに浮き上がる白さで、鋭い美人と言う感じの、人だった。
「Ni-ri Nia-a na-wali-dera?」
顔を出しちゃいけないんだと思っていた。
そんな人が、今目の前にいる。
「Ko-te-o kiran-ma.」
服は、他のキニータ族と同じ前開きだけど、袖が振袖のように大きく、真っ白い布には赤い糸で模様が縫い込まれていて・・・。
「えっ」
突然腕を引っ張られて、体が倒れ込むようにぶつかる。
ぶつかったのはもちろん、シャーマンの胸元だった。
「Ko Azuu Run Sie-to, Nia-a Ni-o Nia Luan-a shi. Wa-a sore-o Yana Yuman-nai.」
温もりに飲み込まれるように抱きしめられて、体の輪郭が溶けてしまいそう。
それが怖いと、思ってしまう。
「止、めてください・・・」
「Raama Rakia-a shi, Sia-te Yuma Ura-a shi. Sore-a Ni-ri Noa-ri-a naru-Warina.」
頭の中に響いているような、不思議な声色。
身を預けてしまいそうになる、優しい怖さ。
怖い。やっぱり怖い。
「離して・・・!」
強めに押しのけると、ちゃんと離してくれた。あっさり過ぎるくらいあっさりと。
向き合うと、今度は彼女の視線が突き刺さる。
「何故拒否してるのか」と、責められてるようにも感じる視線で、見透かされているようにも感じる視線で。
縋りたいのに怖いなんて、初めての感情だった。
「Nia Yuman-dera?」
真っ赤な唇が紡ぐ声が、何を問いかけてきているのかが何となく分かって。
小さく、頷いた。
それを見てシャーマンは優しく笑った。
「Yan-rati. Demo Tani Warina Ni-a Wa Laka-o kiran. Ni-a Wa-o Raama Noa-de Warina.」
この時になってやっと、心臓が太鼓のように煩くなっている事に気づいた。
半ば逃げるように宿に戻ってくると、待ち受けてたのは荷物だけだった。
美子は、彼氏のところかな?
男性の方の宿にお邪魔しているのか、それとも村を見て回っているのか。
どちらにしても、いないでいてくれて逆に助かった。
ちょっと1人になりたい気分だったから。
コの字型の建物内は、入口から入ってすぐに寝ている姿が見えないようにとの配慮からのようで、着替えも安心してできる。
なので、とりあえず危険なホットパンツを履き替えることにした。
もう1枚のショートパンツであればポケットも多いし大きい。
これくらいの暑さならこっちでも問題ないだろうと、リュックから取り出して、穿いていたものを脱いで・・・。
膝まで下げたところで、嫌な予感がして下着も少し下ろした。
そこには案の定というか、あまり見たくない光景があって。
顔を顰めつつ、カバンの中から取り出した新しいオリモノシートと、あまり見たくない状態のやつを交換した。
くるくる丸めて握り込んだ状態で下着を上げ、ショートパンツに穿き替える。
手の中のこいつは、ひとまずカバンの奥底に封印するしかないかな?
物凄く、嫌だけど。
手に取ると、いつもの形。
指紋認証で開いたホーム画面も、紛れもない私のスマホのものだった。
安心して、ほっと胸を撫で下ろす。また画面をロックし直してから、手に持ったまま立ち上がった。
その瞬間、酷い目眩が襲って、ふわりとした浮遊感と共に力が抜けて。
頭と背中に小さな衝撃を感じた時に、初めて立ち眩みをしてしまったのだと気づいた。
「Warina de-ra?」
聞こえた声はぼやけていて、キニータ族の人だろうと言う事しか分からなくて。
「あ、すいません・・・」
じわじわと血の気が戻ってくる頭に喝を入れて、無理やり姿勢を戻そうとした。
けど、そこでやっとその人の腕が私のお腹に回されていることに気づく。
「あの・・・」
「Tana Yu-ma. Kini Rua-a Warina denai.」
元気を取り戻してきた耳が、拾った声は聞いた事があるものだった。
「Sia Tana Yu-reba Warina-a luan-dera?」
低くて澄んだ、優しい声。
あの、シャーマンの人の声だ。
「あ、もう、大丈夫、ですよ・・・?」
背中を包む温もりが、何故かこそばゆくて。
でも、身を任せてはいけないと、本能的に思った。
「Sia-te mo Ni-a Muru Tani-de. Tani Rua-o Tani Yuma-a shi-Tana-a Kini Rua-a shi Ni-o, Wa-a Yana Yuman.」
どうしようかと悩んでいた所に、柔らかいものが首筋に触れた。
それが唇だと、分かった瞬間に、シャーマンの腕を振りほどいていた。
振り返ると、立っていたのは、私と同じくらいの背の女性。
目尻と唇だけが紅く、腰までの長髪は闇のような黒だった。
肌は暗がりに浮き上がる白さで、鋭い美人と言う感じの、人だった。
「Ni-ri Nia-a na-wali-dera?」
顔を出しちゃいけないんだと思っていた。
そんな人が、今目の前にいる。
「Ko-te-o kiran-ma.」
服は、他のキニータ族と同じ前開きだけど、袖が振袖のように大きく、真っ白い布には赤い糸で模様が縫い込まれていて・・・。
「えっ」
突然腕を引っ張られて、体が倒れ込むようにぶつかる。
ぶつかったのはもちろん、シャーマンの胸元だった。
「Ko Azuu Run Sie-to, Nia-a Ni-o Nia Luan-a shi. Wa-a sore-o Yana Yuman-nai.」
温もりに飲み込まれるように抱きしめられて、体の輪郭が溶けてしまいそう。
それが怖いと、思ってしまう。
「止、めてください・・・」
「Raama Rakia-a shi, Sia-te Yuma Ura-a shi. Sore-a Ni-ri Noa-ri-a naru-Warina.」
頭の中に響いているような、不思議な声色。
身を預けてしまいそうになる、優しい怖さ。
怖い。やっぱり怖い。
「離して・・・!」
強めに押しのけると、ちゃんと離してくれた。あっさり過ぎるくらいあっさりと。
向き合うと、今度は彼女の視線が突き刺さる。
「何故拒否してるのか」と、責められてるようにも感じる視線で、見透かされているようにも感じる視線で。
縋りたいのに怖いなんて、初めての感情だった。
「Nia Yuman-dera?」
真っ赤な唇が紡ぐ声が、何を問いかけてきているのかが何となく分かって。
小さく、頷いた。
それを見てシャーマンは優しく笑った。
「Yan-rati. Demo Tani Warina Ni-a Wa Laka-o kiran. Ni-a Wa-o Raama Noa-de Warina.」
この時になってやっと、心臓が太鼓のように煩くなっている事に気づいた。
半ば逃げるように宿に戻ってくると、待ち受けてたのは荷物だけだった。
美子は、彼氏のところかな?
男性の方の宿にお邪魔しているのか、それとも村を見て回っているのか。
どちらにしても、いないでいてくれて逆に助かった。
ちょっと1人になりたい気分だったから。
コの字型の建物内は、入口から入ってすぐに寝ている姿が見えないようにとの配慮からのようで、着替えも安心してできる。
なので、とりあえず危険なホットパンツを履き替えることにした。
もう1枚のショートパンツであればポケットも多いし大きい。
これくらいの暑さならこっちでも問題ないだろうと、リュックから取り出して、穿いていたものを脱いで・・・。
膝まで下げたところで、嫌な予感がして下着も少し下ろした。
そこには案の定というか、あまり見たくない光景があって。
顔を顰めつつ、カバンの中から取り出した新しいオリモノシートと、あまり見たくない状態のやつを交換した。
くるくる丸めて握り込んだ状態で下着を上げ、ショートパンツに穿き替える。
手の中のこいつは、ひとまずカバンの奥底に封印するしかないかな?
物凄く、嫌だけど。
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