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第2章
君と僕、俺と君 5
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「ここは何という場所なの?」
「コヴェント・ガーデン(Covent Garden)といって、ロンドンの中心部に位置しているマーケットだよ。賑やかで楽しい所さ!」
「……すごい人混みだね」
目を丸くしてキョロキョロする様子が、まるで幼子のようだ。
なんだか人混みに埋もれて本気で迷子になりそうなので、手をしっかり繋いであげた。
「あの、……手、なんで?」
「迷子になりそうだから」
「あ、そうか……ありがとう」
『迷子』という理由に安心したのか、強張っていた手の力を緩めてくれたので、俺たちは優しく手を取り合うことができた。さらさらして心地よい肌質だな。
君は俺よりずっと背も低く華奢な体格で端正な顔立ちだ。俺も間違えたようにボーイッシュでキュートな女の子のようでもある。この胸のドキドキは一体なんなのか混乱してくるよ。
「こっちだよ! あっちに行きたい店がある」
コヴェント・ガーデンのメインロードは高いアーチ状の天井がある建物に、沢山の店が軒を連ねている。しかもオペラやクラシックの演奏や大道芸が繰り広げられており、楽しみ方はさまざまだ!
ここを歩くといつも活気に包まれ、パワーをもらえる。
そして今日はいつも以上のパワーをもらっている。
その理由は明確だ。
隣に君がいるから。
君と手をつないでいるから。
「そうだ、腹、空かない?」
「あ……少し」
「この先に行きつけのハンバーガーショップがあるんだ。奢ってあげるよ」
「え……」
マーケットのハンバーガーは、自宅の食卓に出て来る名前も覚えられない凝った料理よりも、ずっと美味しい! オーダーしてから丁寧に作られるパテや揚げたての付け合わせのポテトは絶品だ。
「さぁ、どうぞ」
「あ、ありがとう。これ『ハンバーガー』って言うんだね」
「まさか、食べたことない?」
まるで初めて出会ったように不思議そうに見つめているので確認すると、恥ずかしそうにコクンとうなずいた。
「あっ、そうか、日本ではメジャーじゃないんだな」
「……どうだろう? あの、どうやって食べるの?」
「こうさ! 豪快に丸かじりして」
「えっと……」
君の可愛い口が開く。
あーん、と声が聞こえて来そうで、これはドキドキものだ。
うわっ、まただ。
ヤバイヤバイと、心が警笛を鳴らす。
しかもモグモグと噛みしめ、にっこり、俺に微笑みかけてくれるもんだから、危うく自分のハンバーガーを、ポロっと落とす所だった。
か、可愛い……
「美味しいね……こんなに美味しいもの初めてだ」
それは大げさだろうと思いつつ、気に入ってもらえてうれしくなった。
「だろ!」
「うん」
あーそっか、心から楽しいって、こういう事なのか。
飾った会話やお世辞なんていらないんだな。
素直な言葉が、どんどん湧き上がってくる!
「結構食べるの速いな。負けそうだ」
「え……そうかな」
少し寂しげに瞬きをする。どうして?
笑うと可愛いのに、時折、悲しそうな大人っぽい表情をする。
ミステリアスな部分がある子だよな。
あ、睫毛も真っ黒だ。
髪も艶やかな漆黒で……白い肌の透明感もいい。
テニスで会ったモリミヤが美丈夫なら、この子は美少女……じゃなくて美少年タイプといえばいいのか。
突然俺の周りに現れた二人の日本人が、あまりに真逆なのが面白い。
「あの、僕、何か変?」
「なぜ?」
「だって、さっきからじっと見るから」
「ええっと、あっ、これさ。ケチャップが顔についている」
「えっ! どこ?」
唇のはしっこ……
言葉で教えるより先に、指がさっと動いた。
薄い皮膜、桃色の淡い皮膚をそっと撫でると、君の肩がビクッと震えた。
雷に打たれたように!
「コヴェント・ガーデン(Covent Garden)といって、ロンドンの中心部に位置しているマーケットだよ。賑やかで楽しい所さ!」
「……すごい人混みだね」
目を丸くしてキョロキョロする様子が、まるで幼子のようだ。
なんだか人混みに埋もれて本気で迷子になりそうなので、手をしっかり繋いであげた。
「あの、……手、なんで?」
「迷子になりそうだから」
「あ、そうか……ありがとう」
『迷子』という理由に安心したのか、強張っていた手の力を緩めてくれたので、俺たちは優しく手を取り合うことができた。さらさらして心地よい肌質だな。
君は俺よりずっと背も低く華奢な体格で端正な顔立ちだ。俺も間違えたようにボーイッシュでキュートな女の子のようでもある。この胸のドキドキは一体なんなのか混乱してくるよ。
「こっちだよ! あっちに行きたい店がある」
コヴェント・ガーデンのメインロードは高いアーチ状の天井がある建物に、沢山の店が軒を連ねている。しかもオペラやクラシックの演奏や大道芸が繰り広げられており、楽しみ方はさまざまだ!
ここを歩くといつも活気に包まれ、パワーをもらえる。
そして今日はいつも以上のパワーをもらっている。
その理由は明確だ。
隣に君がいるから。
君と手をつないでいるから。
「そうだ、腹、空かない?」
「あ……少し」
「この先に行きつけのハンバーガーショップがあるんだ。奢ってあげるよ」
「え……」
マーケットのハンバーガーは、自宅の食卓に出て来る名前も覚えられない凝った料理よりも、ずっと美味しい! オーダーしてから丁寧に作られるパテや揚げたての付け合わせのポテトは絶品だ。
「さぁ、どうぞ」
「あ、ありがとう。これ『ハンバーガー』って言うんだね」
「まさか、食べたことない?」
まるで初めて出会ったように不思議そうに見つめているので確認すると、恥ずかしそうにコクンとうなずいた。
「あっ、そうか、日本ではメジャーじゃないんだな」
「……どうだろう? あの、どうやって食べるの?」
「こうさ! 豪快に丸かじりして」
「えっと……」
君の可愛い口が開く。
あーん、と声が聞こえて来そうで、これはドキドキものだ。
うわっ、まただ。
ヤバイヤバイと、心が警笛を鳴らす。
しかもモグモグと噛みしめ、にっこり、俺に微笑みかけてくれるもんだから、危うく自分のハンバーガーを、ポロっと落とす所だった。
か、可愛い……
「美味しいね……こんなに美味しいもの初めてだ」
それは大げさだろうと思いつつ、気に入ってもらえてうれしくなった。
「だろ!」
「うん」
あーそっか、心から楽しいって、こういう事なのか。
飾った会話やお世辞なんていらないんだな。
素直な言葉が、どんどん湧き上がってくる!
「結構食べるの速いな。負けそうだ」
「え……そうかな」
少し寂しげに瞬きをする。どうして?
笑うと可愛いのに、時折、悲しそうな大人っぽい表情をする。
ミステリアスな部分がある子だよな。
あ、睫毛も真っ黒だ。
髪も艶やかな漆黒で……白い肌の透明感もいい。
テニスで会ったモリミヤが美丈夫なら、この子は美少女……じゃなくて美少年タイプといえばいいのか。
突然俺の周りに現れた二人の日本人が、あまりに真逆なのが面白い。
「あの、僕、何か変?」
「なぜ?」
「だって、さっきからじっと見るから」
「ええっと、あっ、これさ。ケチャップが顔についている」
「えっ! どこ?」
唇のはしっこ……
言葉で教えるより先に、指がさっと動いた。
薄い皮膜、桃色の淡い皮膚をそっと撫でると、君の肩がビクッと震えた。
雷に打たれたように!
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