本当に美しい国だった

志生帆 海

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月明かりのオアシス

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 砂漠の月明りが注がれた僕たちだけのオアシス。

 貴重な泉を囲むように、少しの木々と青い茂みがある場所にセイフを連れて来た。

 この砂漠の国では、ここが初めてセイフを抱くのに最上のベッドだと思ったから。

 夜空には幾千もの星たちが、まるで宮殿のシャンデリアのように輝いている。

 僕はそこにセイフの躰を静かに押し倒し、覆い被さり改めて気が付く。幼い頃、僕を抱きあげ助けてくれたセイフの背を、僕はとうに超えていた。

「本当にいい?」
「いちいち聞くな、んなこと……」

 セイフも恥ずかしいのか、目元を赤く染めていた。僕はセイフに初めてのキスを落としてみる。

 この口に叱られ、この口に励まされて成長した。

 僕のセイフ。命の恩人を今から抱く。それは僕の中に早くから芽生えていた衝動でもあった。

「ん、うっ……」

 セイフとのキスは、僕にとって初めてキスだった。上手く出来ている自信はないが、本能のままに唇を貪った。

 呼吸が苦しいのか、時折顔を背け空気を求めるセイフの細い顎を掴み、再びキスをする。半開きの唇に割り込み舌を絡め、口腔内の味を確かめる。唾液が甘いと思った。

 僕はずっと喉が渇いていたのか、飢えていたのか。今僕の下に組み敷いたセイフに対して獰猛な気持ちを抱くほどだ。

「はっ……うっ」
「セイフどう?俺のキス」
「お前……いつの間に」
「上手い?」
「生意気言うな。まだまだだ」

 セイフも確かに性的に感じていた。何故なら押し倒したセイフの下半身の高ぶりが、ズボンの上からも分かったからだ。

「セイフ……僕で感じてくれたんだな。嬉しいよ。愛させて、あなたの躰」
「くそっ!もう余計なこと言うな」

 なんとも照れ臭そうな顔をする。セイフのこんな表情は見たことがなく、僕の興奮も一気に高まる。

 着ていた薄い灰色のTシャツの中に手を突っ込んだ。セイフとは一緒に水浴びをしたり風呂にも入った仲で見慣れていたはずの乳首なのに、今は別物だ。

「あっ……うぅ……」
 
 ツンと夜空に向かって立ち上がる張り詰めたそれを指先で弄りまわすと、セイフはたまらない表情を浮かべ目を閉じた。更に深くTシャツをめくりあげ、その粒を唇で挟んでひっぱると、小さな呻き声をあげた。

「うっ……やめろっそんな……」
「やめないよ。もっと感じて」

 今度は吸い付いてみた。時折優しく歯を当てると、息を飲み込む声がした。口に含み舌先で転がしてやれば、芯を持ってますます硬くなっていく。

 すごい……こんなになるんて。

 セイフの手は感じすぎる躰を必死に沈めようとしているのか、青い草をぎゅっと握りしめていた。

「セイフ、力を抜いて」
「うっ……」

 更にセイフの迷彩色のズボンを一気に脱がし、裸に剥いていく。

 青い草むらに浮かび上がる月のような白い肢体は、いつもの反体制派リーダー格のセイフではない。

 ここにいるのは、夜空に染まる銀髪を振り乱し、白い肌を惜しげもなく晒してくれる僕の大事な人。

「ずっと好きだった。セイフは僕のことを好き?」
「……」

 その答えは口には出してもらえなかった。だがこうやって僕を受け入れてくれるだけでも満足だった。

 願わくば……次は言葉で欲しい。

 弄れば弄るほど、しどけなく揺れるセイフの躰の中に入り込みたい気持ちが満ちて来た。

「ん……?それは……」

 僕がポケットから小さな瓶を出したのを、セイフは見逃さなかった。

「これ?蜂蜜だよ。丘の上で食べようと持って来た。これしかないけどいいか」
「いいって……お前っその知識、誰に聞いたんだよっ」
「え……ちょっと調べた」
「馬鹿!」

 口ではあれこれ言っているが、セイフは抵抗してはいない。僕を受け入れるのを待っている。そう感じたので、僕も躊躇わない。

 セイフの脚の間に躰を押し入れ、左右に開いて持ち上げた。露わになった股間の奥の窄まりに蜂蜜を塗った指をつぷっと差し込むと、吸い込まれるように中へと入って行った。

「すごい、セイフの中……熱い」

 そのまま指で後ろを弄りながら、ぷるぷると高まっているセイフのものを口に含んでみた。こんなことをするのは初めてだが、何の抵抗もない。

「やめっ……離せっ」

 セイフは必死に僕の髪を掴んで抵抗するが、僕はその腰をしっかりホールドして吸い上げていく。何度も何度も繰り返すと、セイフの感じる声が高まっていく。

「あぁっ」

 一際大きな喘ぎ声と共に、口の奥にぴしゃっと液がかかったので、迷わず嚥下した。

「パドゥル……お前……」

 呆然としたセイフの声にはっとして、指を一旦抜いて彼にキスをした。何度も、まるで鳥が啄むように。するとセイフも僕の髪に手を伸ばし、優しく撫でるように触れてくれた。

「お前……こんなことも出来るようになったんだな。いつの間に大きくなりやがって。この黒いくせ毛も褐色の肌も、大きな目も……昔と変わらないのに。いい男になったな」

 愛おしそうに囁かれて、僕のものもはちきれそうに高まった。

「中に挿れてもいい?」
「あぁ傷つけるなよ。明日は戦闘になりそうだ」
「分かった」

 入り口に慎重に蜂蜜を足して、一気に腰を静めた。

「うっ……」

 僕のものをセイフの入り口がずぶっと呑み込んでいくのが分かった。セイフの躰の一部に溶け込めたような気持ちで感激に胸が震えた。

「すごい……セイフの中……気持ち良くて温かい」

 まるで胎内にいるかのような満ち足りた安心感だ。こんな夜をまた迎えたい。

 十二歳の時に孤児になってから、ずっと死と向い合せの人生だった。明日生きているのか分からない戦闘の日々で、僕はいつの間にか生への執着を失っていたことに気が付いた。

 セイフを抱いて初めて知る、人としての営みの尊さ。相手が男だとかそういうことは問題ではなかった。
 今、僕たちは生きている。明日も生き続けたい。セイフと共に!

「ん……あっ……あっ」

 僕が擦るように躰を上下させれば、セイフも堪えていた声を我慢できないようで、ひっきりなしに嬌声をあげだした。

「セイフ……セイフ」

 何度も名前を呼びながら、セイフの脚をさらに大きく開脚させ、最奥を突き上げていく。

 星屑の影が躰に映りそうな程の澄んだ夜だった。夜空には僕の名と同じ満月がゆったりと見守ってくれている。

 青い茂みに迸る白い露。僕たちは逞しい躰を重ね合い、共に果てた。

 はぁはぁとお互いの息が、冷え込んだ芝生の上に霞のように立ちのぼる。

 天も地も、何もかも幻想的な僕たちの初夜。こんな時間を持てたことが信じられなくて、僕は泣いた。

「パドゥル……お前がなぜ泣く?」

 セイフが親指の腹で涙を拭ってくれた。

「生きていてよかった。あの時死ななくてよかった。僕を助けてくれてありがとう。あの時セイフが通りかからなかったら、こんな時を知らずに僕はこの世から消えていた。僕が今度はセイフを守りたい。絶対に!」

 そこまで言い切ると、セイフの方からキスをしてくれた。

「お前は……やっぱりオレ好みに成長したな。頼もしいことを言うようになって。オレももしかしたら、この時を待っていたのかもな……」

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