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5章 アズー君
29話 Muru Yuma Rakia.
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「リナ」
優しい声と、頭を撫でる感触。
ゆっくりと目を開けてそこにいたのは、愛おし気な微笑みを浮かべるアズー君だった。
「おはよう」
意味が伝わったようで、頷いて答えてくれるアズー君。
でも昨夜のようにキスはしてくれなかった。
体を起こして、スマホを手渡してくれて。そのままベッドから下りて行ってしまった。
渡されたのは私のスマホ。なぜか画面のロックは外れていて、なぜかメールの受信ボックスが開いていた。
いくつかの未読メールのうち、一番上にあったのは「滞在予定の確認」というシンプルなタイトルで、でも差出人は・・・。
慌ててそのメールを開いた。無精な教授からのメールだから恐らく重要事項だと判断して。
いつも通り教授の人間性あふれるメールは中身もシンプルで端的で、そしてとてもとても重要な内容で。
「やばっ・・・」
思わず口から洩れる程度にはやばかった。
内容としては教授からお借りしていた資料の返却を求めるものだったけど、あれは確か部屋の引き出し辺りにしまいっぱなしになっていたやつだし、部屋の鍵は誰かさんのせいで変えたばっかりでスペアも全部私のカバンの中に納まっているし。
1週間後の学会に持って行きたいとの事だから、急いで帰らないといけないけれど、飛行機が遅れてしまう可能性も考えると明日にはこの村を出た方が良いという事になる。
明日の朝出て、明日の夕方の飛行機に乗って、明後日別の飛行機に乗り換えて・・・。4日後には返しに行けるかも?
え、って事は、今日中にお土産見繕っておかないと駄目って事・・・?
「Na-o Wali Ra?」
あ、違う。
まずはアズー君に伝えないと。
「帰らないと」って、伝えないと・・・。
体を起こすと、いつの間にかムワキの服を纏った彼がこちらを見ていた。
外はまだ暗い。けど、もうムワキの仕事があるのだろう。
今からあの化粧をして、私の知らない儀式をしに行くのだろう。
「リナ?」
「あ、の・・・」
日本に帰って、用事を片付けて。
そしたらまたここに来れる?
アズー君の隣に、この心地よい場所に。
戻って、来れるのだろうか?
「アズー、君・・・」
アズー君は許してくれるのだろうか?
それとも・・・。
「帰らないと、いけなくなっちゃったの」
困惑する表情は私に釣られただけなのか、それとも彼も嫌だと思ってくれたのか。
分からなかった。分からなかったの。
だって彼が、すぐにムワキの仮面をつけてしまったから。
帰り支度はすぐに終わって、その後はお土産選び。
アズー君がお願いしてくれたのか、シアちゃんが部屋まで来てくれて、案内してくれた。
最初に向かったのは窯の方、そこでお皿を2つ選んだ。
最初、杯を選ぼうと思ったら頑なに「Nia Wali-de Warina.(駄目です)」って言われちゃって、代わりに選んだ大皿を葉っぱでくるんでもらう事になった。
使いやすい大きさの、鏡みたいにピカピカのお皿だった。
次は「Wali Tani-o Yuma Tani-a shi-luan.(服を選びます)」との事で、移動する事になって。
移動中に気になる事を聞いてみた。
「ねぇ、シアちゃん」
「Na-o de Warina-ka?(何ですか?)」
「ムル・ユマ・ラキアってどう言う事?」
昨夜アズー君が何度も言っていた言葉。
でも発音が正しくないと翻訳アプリは意味を教えてくれなかったのだ。
シアちゃんは困ってた。足を止めてとても困っていて、なにか言おうと口を開いては閉じた。
そんな風にして2人で立ち尽くしていたら、近づいてくる人がいた。
「Na-o shi-luan-de?」
ムルさんだった。
どうやらこの先の裁縫の作業場からわざわざ来てくれたらしくて、作業場にいる女性達は遠巻きにこちらを見ていた。
「Azuu Yuma-a Luan Tana-no de Warina-node, Ni-ri Noa-no Sia Tani Noa-o Yan Tani-ta.(明日帰るから、彼女へ贈り物を探していました)」
「Luan Tana-ka? Azuu Sia Wali-a Yuma Tani-ta no-ka?(帰る?アズー様は知ってる?)」
「Wali.(はい)」
私が持つ葉っぱを見て、ムルさんは困った顔をして。それから「Tani Yuma Wali...(そうか)」と呟いた。
その姿を見て、彼女なら教えてくれるかもしれないと、思った。
「ムルさんムル・ユマ・ラキアってどう言う意味?」
「Sor... Kon Azuu Wali-ga Yuma Azuu Shi-ta no-ka?(それ。あの子が言った?)」
驚くムルさんに頷くと、彼女は役場の方へ目をやった。
ハァと息を吐いて、それからまたこちらを向く。
少し寂しそうな顔で。
「Azuu Nia Yuma Wali-o Yuma Azuu Shi-ta-ka?(他に何か言った?)」
「えと・・・ワ・リ・リナって」
「E Wali Ra!?」
驚きの声を上げたのはシアちゃんだった。
ムルさんは困ったように笑っていた。
「Sor-o Tani Shi-a shi-luan.(それ渡して)」
言われるがままにムルさんにスマホを渡すと、彼女は口元に寄せて「Muru Yuma Rakia.」と「Wa-ri リナ.」と言って。
それから返してくれた。
スマホの画面には、「愛してる」と「私のリナ」の文字があった。
「Yuma Lun-wa Yuma Noa Wali-ni Yuma Azuu Shi-luan Luan de ra-yo.(どちらも恋人に渡す言葉だ)」
ムルさんは、私をじっと見ていて私の反応を確認しているようだった。
だから彼女は、彼女もアズー君をちゃんと大切に思ってるって分かったの。
「アズー君は今どこにいますか?」
「Muwaqi-a Azuu Tana-de ra.(ムワキは向こうだよ)」
優しい声と、頭を撫でる感触。
ゆっくりと目を開けてそこにいたのは、愛おし気な微笑みを浮かべるアズー君だった。
「おはよう」
意味が伝わったようで、頷いて答えてくれるアズー君。
でも昨夜のようにキスはしてくれなかった。
体を起こして、スマホを手渡してくれて。そのままベッドから下りて行ってしまった。
渡されたのは私のスマホ。なぜか画面のロックは外れていて、なぜかメールの受信ボックスが開いていた。
いくつかの未読メールのうち、一番上にあったのは「滞在予定の確認」というシンプルなタイトルで、でも差出人は・・・。
慌ててそのメールを開いた。無精な教授からのメールだから恐らく重要事項だと判断して。
いつも通り教授の人間性あふれるメールは中身もシンプルで端的で、そしてとてもとても重要な内容で。
「やばっ・・・」
思わず口から洩れる程度にはやばかった。
内容としては教授からお借りしていた資料の返却を求めるものだったけど、あれは確か部屋の引き出し辺りにしまいっぱなしになっていたやつだし、部屋の鍵は誰かさんのせいで変えたばっかりでスペアも全部私のカバンの中に納まっているし。
1週間後の学会に持って行きたいとの事だから、急いで帰らないといけないけれど、飛行機が遅れてしまう可能性も考えると明日にはこの村を出た方が良いという事になる。
明日の朝出て、明日の夕方の飛行機に乗って、明後日別の飛行機に乗り換えて・・・。4日後には返しに行けるかも?
え、って事は、今日中にお土産見繕っておかないと駄目って事・・・?
「Na-o Wali Ra?」
あ、違う。
まずはアズー君に伝えないと。
「帰らないと」って、伝えないと・・・。
体を起こすと、いつの間にかムワキの服を纏った彼がこちらを見ていた。
外はまだ暗い。けど、もうムワキの仕事があるのだろう。
今からあの化粧をして、私の知らない儀式をしに行くのだろう。
「リナ?」
「あ、の・・・」
日本に帰って、用事を片付けて。
そしたらまたここに来れる?
アズー君の隣に、この心地よい場所に。
戻って、来れるのだろうか?
「アズー、君・・・」
アズー君は許してくれるのだろうか?
それとも・・・。
「帰らないと、いけなくなっちゃったの」
困惑する表情は私に釣られただけなのか、それとも彼も嫌だと思ってくれたのか。
分からなかった。分からなかったの。
だって彼が、すぐにムワキの仮面をつけてしまったから。
帰り支度はすぐに終わって、その後はお土産選び。
アズー君がお願いしてくれたのか、シアちゃんが部屋まで来てくれて、案内してくれた。
最初に向かったのは窯の方、そこでお皿を2つ選んだ。
最初、杯を選ぼうと思ったら頑なに「Nia Wali-de Warina.(駄目です)」って言われちゃって、代わりに選んだ大皿を葉っぱでくるんでもらう事になった。
使いやすい大きさの、鏡みたいにピカピカのお皿だった。
次は「Wali Tani-o Yuma Tani-a shi-luan.(服を選びます)」との事で、移動する事になって。
移動中に気になる事を聞いてみた。
「ねぇ、シアちゃん」
「Na-o de Warina-ka?(何ですか?)」
「ムル・ユマ・ラキアってどう言う事?」
昨夜アズー君が何度も言っていた言葉。
でも発音が正しくないと翻訳アプリは意味を教えてくれなかったのだ。
シアちゃんは困ってた。足を止めてとても困っていて、なにか言おうと口を開いては閉じた。
そんな風にして2人で立ち尽くしていたら、近づいてくる人がいた。
「Na-o shi-luan-de?」
ムルさんだった。
どうやらこの先の裁縫の作業場からわざわざ来てくれたらしくて、作業場にいる女性達は遠巻きにこちらを見ていた。
「Azuu Yuma-a Luan Tana-no de Warina-node, Ni-ri Noa-no Sia Tani Noa-o Yan Tani-ta.(明日帰るから、彼女へ贈り物を探していました)」
「Luan Tana-ka? Azuu Sia Wali-a Yuma Tani-ta no-ka?(帰る?アズー様は知ってる?)」
「Wali.(はい)」
私が持つ葉っぱを見て、ムルさんは困った顔をして。それから「Tani Yuma Wali...(そうか)」と呟いた。
その姿を見て、彼女なら教えてくれるかもしれないと、思った。
「ムルさんムル・ユマ・ラキアってどう言う意味?」
「Sor... Kon Azuu Wali-ga Yuma Azuu Shi-ta no-ka?(それ。あの子が言った?)」
驚くムルさんに頷くと、彼女は役場の方へ目をやった。
ハァと息を吐いて、それからまたこちらを向く。
少し寂しそうな顔で。
「Azuu Nia Yuma Wali-o Yuma Azuu Shi-ta-ka?(他に何か言った?)」
「えと・・・ワ・リ・リナって」
「E Wali Ra!?」
驚きの声を上げたのはシアちゃんだった。
ムルさんは困ったように笑っていた。
「Sor-o Tani Shi-a shi-luan.(それ渡して)」
言われるがままにムルさんにスマホを渡すと、彼女は口元に寄せて「Muru Yuma Rakia.」と「Wa-ri リナ.」と言って。
それから返してくれた。
スマホの画面には、「愛してる」と「私のリナ」の文字があった。
「Yuma Lun-wa Yuma Noa Wali-ni Yuma Azuu Shi-luan Luan de ra-yo.(どちらも恋人に渡す言葉だ)」
ムルさんは、私をじっと見ていて私の反応を確認しているようだった。
だから彼女は、彼女もアズー君をちゃんと大切に思ってるって分かったの。
「アズー君は今どこにいますか?」
「Muwaqi-a Azuu Tana-de ra.(ムワキは向こうだよ)」
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