【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します

大森 樹

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29 結婚式

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「ご結婚おめでとうございます!!」

 私達は今日、無事に結婚式を終え正式な夫婦になった。ケヴィン様や他の騎士団員達もみんなお祝いのパーティーに駆けつけてくれた。

「アンナちゃんとっても綺麗!」
「ジルヴェスター団長はいつも以上に格好良いです!!」
「とっても素敵な結婚式でした」

 口々にそんな声が聞こえてきた。みんなジルヴェスターのことを怖がりながらも、慕ってくれているのがわかる。

「私も行く回数は減るけれど、またお邪魔するのでよろしくお願いしますね」

「はい!お待ちしています」

 騎士団員達から事務員を『辞めないで』と懇願され、私は週に何度か仕事を手伝いに行くことになった。ジルヴェスターと喧嘩して、私が行かなくなってからというもの……事務処理が追いつかなくて書類の山になっていたらしい(ジルヴェスターいわく、私のことを考えていて仕事が捗らなかったそうだ)

「正直に言えば、私はアンナに騎士団には来て欲しくないのだがね」

「ええっ!?そうなの!」

 ジルヴェスターのその発言に驚いた。私がいた方が仕事が早くなると褒めてくれていたのに。ちょっとショック。

「ああ、私は君を独り占めしたいからな。アンナが来てくれたら仕事の効率が上がることはわかっている。だけど、こいつらに可愛いアンナを会わせたくない」

「な、な、何言ってるのよ」

「本当の気持ちだ。本当はバルト家に閉じ込めておきたいくらいだ。だが、アンナは自由にしている方が輝いているからな」

 ジルヴェスターは愛おしそうに目を細め、私を抱き寄せてちゅっとキスをした。

「それに仕事場でもアンナに会えるのは嬉しい」

 そんないつもとは違いすぎる彼を見て、騎士団のみんなは驚いて「うわ、甘すぎて胸焼けしそう」や「ギャップが凄すぎてついていけない」とゲンナリしながらも祝福してくれた。

「ジルヴェスター、アンナちゃん結婚おめでとう」
「お二人ともおめでとうございます」

 デニス様とブルーナ様が二人でお祝いに訪れてくれた。

「ありがとう。遠いのに悪いな」

「何言ってんだ。お前の結婚式に俺が来ないなんてあり得ねぇだろ?」

「そうだな」

 そう言ったデニス様とジルヴェスターはお互いの拳をコツンと合わせた。その様子を、ケヴィン様や他の騎士達が嬉しそうに見つめていた。

「ブルーナ様ありがとうございます」

「アンナ様本当におめでとうございます。とてもお綺麗ですわ」

 そう微笑んだブルーナ様は以前より柔らかい表情で幸せそうだった。

「次はブルーナ様の番ですね。楽しみにしていますわ」

「は、はい。ありがとうございます」

 頬を染め少し恥ずかしそうにする彼女はとても可愛いらしい。






♢♢♢








「おめでとうございます!!」

 使用人達がみんなずらっと玄関の廊下に並び私達にフラワーシャワーをしてくれた。

 ラルフとニーナは式まで付いて来てくれたが、全員を連れて行くわけにはいかなかった。

 だからこそみんなにもこの姿を見せたくて、私達は結婚式の服装のままここに帰って来た。

「奥様、とてもお綺麗です」
「旦那様も素敵です」
「うっ……うっ……お二人がやっと……」

 喜んだり泣いたりみんな忙しい。沢山の使用人達に祝ってもらいとても嬉しかった。

「皆、沢山心配をかけてすまなかった。だが、もう大丈夫だ。これからもよろしく頼む」

「よろしくお願いします」

 私達が挨拶をすると「もちろんです!」という声と、家中が大きな拍手に包まれた。

 ――ああ、幸せだ。





 そしてあっという間に夜になった。

 ニーナに必要な準備をしてもらい、私はこの日のために用意した新しいナイトウェアに身を包んで寝室のベッドにソワソワしながら座っている。

 ――ついにこの日が。

 まさか自分にこんな日が来ようとは。日本にいた頃、彼氏のいる友達は大人の関係に足を踏み入れている人もいた。

 だけど、私はパチーニャ王国で転生するまで恋も愛も知らず……彼氏はいなかったのだ。

 だからキスより先を知らない。そのキスだってジルヴェスターと初めてしたのだから。

「入るぞ」

「は、はい。どうぞ」

 彼は触り心地の良さそうなシャツを緩く羽織ってるだけなので、体格の良さが普段よりよくわかる。

 トレーニングをしていた時に見た、彼の鍛えあげられた上半身を思い出してしまった。

 頬を染めながらぽーっと見惚れていると、ジルヴェスターはくすっと笑い隣に腰掛けた。

 ギシッとベッドが沈んだ瞬間にドキドキと胸の鼓動が早くなる。

「そんなに熱烈に見つめられると穴が空きそうだ」

「ご、ごめん」

 慌てて視線を逸らすと、ジルヴェスターは私の頬を大きな手で包み込んだ。

「冗談だ。アンナには私だけをずっと見ていて欲しい。一生……私だけを」

 そんな甘い台詞をサラリと言って、私の唇にちゅっと軽く触れた。

「もちろん私もアンナだけだ」

 目を細めて微笑んだ顔は、とてつもなく美しくて色気が溢れていた。

 そのままちゅっちゅと優しく何度も唇を重ね、だんだんと深いキスに変わっていった。

 恋人の時より激しく濃いキスに、頭がくらくらしてくる。

「んっ……」

 気持ちがいいけど、恥ずかしい。なんだか彼に全部食べられてしまいそうな気分だ。

 ジルヴェスターはくたりと力の抜けた私を、優しくベッドに寝かせた。

「アンナ、とても綺麗だ」

 耳元で甘く低い声でそんなことを言われ、ピクンと身体が震えた。

「真っ赤になって……可愛い」

 意地悪な顔で微笑んだ彼に、耳に口付けられて「ひゃ」と色気のない声が出てしまう。

「いい反応だ」

 彼はそのまま耳元で話し続けるので、身体中がゾクゾクと震える。

「そ、その無駄にいい声で耳元で話さないで」

「ウェディングドレスも凄く似合っていたが、そのままのアンナが一番良い」

 ちゅっちゅと彼の柔らかい唇が、耳から首にだんだんと降りてきた。

「愛してる」

 そこからは彼にゆっくりじっくり時間をかけて全身を愛された。

 途中でシャツを脱ぎ捨てたジルヴェスターの身体が、それはもう完璧に鍛え上げられていて……格好良過ぎて目のやり場に困ってしまった。

 私の理想に近付くために密かに鍛えるなんて……その行為が可愛いではないか。

「アンナ?どうして目を逸らすんだ?」

「……過ぎて……見れない」

「ん?なんて?」

 彼は甘い声を出しながら、私の頬を手で優しく撫でながら見つめている。

 私は今全身真っ赤になっていると思う。過去の私はよくこの人に『好みじゃない』なんて言えたものだ。

「か……格好良すぎてちゃんと見れないの!」

 彼は驚いたようにキョトンとした後、ニヤリと口角を上げた。

「全部アンナのものだ。私の身体も心も」

 私の手を取り、彼の左胸に置いた。ドキドキと早い鼓動が聞こえてくる。

 ――彼も緊張してる。私と同じだ。

「愛してる」

「私も愛しています」

 初めてのその行為は、とても甘くて少し苦しくて……だけど幸せなものだった。

 ――人を好きになり、愛すること。

 すごく幸せだとジルヴェスターに出逢って実感することができた。



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