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2章 不思議な男の子
13話 延泊中の宿泊場所
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その音が聞こえてきたのは、美子にメールの返事を送った直後だった。
聞いた事ある、楽器の音だった。
音がするのは隣の部屋で、隣の部屋はあの儀式をした部屋だとすぐに気づいた。
続いて、この音が儀式中に聞こえてきた笛の音だという事にも気づく。
扉なんて無い建物なのに、ある程度防音には考慮されているらしく、あの大きな笛の音も太鼓の音も、ここからは少ししか聞こえない。
どんなに聞き耳を立てたとしても、会話が聞こえる事はないだろう。
プライバシーが守られているのは驚きだ。そこまで配慮されているからこそ人気のツアーになったのかもしれないなぁ。
そう、あの儀式・・・物凄く興味深かった。
他の地域で見られるような、幻覚作用のある何かしらは使われていないようだったし、痛みや冷たさなどの刺激も使っていなかった。
代わりに使われていたのは、シャーマンの姿を隠す大きな布と、不思議な壺。
香と楽器は他でも見られるけど、あの二つはあまり見ないものだった。
特に布。シャーマンの姿を隠すのはたまにあるけど、あんな風に、影だけが映る鏡のように使われているのは見たことがない。
恐らくあれで対象者に自己投影をさせるんだろう。シャーマンを自分の影のように思いこませ、心の奥に入り込むのだ。
壺を割るのは、似たような儀式は見たことあるけどあれほど効果的に使用されているのはやはり始めて見た。
暗示から目覚める合図のように突然大きな音を響かせる。しかも破壊音だから衝撃はひとしおだ。
冷静に分析すれば、そんなに大したことじゃないように感じるけど、あの異質な雰囲気の部屋の中ではきっと冷静な思考は保てない。
シャーマンが姿を現さないのだって、その雰囲気を守る為なのだろう。
・・・あれ?でも、私、会ったよ・・・?
暗い部屋の中だけど、至近距離で触れた温もりが確かにまだ肌に残っている。
夢じゃ、なかった。
私は確かに彼女に会ったのだ。
シャーマンの姿を思い出そうとしたところで、壺が割れる音が聞こえてきた。
あの大きな音は、さすがにここにいてもはっきり分かる。
きっと今頃今日のツアー客が音に驚いた衝撃と共に新しい自分を見つけた事だろう。
少しだけ、ほんの少しだけ羨ましい。
なんていうのが贅沢な感情だって、分かってはいるんだけどね。
今日の儀式が終わったであろう後、特にする事もないまま待つこと30分ほど。
窓から外を眺めていた背中に、突然声がかかった。
「Warina Sia-ni shi-ta-rati-ra?」
その声で、すぐに彼女だと分かった。
バッと振り返ると、やはり彼女だった。
「え、っと・・・お邪魔してます・・・?」
彼女、シャーマンは、昨日暗がりで見たのと同じように、目元と唇を赤く染めて、白い振袖のような服を着ていた。
でも、明るい室内ではちゃんと人間らしさがあって、不思議な感じがした。
微笑みを浮かべる彼女は、机の上をスッと指さした。
その指の先には私のスマホが置いてある。
「Sor-o Tani Luan-a shi-rati-ma.」
「・・・あ、あのアプリ?」
そういえば翻訳アプリがあるんだったと、慌ててスマホを手に取る。
アプリを起動して彼女の方に向けると、コクリと頷いてからこう言った。
「Koco-a Wa-ri Yuma Laka-de Warina. Ni-a kon Tani Lun-ni Tana Wali-a shi-no Yuma Wali-mo, Koco-a Ni-ri Yuma Laka-de Warina.」
スマホの画面を見てから、シャーマンの発言に驚く。
だって、「これは私の部屋。貴女が村にいる時間は、ここは貴女の部屋でもある」と、表示されていたから。
つまり、私はシャーマンの部屋に間借りすることになるらしい。
女性ではあるけど、恐らくキニータ族でも一番尊い立場にいるであろう彼女の部屋に、私は泊まる事になるらしい。
ベッドが、一つしかないこの部屋に。
「え、でも・・・」
本心を言えばとても嬉しい。
正体不明の方を間近で観察できるって、貴重も貴重だし、お金を払ったからと言って許可されるような事じゃない。
写真は駄目だろうけど、スケッチくらいなら許されるかもしれない。仲良くなれば。
でも、そんな風にうまい話には裏があると、知っているのだ。
だから揺れた。心がグワングワン揺れた。
多分百面相でもしてたんだろうね。私を見て、シャーマンは笑っていたから。
「Warina Tani, Noa Tani-o Wa-a Tani Uke-a shi-rati-yo. Ni-a Tani Noa-a shi-Lun Laka-de ne.」
笑いながらの言葉でもある程度は翻訳してくれたアプリ曰く、支払いはさせてもらえるらしい。それなら一安心だ。タダより怖いものはないからね。
「Noari Tani.」
お礼を伝えようとしたけど、それより先にシャーマンがまた口を開く。
彼女は、スマホを向けると意味深な笑みを浮かべた。
「Ni-ri Nia-o Ura Shi-ni-a, koco Yuma Laka-denai-to Warina Nai-de Warina.」
この言葉は難しかったのか、前半部分は翻訳できていなかった。でも後半の文面から、この部屋で何かを行うのだという事だけは分かった。
聞いた事ある、楽器の音だった。
音がするのは隣の部屋で、隣の部屋はあの儀式をした部屋だとすぐに気づいた。
続いて、この音が儀式中に聞こえてきた笛の音だという事にも気づく。
扉なんて無い建物なのに、ある程度防音には考慮されているらしく、あの大きな笛の音も太鼓の音も、ここからは少ししか聞こえない。
どんなに聞き耳を立てたとしても、会話が聞こえる事はないだろう。
プライバシーが守られているのは驚きだ。そこまで配慮されているからこそ人気のツアーになったのかもしれないなぁ。
そう、あの儀式・・・物凄く興味深かった。
他の地域で見られるような、幻覚作用のある何かしらは使われていないようだったし、痛みや冷たさなどの刺激も使っていなかった。
代わりに使われていたのは、シャーマンの姿を隠す大きな布と、不思議な壺。
香と楽器は他でも見られるけど、あの二つはあまり見ないものだった。
特に布。シャーマンの姿を隠すのはたまにあるけど、あんな風に、影だけが映る鏡のように使われているのは見たことがない。
恐らくあれで対象者に自己投影をさせるんだろう。シャーマンを自分の影のように思いこませ、心の奥に入り込むのだ。
壺を割るのは、似たような儀式は見たことあるけどあれほど効果的に使用されているのはやはり始めて見た。
暗示から目覚める合図のように突然大きな音を響かせる。しかも破壊音だから衝撃はひとしおだ。
冷静に分析すれば、そんなに大したことじゃないように感じるけど、あの異質な雰囲気の部屋の中ではきっと冷静な思考は保てない。
シャーマンが姿を現さないのだって、その雰囲気を守る為なのだろう。
・・・あれ?でも、私、会ったよ・・・?
暗い部屋の中だけど、至近距離で触れた温もりが確かにまだ肌に残っている。
夢じゃ、なかった。
私は確かに彼女に会ったのだ。
シャーマンの姿を思い出そうとしたところで、壺が割れる音が聞こえてきた。
あの大きな音は、さすがにここにいてもはっきり分かる。
きっと今頃今日のツアー客が音に驚いた衝撃と共に新しい自分を見つけた事だろう。
少しだけ、ほんの少しだけ羨ましい。
なんていうのが贅沢な感情だって、分かってはいるんだけどね。
今日の儀式が終わったであろう後、特にする事もないまま待つこと30分ほど。
窓から外を眺めていた背中に、突然声がかかった。
「Warina Sia-ni shi-ta-rati-ra?」
その声で、すぐに彼女だと分かった。
バッと振り返ると、やはり彼女だった。
「え、っと・・・お邪魔してます・・・?」
彼女、シャーマンは、昨日暗がりで見たのと同じように、目元と唇を赤く染めて、白い振袖のような服を着ていた。
でも、明るい室内ではちゃんと人間らしさがあって、不思議な感じがした。
微笑みを浮かべる彼女は、机の上をスッと指さした。
その指の先には私のスマホが置いてある。
「Sor-o Tani Luan-a shi-rati-ma.」
「・・・あ、あのアプリ?」
そういえば翻訳アプリがあるんだったと、慌ててスマホを手に取る。
アプリを起動して彼女の方に向けると、コクリと頷いてからこう言った。
「Koco-a Wa-ri Yuma Laka-de Warina. Ni-a kon Tani Lun-ni Tana Wali-a shi-no Yuma Wali-mo, Koco-a Ni-ri Yuma Laka-de Warina.」
スマホの画面を見てから、シャーマンの発言に驚く。
だって、「これは私の部屋。貴女が村にいる時間は、ここは貴女の部屋でもある」と、表示されていたから。
つまり、私はシャーマンの部屋に間借りすることになるらしい。
女性ではあるけど、恐らくキニータ族でも一番尊い立場にいるであろう彼女の部屋に、私は泊まる事になるらしい。
ベッドが、一つしかないこの部屋に。
「え、でも・・・」
本心を言えばとても嬉しい。
正体不明の方を間近で観察できるって、貴重も貴重だし、お金を払ったからと言って許可されるような事じゃない。
写真は駄目だろうけど、スケッチくらいなら許されるかもしれない。仲良くなれば。
でも、そんな風にうまい話には裏があると、知っているのだ。
だから揺れた。心がグワングワン揺れた。
多分百面相でもしてたんだろうね。私を見て、シャーマンは笑っていたから。
「Warina Tani, Noa Tani-o Wa-a Tani Uke-a shi-rati-yo. Ni-a Tani Noa-a shi-Lun Laka-de ne.」
笑いながらの言葉でもある程度は翻訳してくれたアプリ曰く、支払いはさせてもらえるらしい。それなら一安心だ。タダより怖いものはないからね。
「Noari Tani.」
お礼を伝えようとしたけど、それより先にシャーマンがまた口を開く。
彼女は、スマホを向けると意味深な笑みを浮かべた。
「Ni-ri Nia-o Ura Shi-ni-a, koco Yuma Laka-denai-to Warina Nai-de Warina.」
この言葉は難しかったのか、前半部分は翻訳できていなかった。でも後半の文面から、この部屋で何かを行うのだという事だけは分かった。
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