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本編
21 お祝いの代償①【エルベルト視点】
睡眠不足なはずなのに、心も身体もスッキリしていていい気分だ。やっぱり俺は彼女がいれば絶好調だ。
「おー、朝早くからご機嫌だね。良かったなぁ。ちゃんと嫁に相手してもらえて」
そんなことを言いながらジェフが、後ろから肩を組んで来た。
「……うるさい」
「ふぁ……俺は眠たいわ。チェルシーちゃんがなかなか寝かしてくれないもんだからさ」
大きなあくびをしながら、眠そうに目を擦っている。誰だよ、チェルシーちゃん。
「さて、俺の眠気を覚ましてくれる奴がいるかな?」
結局ジェフに鍛えまくられた団員達は、ボッコボコに倒されていた。
「ジェフリー様も……鬼だ……団長より……笑顔な分……余計に怖い……」
「あの二人揃うとやばい」
「死ぬ……」
エドも頑張ってはいたが、まだまだジェフに敵うレベルではない。
「はは、みんな前よりはましになったな! でもまだまだだ。頑張れよー!」
ジェフは暴れてスッキリしたのか、シャワーを浴びて「王都へ戻る」と言った。
「陛下によろしく伝えてくれ」
「ああ、また来る」
そして愛馬に乗って、あっという間に姿を消した。やはり……ジェフは嵐のような男だ。
♢♢♢
それから数日経過した頃、オリバーから手紙と二枚の請求書……そして分厚い本のようなものを渡された。
「なんだこれは」
「おそらく……ジェフリー様かと」
俺が請求書を見るとホテルの名前が書いてあった。ああ、そういえばあの日『お前の金で泊まるからな』と言っていたなと思い出した。それは全く問題はない。
しかし二枚目が問題だ。ホテル代の何倍もの金額の高級クラブの馬鹿高い請求書……そして『チェルシー』の名刺に口紅のついたものが挟まっていた。手書きの文字で『素敵な夜をありがとう。またいつでも呼んで』と書いてあった。
「あいつ……!」
誰だよ、と思っていたチェルシーちゃんは高級クラブの女ではないか。人の金で派手に遊びやがって。俺は苛々したまま手紙を開く。
エルへ
先日は世話になったな。
結婚祝いにお前が欲しいものをやろう。
俺の調査能力に感謝することだな。
彼女は俺が想像していたより、モテるらしい。
気を抜かず、充分気をつけろ。
ホテルとチェルシーちゃんの支払いよろしく。
この祝いに比べたら安いだろ?
ちなみに彼女は昔王都で上位貴族ばかり
相手にしていた売れっ子の情報通だ。
俺にベタ惚れだから、何か困ったことがあれば
相談したらいい。名刺入れとくから。
ジェフ
なるほどな。結局は遊んでいるようでも、何か聞きたいことがあって近付いたということか。
俺は本のように分厚い資料を開くと、クリスの情報がたくさん載っていた。身長や体重……出身校から好きな食べ物、なぜかスリーサイズまで。
スリーサイズなどどこで調べるのかと思うが、ジェフにとってはこんなこと朝飯前だ。きっと彼女が使っているドレスショップを調べて、計測サイズを盗み見たのだ。
さらにどこで手に入れたのか、彼女の幼少期の肖像画まで入っている。
か、可愛い! なんだこれは。この絵はおそらく五歳くらいだろうか? くりくりの髪にぱっちりした目で、フリフリのドレスを着てにこにこと笑っている。こんなの本物の天使ではないか。最高のプレゼントではないか!
それからも、恐らく彼女自身も知らないような情報まで全てその本に入っていた。そして最後に『彼女を好きだった男』のリストも入っていた。なかなかの人数だし、みんな若くて有望な男達ばかりなのが不愉快だ。俺は全員の名前をすぐに頭の中に入れる。
メモで『本人はモテなかったと思っているようだが、それは違う。兄が溺愛して男が寄り付かないように牽制していたから、みんな手を出せなかっただけのようだ。可愛いらしい容姿で、素直な性格で話しやすいと学校では人気があったらしい。お前との急な結婚で、ショックを受けた男が山程いたそうだ』
そう書いてあった。クリスの兄上に心から感謝した。あなたが守ってくださったおかげで、彼女は俺の元に来てくれた。
こんな結婚祝いを貰っては、文句は言えないではないか。むしろこんな物はあいつでないと調べられない。
「……どちらも俺の私費から払っておいてくれ」
「かしこまりました」
しかし、この彼女の本は誰にも見られないようにしないとな。俺は金庫の中にそれを隠した。
俺にとってはこの本こそ重要で大事だった。だから、渡された請求書なんて何も思っていなくて……机の上にそのまま放置してしまっていたのだ。
まさかそれを、クリスが見るとは思っていなかった。なんだかご機嫌斜めな彼女を、不思議に思いながらもディナーを終えた。今日は全然話してくれないのが哀しい。
色々と話しかけてみるが「はい」とか「そうですか」とか返事がかなり冷たい。俺は何かをしてしまったのだろうか?
「旦那様っ! 一体奥様に何をされたんですか?」
ノエルが俺に小声でそう聞いてくる。
「わからない。今朝までは……仲良くしていたはずなんだ」
俺は頭を抱えた。朝までは普段通り話してくれていたし、昼間は俺は仕事だった。なのに……夜に帰ってきたら怒っている……気がするのだ。だけど何も言ってくれない。
「理由を聞いてくださいませ。奥様は夕方からとても元気がなくなられたので心配です」
「わかった」
俺は覚悟を決めた。もうすれ違うのは嫌だ。俺の何に怒っているのかを聞こう。嫌なところがあるなら、全力で直すし……悪いことをしたのなら謝りたい。
彼女は夫婦の寝室にはいなかった。ああ……一緒に寝たくないんだなと哀しく思ったが、彼女の部屋の扉をノックした。
「入ってもいいか?」
「嫌です。少し一人にしてくださいませ」
「お願いだ。俺の何に怒っているか話して欲しい。嫌なところがあるなら言ってくれ。君が開けてくれないなら……俺は無理矢理ここを蹴破ることになるがいいか?」
脅すようで悪いが、どうしても開けて欲しかった。ガチャリと鍵が開く音がする。
俺が扉を開けると、勢いよくなにかを投げられた。俺は当たる前にそれをキャッチすると、いつも大事にしてくれているあのうさぎのぬいぐるみだった。
彼女はうっ、うっ……とベッドの上で泣いている。その姿にズキリと胸が痛む。本当に俺は何をしてしまったんだ。
「クリス……どうして泣いている? お願いだ、教えてくれ」
うさぎのぬいぐるみをベッドに置き、隣に座って彼女をそっと抱きしめた。すると彼女は俺の胸をドンと押し返した。俺は、彼女のあからさまな拒否に絶望する。
「触らないでくださいませ! 他の女を抱いた手で、私に触れて欲しくありません」
彼女はポロポロと涙をこぼしながら、怒りを露わにした。しかし……意味がわからない。他の女を抱いた? 一体何の話だ?
「おー、朝早くからご機嫌だね。良かったなぁ。ちゃんと嫁に相手してもらえて」
そんなことを言いながらジェフが、後ろから肩を組んで来た。
「……うるさい」
「ふぁ……俺は眠たいわ。チェルシーちゃんがなかなか寝かしてくれないもんだからさ」
大きなあくびをしながら、眠そうに目を擦っている。誰だよ、チェルシーちゃん。
「さて、俺の眠気を覚ましてくれる奴がいるかな?」
結局ジェフに鍛えまくられた団員達は、ボッコボコに倒されていた。
「ジェフリー様も……鬼だ……団長より……笑顔な分……余計に怖い……」
「あの二人揃うとやばい」
「死ぬ……」
エドも頑張ってはいたが、まだまだジェフに敵うレベルではない。
「はは、みんな前よりはましになったな! でもまだまだだ。頑張れよー!」
ジェフは暴れてスッキリしたのか、シャワーを浴びて「王都へ戻る」と言った。
「陛下によろしく伝えてくれ」
「ああ、また来る」
そして愛馬に乗って、あっという間に姿を消した。やはり……ジェフは嵐のような男だ。
♢♢♢
それから数日経過した頃、オリバーから手紙と二枚の請求書……そして分厚い本のようなものを渡された。
「なんだこれは」
「おそらく……ジェフリー様かと」
俺が請求書を見るとホテルの名前が書いてあった。ああ、そういえばあの日『お前の金で泊まるからな』と言っていたなと思い出した。それは全く問題はない。
しかし二枚目が問題だ。ホテル代の何倍もの金額の高級クラブの馬鹿高い請求書……そして『チェルシー』の名刺に口紅のついたものが挟まっていた。手書きの文字で『素敵な夜をありがとう。またいつでも呼んで』と書いてあった。
「あいつ……!」
誰だよ、と思っていたチェルシーちゃんは高級クラブの女ではないか。人の金で派手に遊びやがって。俺は苛々したまま手紙を開く。
エルへ
先日は世話になったな。
結婚祝いにお前が欲しいものをやろう。
俺の調査能力に感謝することだな。
彼女は俺が想像していたより、モテるらしい。
気を抜かず、充分気をつけろ。
ホテルとチェルシーちゃんの支払いよろしく。
この祝いに比べたら安いだろ?
ちなみに彼女は昔王都で上位貴族ばかり
相手にしていた売れっ子の情報通だ。
俺にベタ惚れだから、何か困ったことがあれば
相談したらいい。名刺入れとくから。
ジェフ
なるほどな。結局は遊んでいるようでも、何か聞きたいことがあって近付いたということか。
俺は本のように分厚い資料を開くと、クリスの情報がたくさん載っていた。身長や体重……出身校から好きな食べ物、なぜかスリーサイズまで。
スリーサイズなどどこで調べるのかと思うが、ジェフにとってはこんなこと朝飯前だ。きっと彼女が使っているドレスショップを調べて、計測サイズを盗み見たのだ。
さらにどこで手に入れたのか、彼女の幼少期の肖像画まで入っている。
か、可愛い! なんだこれは。この絵はおそらく五歳くらいだろうか? くりくりの髪にぱっちりした目で、フリフリのドレスを着てにこにこと笑っている。こんなの本物の天使ではないか。最高のプレゼントではないか!
それからも、恐らく彼女自身も知らないような情報まで全てその本に入っていた。そして最後に『彼女を好きだった男』のリストも入っていた。なかなかの人数だし、みんな若くて有望な男達ばかりなのが不愉快だ。俺は全員の名前をすぐに頭の中に入れる。
メモで『本人はモテなかったと思っているようだが、それは違う。兄が溺愛して男が寄り付かないように牽制していたから、みんな手を出せなかっただけのようだ。可愛いらしい容姿で、素直な性格で話しやすいと学校では人気があったらしい。お前との急な結婚で、ショックを受けた男が山程いたそうだ』
そう書いてあった。クリスの兄上に心から感謝した。あなたが守ってくださったおかげで、彼女は俺の元に来てくれた。
こんな結婚祝いを貰っては、文句は言えないではないか。むしろこんな物はあいつでないと調べられない。
「……どちらも俺の私費から払っておいてくれ」
「かしこまりました」
しかし、この彼女の本は誰にも見られないようにしないとな。俺は金庫の中にそれを隠した。
俺にとってはこの本こそ重要で大事だった。だから、渡された請求書なんて何も思っていなくて……机の上にそのまま放置してしまっていたのだ。
まさかそれを、クリスが見るとは思っていなかった。なんだかご機嫌斜めな彼女を、不思議に思いながらもディナーを終えた。今日は全然話してくれないのが哀しい。
色々と話しかけてみるが「はい」とか「そうですか」とか返事がかなり冷たい。俺は何かをしてしまったのだろうか?
「旦那様っ! 一体奥様に何をされたんですか?」
ノエルが俺に小声でそう聞いてくる。
「わからない。今朝までは……仲良くしていたはずなんだ」
俺は頭を抱えた。朝までは普段通り話してくれていたし、昼間は俺は仕事だった。なのに……夜に帰ってきたら怒っている……気がするのだ。だけど何も言ってくれない。
「理由を聞いてくださいませ。奥様は夕方からとても元気がなくなられたので心配です」
「わかった」
俺は覚悟を決めた。もうすれ違うのは嫌だ。俺の何に怒っているのかを聞こう。嫌なところがあるなら、全力で直すし……悪いことをしたのなら謝りたい。
彼女は夫婦の寝室にはいなかった。ああ……一緒に寝たくないんだなと哀しく思ったが、彼女の部屋の扉をノックした。
「入ってもいいか?」
「嫌です。少し一人にしてくださいませ」
「お願いだ。俺の何に怒っているか話して欲しい。嫌なところがあるなら言ってくれ。君が開けてくれないなら……俺は無理矢理ここを蹴破ることになるがいいか?」
脅すようで悪いが、どうしても開けて欲しかった。ガチャリと鍵が開く音がする。
俺が扉を開けると、勢いよくなにかを投げられた。俺は当たる前にそれをキャッチすると、いつも大事にしてくれているあのうさぎのぬいぐるみだった。
彼女はうっ、うっ……とベッドの上で泣いている。その姿にズキリと胸が痛む。本当に俺は何をしてしまったんだ。
「クリス……どうして泣いている? お願いだ、教えてくれ」
うさぎのぬいぐるみをベッドに置き、隣に座って彼女をそっと抱きしめた。すると彼女は俺の胸をドンと押し返した。俺は、彼女のあからさまな拒否に絶望する。
「触らないでくださいませ! 他の女を抱いた手で、私に触れて欲しくありません」
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