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14告白
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「ミーナ、久しぶり」
「あ……うん。元気だった?」
「ああ。少し二人きりで話したいんだ」
彼が緊張しているのがわかる。私は覚悟を決めた。ここで逃げてはいけないことがわかる。私がこくんと頷くと、ダニーは安心したようにほっとため息をついた。
「ダニー、ミーナをよろしく。お給料出たから誘ってくれたんでしょ?この子に美味しい晩ご飯奢ってやってよ!でも、バッカスが煩いから遅くならないようにね」
お母さんが冗談っぽく明るくそう言ってくれたのが、ありがたかった。
「もちろん!ケイトさん、帰りはちゃんと送るから安心して」
「ええ、わかったわ。二人とも楽しんでね」
お母さんは優しく微笑んで手を振ってくれた。私も手を振って別れる。
なんとなく気まずいなと思っていると、ダニーは私の手をそっと握って「行こう」と引っ張って行った。
小さい頃はよく手を繋いでいたと思うが、大きくなるにつれていつの間にか繋がなくなった。
久しぶりに触れたダニーの手はとても熱い。つられて、私の手も熱をおびてくる。なんだか……そわそわしてくる。
「ダニー!デートか?いいねぇ」
「わかってるなら、邪魔すんな」
明るくて町の人気者である彼は、色んな場所で声をかけられる。
「ダニー、私とも遊んでよ!」
「……またみんなでな」
「やーん!二人きりがいい」
女の子達からも人気がある。可愛い系から意外とお姉様系まで……様々な方面からモテている。
「俺、行かないから」
「へ?」
「あの子の二人で飯とか行かないからな」
「う、うん」
私は何も聞いていないのに、ダニーは焦りながらそう言った。
「あー!もうこの町は邪魔者が多すぎる!ちょっと離れてるけど、隣町に新しい美味い店あってさ。そこ行かないか?」
「うん、行ってみたい」
「良かった」
私達はこの田舎町で生まれて、ずっと育ってきた。だから顔見知りや友達だらけなのだ。
私達は辻馬車に乗り隣町へ向かった。歩いたら遠いけど、馬車ならあっという間に着いた。
ダニーは馬車から降りる時に、そっとエスコートをしてくれた。王女の時は当たり前だったこの行為も、平民でしてくれる人は少ない。
少し照れながらそっと手を出してくれた彼を見て、可愛いなと思った。そして知らない間に格好良い大人の男性になったんだな、という気持ちになった。
「この店。仕事仲間に教えてもらったんだ」
「へぇ、こんな素敵なお店知らなかった」
中に入ると、奥の空いているテーブルに案内された。気取り過ぎていないが、小洒落たお店だ。
「ラザニアとか……このチキンも美味いらしい」
「わー、美味しそう」
「酒は?少し飲む?」
「ダニーが飲むなら付き合うよ。甘いやつ」
「じゃあ、適当に頼むぞ」
ルニアス王国では、十五歳から飲酒オッケーだ。私はあんまり強くないが、たまにお父さんの晩酌に付き合う程度。ちなみに、ダニーはお酒好きだ。
生ハムと色とりどりの野菜が沢山入ったサラダに、とろとろチーズのラザニア。チキンは皮がパリパリに焼かれていて、デミグラスソースがかかっている。
「ミーナは弱いからカシスソーダな」
「うん。ダニーは何にしたの?」
「俺?……モヒート」
「へぇー!なんか度数強そうだね」
「ああ。強いからミーナは飲んじゃだめ」
はーい、と返事をして二人で乾杯をした。そして美味しそうなご飯に手を伸ばす。
「んーっ、美味しい」
口に入れた瞬間に、美味しさが広がる。幸せだし、自分が料理を作る時のモチベーションにもつながる。
笑顔でもぐもぐと食べていると、ダニーとバッチリ目が合った。
「俺、美味そうに食うミーナの顔好きだ」
彼は目を細めてニッと笑った。私はいきなり『好き』だと言われて戸惑った。
「な、何言ってるのよ。私とご飯なんて何度も食べてるでしょう?」
「ああ。だから、いつも良いなって思ってた」
ゴホッゴホッ……咳き込んでしまった。
「大丈夫かよ?ゆっくり食べろよ」
「う、うん。大丈夫」
彼は私の背中をゆっくりさすってくれている。
「この前はごめん。いきなり変なこと言って」
「いや、あの」
「あれからしばらくミーナに会えなくてさ、俺は寂しかった。このまま話さなくなるの嫌だなって思って、今日会いに行ったんだ」
「私もずっと心配してたよ。元気かなって」
「はは、心配……か」
ダニーは下を向いた後、グラスを傾けて氷をカラカラと鳴らし一気にモヒートを飲み干した。
「もう一杯同じの下さい」
おかわりをした後、彼は真っ直ぐ私を見つめた。あれ?この人はこんなに凛々しく男らしい顔だっただろうか?こんなに体は立派だっただろうか?
鍛冶屋で働いているダニーは、知らない間に全身にしっかりと筋肉がついていて逞しい。私の知ってる可愛い幼馴染の男の子の面影はもうない。私はどうして、いつまでも彼が昔と同じだと勘違いしていたのだろう。
――私の目の前にいるのは、魅力的なただ一人の男性だ。
「俺、ミーナのこと好きだよ」
「……」
「昔からずっと好きだった。幼馴染ってポジションに逃げてたのは事実だし、あいつが現れてから焦って告白するなんてダサいってわかってる」
ダニーはギリッと唇を噛んだ。
「でも、あいつに君を奪われたくない。自分が格好悪いとかどうでもいいって思った。俺はミーナのことよくわかってるつもりだし、絶対に哀しませたりしない。大事にする」
嘘のないその言葉にドキッと胸が高鳴る。
「俺のことどう思ってる?」
「どうって……仲の良い幼馴染」
「男としては考えられない?」
「か、考えたことなかった。私……恋とか愛とかよくわからくて。いつまでも子どもみたいでごめん」
私は隠さずに、正直な気持ちを伝えた。
「……カールのことが好きなのか?」
「好きだよ」
ダニーの喉がごくりと動き、息をひゅっと吸い込んだのがわかる。
「恋愛的な意味で好きかはわからない。でも、なぜかわからないけど彼に『可愛い』って言われるのは、嫌じゃなかった」
「ミーナはとても可愛いよ。笑った顔も美味しそうな時の顔も、怒った顔も可愛い。見た目もそうだけど、中身だって元気で優しくて照れ屋で……全部可愛い」
ダニーに初めてそんなことを言われて、頬が染まる。私の胸にストン、と言葉が落ちてきた。彼が見ているのは私の容姿だけじゃないってわかるから。
「あ、ありがと」
私が真っ赤な顔のまま小声でお礼を言うと、ダニーは口元を手でおさえた。
「その顔は反則。やばい……可愛い」
彼も耳まで真っ赤になっていたが、しばらくしてふぅと大きく息を吐いた。
「そんな反応してくれるってことは、俺にも見込みあると期待してもいい?」
「え……?」
「ミーナ、俺を男としてどうか考えてみて?恋愛的な意味で好きになれるか考えて欲しい」
「う、うん」
「やった!」
ダニーはとても嬉しそうに笑って、小さくガッツポーズをした。さっきまで大人っぽかったのに、なんだかその様子は子どものようだった。
「これからはさ、二人でデートしよう?好きになってもらえるように俺頑張るから」
「……嫌じゃないの?好きかどうかわからないって言ってる女と遊ぶのなんて面倒じゃない?あなたモテるんだし、遊びたい人は沢山いるでしょう?」
「面倒なわけないだろ!むしろ大歓迎」
「大歓迎?」
「俺はミーナがいいんだ。いや、ミーナじゃないと嫌だ」
私はまだ愛や恋がよくわからない。王女の時もちゃんとデートをしたことがない、恋愛初心者だ。婚約者のジョセフ王子とは何回か王宮でお茶をしただけだ。それも、侍女や護衛がたくさんいたので二人っきりとはいえなかった。
「ん……わかった」
「嬉しい」
その後、この話はとりあえず置いておくことにした。二人で美味しいご飯を食べて、他愛もない話を沢山してとても楽しかった。昔から知っている幼馴染はとても落ち着く存在だ。
そして、お酒もお互い進んでいた。私も弱いのに三杯も飲んでふわふわと良い気分になっていた。
「時間も時間だし、そろそろ帰ろうか」
「んー……うん。ふふふ」
「こら、酔っ払い。俺の腕に掴まって」
今の私はとても楽しい。なんでも面白く感じちゃうくらい。でも少しフラつくので、ダニーの腕をガシっと持った。彼はわたしを横目でチラリと見ながら、手慣れた様子でお会計をしている。
「ダニー、今夜はこんな素敵なお嬢さん連れて。隅に置けないな」
「今、必死に口説いてるから邪魔しないでくれよ」
「はは、それ聞いたら町の女どもがショック受けるな」
どうやら店員さんとダニーは顔見知りらしい。相変わらず顔が広いなと感心する。
「ふふ、お料理とーっても美味しかったです」
私はふにゃっと笑って、ペコリとお辞儀した。
「それはよかった。またダニーと二人でおいで」
「はい」
店員さんは私達を交互に見てとても嬉しそうに笑った後、ダニーに「健闘を祈る」と背中をバシバシ叩いていた。
外に出ると少しひんやりとして、酔って熱い身体には気持ちがいい。
「ご飯代私も払う」
「いらないよ。俺はもう働いてるし、格好つけさせて」
「……じゃあ、ご馳走様。ありがとう」
彼はお礼を言った私を嬉しそうに見つめた後、手を取って辻馬車がいる所まで歩いた。
そして、私達の町に帰り馬車を降りると少しふらついてしまった。どうやら結構酔っているらしい。
「ごめん。飲ませすぎたかな」
「ううん、勝手に頼んだの自分だし。美味しくて楽しかったから」
「……楽しかった?」
「うん」
「よかった。嬉しい」
その瞬間、彼は私をふんわりと抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこだ。驚きと恥ずかしさでバタバタと足を動かす。
「ちょ、ちょっと!恥ずかし……」
「フラフラしてて危ないから。動かないで。恥ずかしいなら俺の胸で顔隠してな」
「ゔーっ……」
今の私は真っ赤になっていることだろう。クラクラするのは酔いのせいか、恥ずかしさのせいかわからない。
町の人達からヒューッと口笛を吹いて冷やかされたりしているのに、ダニーは素知らぬ顔で家の前まで進んでいく。
「も、もういいから。下ろして」
「なんで?このままベッドまで連れてってやる」
「やっ!こんな姿見たらお父さん倒れちゃう」
「大丈夫だろ。じゃあ、眠ったふりしてろよ」
離すつもりはないらしいので、一度だけジロリと睨んでから仕方なく目を閉じた。ダニーの体温が心地よくて、なんだか本当に眠たくなってきた。
「素直で可愛い」
そんな恥ずかしい台詞を耳元で呟いた後、慣れた様子で我が家に入っていくがすぐに足が止まった。
「……女を眠らす程酔わすのは、男としてルール違反じゃないか」
顔を見なくてもわかる。それは、少し怒ったような低いカールの声だった。
「あ……うん。元気だった?」
「ああ。少し二人きりで話したいんだ」
彼が緊張しているのがわかる。私は覚悟を決めた。ここで逃げてはいけないことがわかる。私がこくんと頷くと、ダニーは安心したようにほっとため息をついた。
「ダニー、ミーナをよろしく。お給料出たから誘ってくれたんでしょ?この子に美味しい晩ご飯奢ってやってよ!でも、バッカスが煩いから遅くならないようにね」
お母さんが冗談っぽく明るくそう言ってくれたのが、ありがたかった。
「もちろん!ケイトさん、帰りはちゃんと送るから安心して」
「ええ、わかったわ。二人とも楽しんでね」
お母さんは優しく微笑んで手を振ってくれた。私も手を振って別れる。
なんとなく気まずいなと思っていると、ダニーは私の手をそっと握って「行こう」と引っ張って行った。
小さい頃はよく手を繋いでいたと思うが、大きくなるにつれていつの間にか繋がなくなった。
久しぶりに触れたダニーの手はとても熱い。つられて、私の手も熱をおびてくる。なんだか……そわそわしてくる。
「ダニー!デートか?いいねぇ」
「わかってるなら、邪魔すんな」
明るくて町の人気者である彼は、色んな場所で声をかけられる。
「ダニー、私とも遊んでよ!」
「……またみんなでな」
「やーん!二人きりがいい」
女の子達からも人気がある。可愛い系から意外とお姉様系まで……様々な方面からモテている。
「俺、行かないから」
「へ?」
「あの子の二人で飯とか行かないからな」
「う、うん」
私は何も聞いていないのに、ダニーは焦りながらそう言った。
「あー!もうこの町は邪魔者が多すぎる!ちょっと離れてるけど、隣町に新しい美味い店あってさ。そこ行かないか?」
「うん、行ってみたい」
「良かった」
私達はこの田舎町で生まれて、ずっと育ってきた。だから顔見知りや友達だらけなのだ。
私達は辻馬車に乗り隣町へ向かった。歩いたら遠いけど、馬車ならあっという間に着いた。
ダニーは馬車から降りる時に、そっとエスコートをしてくれた。王女の時は当たり前だったこの行為も、平民でしてくれる人は少ない。
少し照れながらそっと手を出してくれた彼を見て、可愛いなと思った。そして知らない間に格好良い大人の男性になったんだな、という気持ちになった。
「この店。仕事仲間に教えてもらったんだ」
「へぇ、こんな素敵なお店知らなかった」
中に入ると、奥の空いているテーブルに案内された。気取り過ぎていないが、小洒落たお店だ。
「ラザニアとか……このチキンも美味いらしい」
「わー、美味しそう」
「酒は?少し飲む?」
「ダニーが飲むなら付き合うよ。甘いやつ」
「じゃあ、適当に頼むぞ」
ルニアス王国では、十五歳から飲酒オッケーだ。私はあんまり強くないが、たまにお父さんの晩酌に付き合う程度。ちなみに、ダニーはお酒好きだ。
生ハムと色とりどりの野菜が沢山入ったサラダに、とろとろチーズのラザニア。チキンは皮がパリパリに焼かれていて、デミグラスソースがかかっている。
「ミーナは弱いからカシスソーダな」
「うん。ダニーは何にしたの?」
「俺?……モヒート」
「へぇー!なんか度数強そうだね」
「ああ。強いからミーナは飲んじゃだめ」
はーい、と返事をして二人で乾杯をした。そして美味しそうなご飯に手を伸ばす。
「んーっ、美味しい」
口に入れた瞬間に、美味しさが広がる。幸せだし、自分が料理を作る時のモチベーションにもつながる。
笑顔でもぐもぐと食べていると、ダニーとバッチリ目が合った。
「俺、美味そうに食うミーナの顔好きだ」
彼は目を細めてニッと笑った。私はいきなり『好き』だと言われて戸惑った。
「な、何言ってるのよ。私とご飯なんて何度も食べてるでしょう?」
「ああ。だから、いつも良いなって思ってた」
ゴホッゴホッ……咳き込んでしまった。
「大丈夫かよ?ゆっくり食べろよ」
「う、うん。大丈夫」
彼は私の背中をゆっくりさすってくれている。
「この前はごめん。いきなり変なこと言って」
「いや、あの」
「あれからしばらくミーナに会えなくてさ、俺は寂しかった。このまま話さなくなるの嫌だなって思って、今日会いに行ったんだ」
「私もずっと心配してたよ。元気かなって」
「はは、心配……か」
ダニーは下を向いた後、グラスを傾けて氷をカラカラと鳴らし一気にモヒートを飲み干した。
「もう一杯同じの下さい」
おかわりをした後、彼は真っ直ぐ私を見つめた。あれ?この人はこんなに凛々しく男らしい顔だっただろうか?こんなに体は立派だっただろうか?
鍛冶屋で働いているダニーは、知らない間に全身にしっかりと筋肉がついていて逞しい。私の知ってる可愛い幼馴染の男の子の面影はもうない。私はどうして、いつまでも彼が昔と同じだと勘違いしていたのだろう。
――私の目の前にいるのは、魅力的なただ一人の男性だ。
「俺、ミーナのこと好きだよ」
「……」
「昔からずっと好きだった。幼馴染ってポジションに逃げてたのは事実だし、あいつが現れてから焦って告白するなんてダサいってわかってる」
ダニーはギリッと唇を噛んだ。
「でも、あいつに君を奪われたくない。自分が格好悪いとかどうでもいいって思った。俺はミーナのことよくわかってるつもりだし、絶対に哀しませたりしない。大事にする」
嘘のないその言葉にドキッと胸が高鳴る。
「俺のことどう思ってる?」
「どうって……仲の良い幼馴染」
「男としては考えられない?」
「か、考えたことなかった。私……恋とか愛とかよくわからくて。いつまでも子どもみたいでごめん」
私は隠さずに、正直な気持ちを伝えた。
「……カールのことが好きなのか?」
「好きだよ」
ダニーの喉がごくりと動き、息をひゅっと吸い込んだのがわかる。
「恋愛的な意味で好きかはわからない。でも、なぜかわからないけど彼に『可愛い』って言われるのは、嫌じゃなかった」
「ミーナはとても可愛いよ。笑った顔も美味しそうな時の顔も、怒った顔も可愛い。見た目もそうだけど、中身だって元気で優しくて照れ屋で……全部可愛い」
ダニーに初めてそんなことを言われて、頬が染まる。私の胸にストン、と言葉が落ちてきた。彼が見ているのは私の容姿だけじゃないってわかるから。
「あ、ありがと」
私が真っ赤な顔のまま小声でお礼を言うと、ダニーは口元を手でおさえた。
「その顔は反則。やばい……可愛い」
彼も耳まで真っ赤になっていたが、しばらくしてふぅと大きく息を吐いた。
「そんな反応してくれるってことは、俺にも見込みあると期待してもいい?」
「え……?」
「ミーナ、俺を男としてどうか考えてみて?恋愛的な意味で好きになれるか考えて欲しい」
「う、うん」
「やった!」
ダニーはとても嬉しそうに笑って、小さくガッツポーズをした。さっきまで大人っぽかったのに、なんだかその様子は子どものようだった。
「これからはさ、二人でデートしよう?好きになってもらえるように俺頑張るから」
「……嫌じゃないの?好きかどうかわからないって言ってる女と遊ぶのなんて面倒じゃない?あなたモテるんだし、遊びたい人は沢山いるでしょう?」
「面倒なわけないだろ!むしろ大歓迎」
「大歓迎?」
「俺はミーナがいいんだ。いや、ミーナじゃないと嫌だ」
私はまだ愛や恋がよくわからない。王女の時もちゃんとデートをしたことがない、恋愛初心者だ。婚約者のジョセフ王子とは何回か王宮でお茶をしただけだ。それも、侍女や護衛がたくさんいたので二人っきりとはいえなかった。
「ん……わかった」
「嬉しい」
その後、この話はとりあえず置いておくことにした。二人で美味しいご飯を食べて、他愛もない話を沢山してとても楽しかった。昔から知っている幼馴染はとても落ち着く存在だ。
そして、お酒もお互い進んでいた。私も弱いのに三杯も飲んでふわふわと良い気分になっていた。
「時間も時間だし、そろそろ帰ろうか」
「んー……うん。ふふふ」
「こら、酔っ払い。俺の腕に掴まって」
今の私はとても楽しい。なんでも面白く感じちゃうくらい。でも少しフラつくので、ダニーの腕をガシっと持った。彼はわたしを横目でチラリと見ながら、手慣れた様子でお会計をしている。
「ダニー、今夜はこんな素敵なお嬢さん連れて。隅に置けないな」
「今、必死に口説いてるから邪魔しないでくれよ」
「はは、それ聞いたら町の女どもがショック受けるな」
どうやら店員さんとダニーは顔見知りらしい。相変わらず顔が広いなと感心する。
「ふふ、お料理とーっても美味しかったです」
私はふにゃっと笑って、ペコリとお辞儀した。
「それはよかった。またダニーと二人でおいで」
「はい」
店員さんは私達を交互に見てとても嬉しそうに笑った後、ダニーに「健闘を祈る」と背中をバシバシ叩いていた。
外に出ると少しひんやりとして、酔って熱い身体には気持ちがいい。
「ご飯代私も払う」
「いらないよ。俺はもう働いてるし、格好つけさせて」
「……じゃあ、ご馳走様。ありがとう」
彼はお礼を言った私を嬉しそうに見つめた後、手を取って辻馬車がいる所まで歩いた。
そして、私達の町に帰り馬車を降りると少しふらついてしまった。どうやら結構酔っているらしい。
「ごめん。飲ませすぎたかな」
「ううん、勝手に頼んだの自分だし。美味しくて楽しかったから」
「……楽しかった?」
「うん」
「よかった。嬉しい」
その瞬間、彼は私をふんわりと抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこだ。驚きと恥ずかしさでバタバタと足を動かす。
「ちょ、ちょっと!恥ずかし……」
「フラフラしてて危ないから。動かないで。恥ずかしいなら俺の胸で顔隠してな」
「ゔーっ……」
今の私は真っ赤になっていることだろう。クラクラするのは酔いのせいか、恥ずかしさのせいかわからない。
町の人達からヒューッと口笛を吹いて冷やかされたりしているのに、ダニーは素知らぬ顔で家の前まで進んでいく。
「も、もういいから。下ろして」
「なんで?このままベッドまで連れてってやる」
「やっ!こんな姿見たらお父さん倒れちゃう」
「大丈夫だろ。じゃあ、眠ったふりしてろよ」
離すつもりはないらしいので、一度だけジロリと睨んでから仕方なく目を閉じた。ダニーの体温が心地よくて、なんだか本当に眠たくなってきた。
「素直で可愛い」
そんな恥ずかしい台詞を耳元で呟いた後、慣れた様子で我が家に入っていくがすぐに足が止まった。
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