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19 お詫び
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放課後にアイザックが私の教室に来た。
「今日から復帰したのね、よかった。一昨日はありがとう」
「リリーの作ったサンドウィッチもキッシュもめちゃくちゃ美味かった。次の日全部食べた」
彼は本当にあの日から改心したのか、素直にそうお礼を言ってくれている。周囲のみんなも「あれ? 二人が喧嘩しないなんて珍しい」という不思議な目でざわざわしている。
「それは良かったわ」
「美味かったし、何かお礼がしたいんだけど」
「あれは私があなたに助けてもらったお礼よ? お礼のお礼なんておかしいわ」
急に変なことを言うアイザックに、ついつい笑ってしまう。
「じゃあ! 今まで傷付けたお詫びをさせてくれ」
「そんなのいいわよ。私も酷いこと言ってたし」
「それじゃあ俺の気が済まない」
一体今日の彼は何なのだろうか? 明らかに様子がおかしい。
「来週末に出掛けようぜ。『オ・ソレイユ』のランチ奢るから」
「え! あの店の予約取れるの?」
「店に知り合いがいるから取れる」
ソレイユは王都で大人気のレストランだ。最近とても人気でなかなか予約が取れないお店。ああ、行きたい! すっかり忘れていたが、さすが侯爵家の令息だ。顔が広いわ。
「じゃあ、エミリーも一緒に行きましょうよ」
前にあのレストラン行きたいねって一緒に話していたもんね! 私はニコニコとそう提案した。
「いや……二人で……」
アイザックは青ざめ、困ったような顔をするので私は首を傾げる。あ、もしかして予約できるのが二人までなのだろうか? それならば仕方がない。また違う機会に行けばいいと……断ろうと思ったその時、エミリーが口を開いた。
「その店は今度、ハンス様がディナーに連れて行ってくださるの。初めては彼と行くって決めているから申し訳ないけど私は遠慮しておくわ」
「そうなの? 婚約者とデートなんて素敵ね」
「だから、二人で行ってきて。私が行く時の参考にするから何が美味しかったか教えてよ」
エミリーからそう言われると、断りにくくなってしまった。アイザックと二人で行くなんて……会話に困らないか心配になる。
彼女は「貸しね」とアイザックにニッコリ笑っていたが、私にはそれがどう言う意味かよくわからなかった。
「じゃあ、決まりな」
「わかったわ。あ! でも来週末はだめなの」
「何か用なのか?」
「ええ、お見合いするから」
アイザックは手に持っていた本をバサバサっと手から落とした。私は「もう、何してるのよ」と拾って渡してあげる。
「……見合い?」
彼は呆然とした表情でそう聞き返してくる。私がお見合いをするのがそんなにありえないことなのだろうか? あんなに驚くなんて私に失礼だ。
「新しい恋をしないとね」
私は自分でそう言ってちょっと恥ずしくなって、照れて頬を染める。
「誰だよ! 誰と会うんだ!」
アイザックが私の肩を揺らしながら、必死にそう聞いてくる。やっぱり今日の彼は変なことばかりしてくる。
「先方の都合もあるから誰かは言えないわよ。とりあえず一度お会いしてみるだけだから、すぐに婚約とかにはならないと思う」
「当たり前だ! 一回会っただけで何がわかるんだよ。すぐに婚約なんて絶対にしちゃだめだからな、絶対に!!」
どうやらアイザックは私の心配をしてくれているみたいだ。失恋したばかりだから婚約者選びに慎重になれってことかな?
「あら? 恋に会う回数なんて関係ないわよね。良い方なら一回でも縁は繋がるわ」
エミリーはケラケラと笑いながらそう言った。何故かアイザックは彼女をジロリと睨んでいる。
「気分転換も兼ねてお会いしてみるだけ。お父様が認めた方なら素敵な男性だと思うから。だから、ソレイユに行くのはまた今度にしましょう」
「ちょ……ちょっと待て! 急だけど今週末はどうだ?」
「空いてるけど?」
「じゃあ今週末に行こうぜ。親父さんには今夜にでも直接頼んで、でかける許可もらうから安心してくれ」
そう言った彼はとてもご機嫌で嬉しそうだ。私は別にいつでもいいのに。アイザックは早くあのレストランに行ってみたいようだ。
「リリー、沢山食べてきなさいよ。今回は立派なお財布付きなんだから遠慮はいらないわ」
「わかってる」
「おい! お前ら俺を財布って言うな」
そう言ってあはは……と三人で笑い合った。楽しいな。アイザックと仲直りしてからこういう気安いやりとりができるようになりとても嬉しく思っていた。
♢♢♢
今夜、お父様が帰ってくる時間に合わせてアイザックが家に来てくれるそうだ。お父様には職場にその旨を手紙で知らせ、わかったと返事が返ってきていた。
「今夜アイザック様が来られるのですか?」
アリスがそう尋ねてくる。
「そうなの。急に今週末にレストランにランチに行こうってなったからその許可取りなの」
「そうでしたか。お嬢様、最近アイザック様と良い関係ですね」
「元々は仲良かったから、今思うとなんであんなに喧嘩してたのかしらね」
「ええ……子どもの頃は本当にずっと一緒に過ごしていらっしゃいましたもんね」
そう、幼い頃のアイザックは本当に私にベッタリだった。リリー、リリー……とずっと私の後ろをついて来て本当に可愛かった。
「昔は天使みたいに可愛かったわよね?」
「ええ。今はご立派になられましたね」
「男の子ってあんなに変わるのね、驚きだわ」
「きっと……努力なさったんですよ」
「そうね」
時間が戻せるのであれば、幼い頃の泣き虫なアイザックに教えてあげたい。大丈夫、すぐ大きく立派な男性になるからと。
「今日から復帰したのね、よかった。一昨日はありがとう」
「リリーの作ったサンドウィッチもキッシュもめちゃくちゃ美味かった。次の日全部食べた」
彼は本当にあの日から改心したのか、素直にそうお礼を言ってくれている。周囲のみんなも「あれ? 二人が喧嘩しないなんて珍しい」という不思議な目でざわざわしている。
「それは良かったわ」
「美味かったし、何かお礼がしたいんだけど」
「あれは私があなたに助けてもらったお礼よ? お礼のお礼なんておかしいわ」
急に変なことを言うアイザックに、ついつい笑ってしまう。
「じゃあ! 今まで傷付けたお詫びをさせてくれ」
「そんなのいいわよ。私も酷いこと言ってたし」
「それじゃあ俺の気が済まない」
一体今日の彼は何なのだろうか? 明らかに様子がおかしい。
「来週末に出掛けようぜ。『オ・ソレイユ』のランチ奢るから」
「え! あの店の予約取れるの?」
「店に知り合いがいるから取れる」
ソレイユは王都で大人気のレストランだ。最近とても人気でなかなか予約が取れないお店。ああ、行きたい! すっかり忘れていたが、さすが侯爵家の令息だ。顔が広いわ。
「じゃあ、エミリーも一緒に行きましょうよ」
前にあのレストラン行きたいねって一緒に話していたもんね! 私はニコニコとそう提案した。
「いや……二人で……」
アイザックは青ざめ、困ったような顔をするので私は首を傾げる。あ、もしかして予約できるのが二人までなのだろうか? それならば仕方がない。また違う機会に行けばいいと……断ろうと思ったその時、エミリーが口を開いた。
「その店は今度、ハンス様がディナーに連れて行ってくださるの。初めては彼と行くって決めているから申し訳ないけど私は遠慮しておくわ」
「そうなの? 婚約者とデートなんて素敵ね」
「だから、二人で行ってきて。私が行く時の参考にするから何が美味しかったか教えてよ」
エミリーからそう言われると、断りにくくなってしまった。アイザックと二人で行くなんて……会話に困らないか心配になる。
彼女は「貸しね」とアイザックにニッコリ笑っていたが、私にはそれがどう言う意味かよくわからなかった。
「じゃあ、決まりな」
「わかったわ。あ! でも来週末はだめなの」
「何か用なのか?」
「ええ、お見合いするから」
アイザックは手に持っていた本をバサバサっと手から落とした。私は「もう、何してるのよ」と拾って渡してあげる。
「……見合い?」
彼は呆然とした表情でそう聞き返してくる。私がお見合いをするのがそんなにありえないことなのだろうか? あんなに驚くなんて私に失礼だ。
「新しい恋をしないとね」
私は自分でそう言ってちょっと恥ずしくなって、照れて頬を染める。
「誰だよ! 誰と会うんだ!」
アイザックが私の肩を揺らしながら、必死にそう聞いてくる。やっぱり今日の彼は変なことばかりしてくる。
「先方の都合もあるから誰かは言えないわよ。とりあえず一度お会いしてみるだけだから、すぐに婚約とかにはならないと思う」
「当たり前だ! 一回会っただけで何がわかるんだよ。すぐに婚約なんて絶対にしちゃだめだからな、絶対に!!」
どうやらアイザックは私の心配をしてくれているみたいだ。失恋したばかりだから婚約者選びに慎重になれってことかな?
「あら? 恋に会う回数なんて関係ないわよね。良い方なら一回でも縁は繋がるわ」
エミリーはケラケラと笑いながらそう言った。何故かアイザックは彼女をジロリと睨んでいる。
「気分転換も兼ねてお会いしてみるだけ。お父様が認めた方なら素敵な男性だと思うから。だから、ソレイユに行くのはまた今度にしましょう」
「ちょ……ちょっと待て! 急だけど今週末はどうだ?」
「空いてるけど?」
「じゃあ今週末に行こうぜ。親父さんには今夜にでも直接頼んで、でかける許可もらうから安心してくれ」
そう言った彼はとてもご機嫌で嬉しそうだ。私は別にいつでもいいのに。アイザックは早くあのレストランに行ってみたいようだ。
「リリー、沢山食べてきなさいよ。今回は立派なお財布付きなんだから遠慮はいらないわ」
「わかってる」
「おい! お前ら俺を財布って言うな」
そう言ってあはは……と三人で笑い合った。楽しいな。アイザックと仲直りしてからこういう気安いやりとりができるようになりとても嬉しく思っていた。
♢♢♢
今夜、お父様が帰ってくる時間に合わせてアイザックが家に来てくれるそうだ。お父様には職場にその旨を手紙で知らせ、わかったと返事が返ってきていた。
「今夜アイザック様が来られるのですか?」
アリスがそう尋ねてくる。
「そうなの。急に今週末にレストランにランチに行こうってなったからその許可取りなの」
「そうでしたか。お嬢様、最近アイザック様と良い関係ですね」
「元々は仲良かったから、今思うとなんであんなに喧嘩してたのかしらね」
「ええ……子どもの頃は本当にずっと一緒に過ごしていらっしゃいましたもんね」
そう、幼い頃のアイザックは本当に私にベッタリだった。リリー、リリー……とずっと私の後ろをついて来て本当に可愛かった。
「昔は天使みたいに可愛かったわよね?」
「ええ。今はご立派になられましたね」
「男の子ってあんなに変わるのね、驚きだわ」
「きっと……努力なさったんですよ」
「そうね」
時間が戻せるのであれば、幼い頃の泣き虫なアイザックに教えてあげたい。大丈夫、すぐ大きく立派な男性になるからと。
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