37 / 37
第2章
君と僕、俺と君 17
しおりを挟む
瑠衣の奴、大丈夫か。
寂しそうな目をしていたので、部屋に残して出掛けるのが心残りだった。
それでも英国に来てから瑠衣はだいぶ変わった。
日本にいた時よりも、ずっと感情を表に出せるようになってきた。
毎週日曜日に会う友人がいるようだが、深く言及した事はない。
それでも瑠衣のそわそわした様子から、もしかしたら、その友人に恋をしているのではないかとも勘ぐってしまう。
ここ最近、部屋でぼんやりしている事が増えた。
でもいつもの寂しそうな顔ではなく、幸せそうな表情を浮かべている。それからベッドの上でうさぎのぬいぐみを愛おしそうに抱きしめている事もあった。
なぁ、それってもしかして、彼女からの贈り物なのか。
瑠衣の彼女?
あまり想像できないが、きっと包容力がある女性なんだろうな。
瑠衣には、そういう人の方が似合う。
恋をするのは自由だ。
するのならば、瑠衣を絶対に幸せにしてくれる人がいい。
お願いだから、苦しい恋だけはするな。
もう俺は、瑠衣の苦しい顔を二度と見たくないから。
あの出来事はお前にとって過酷なものだったが、俺も目の当たりにしてかなりの衝撃を受けた。
あの日の残酷な姿は、俺と窓から中を偶然覗いた庭師のテツ以外は見ていない。
テツはすぐに逃げた奴を追いかけ、その間に俺は急いで瑠衣に服を着せてやった。
お前の憐れな姿……絶対に誰にも晒したくなかった。
寡黙なテツは秘密をしっかり守ってくれた。
それ以来、俺はテツには一目置いている。
そうだ、アイツに英国のガーデニングの本を買うと約束したから、今度探しに行かないとな。
それにしても瑠衣の友達って、どんな子だ?
瑠衣が話さないから、何も情報がないぞ。
よし、少し探ってみるかな。
****
テニスコートに着くと、久しぶりにグレイが来ていた。彼は俺のクラスメイトのピーターの幼馴染みだ。別のハイスクールに通っているので詳しい事は知らないが、お互いに気が合うので、テニスでペアを組んだりもした。
「お! やっと会えたな。グレイ」
「おぅ久しぶりだな、モリミヤ」
「どうした? ここ2週間ほど顔を見せなかったな」
「あぁ、実はデートしてた」
グレイは柄にもなく頬を染めた。
「えっ、デート?」
「うーん、正確にはデートではないかもしれないが、俺の中では絶対にデートだったよ」
「なんだ? まだ片思いか」
「それもよく分からない」
「ふーん」
恋とはあやふやなものだ。
いつ始まって、いつ終わるのか。
だいたい目に見えないものだから、それを恋だと断言するのもおこがましい。
「よかったな」
「そうか。お前だってモテるだろう?」
「言い寄ってくる子は多いが、まだ自分から誰かに惚れた事がない」
「贅沢なことを……だとすると、やっぱり俺は恋をしているようだ。会いたくて会いたくてたまらない人だから」
「それは、よかったな」
グレイは、突然真顔になった。
「なぁ、モリミヤはずっと日本で暮らしてきたんだろう? 外人みたいな顔をしているが」
「……そうだが」
「実はさ、俺の愛しい人は日本人なんだ」
「へぇ」
意外だった。日本からの留学生はそう多くないから。俺の知っている留学生だったら驚くな。
「お前が恋する程だから、かなり魅力的な子だろうな」
「あぁ、すごく気になって、気になって……あぁ、まずい。今すぐ会いたくなってきた」
「ははっ、もうメロメロだな」
「純粋無垢な子なんだ。どこに連れて行ってあげれば喜ぶかな」
「ふーん……品行方正に頼むぜ。同じ日本人として助言するよ。英国人のスキンシップには慣れてないからな」
「え、いきなりハグとか驚く?」
「どうだろう。好きなら喜ぶと思うが」
そう教えると、グレイはニヤついた。
「嫌がられなかったのか」
「あぁ、なぁ、脈あるかな?」
「かもな。行き先か……日本食も恋しいかもな。そろそろ」
「なるほど。あとは?」
「そうだな。俺だったら乗馬をしてみたい。英国らしくアフタヌーンティーもいいなぁ」
まだ本当の恋を知らない俺が、他人の恋の助言を?
滑稽だったが、グレイは育ちの良さからか何を言っても憎めない奴だ。
親身になってやりたい。
「次のデート、上手くいくといいな」
「サンキュ! 頑張るよ」
寂しそうな目をしていたので、部屋に残して出掛けるのが心残りだった。
それでも英国に来てから瑠衣はだいぶ変わった。
日本にいた時よりも、ずっと感情を表に出せるようになってきた。
毎週日曜日に会う友人がいるようだが、深く言及した事はない。
それでも瑠衣のそわそわした様子から、もしかしたら、その友人に恋をしているのではないかとも勘ぐってしまう。
ここ最近、部屋でぼんやりしている事が増えた。
でもいつもの寂しそうな顔ではなく、幸せそうな表情を浮かべている。それからベッドの上でうさぎのぬいぐみを愛おしそうに抱きしめている事もあった。
なぁ、それってもしかして、彼女からの贈り物なのか。
瑠衣の彼女?
あまり想像できないが、きっと包容力がある女性なんだろうな。
瑠衣には、そういう人の方が似合う。
恋をするのは自由だ。
するのならば、瑠衣を絶対に幸せにしてくれる人がいい。
お願いだから、苦しい恋だけはするな。
もう俺は、瑠衣の苦しい顔を二度と見たくないから。
あの出来事はお前にとって過酷なものだったが、俺も目の当たりにしてかなりの衝撃を受けた。
あの日の残酷な姿は、俺と窓から中を偶然覗いた庭師のテツ以外は見ていない。
テツはすぐに逃げた奴を追いかけ、その間に俺は急いで瑠衣に服を着せてやった。
お前の憐れな姿……絶対に誰にも晒したくなかった。
寡黙なテツは秘密をしっかり守ってくれた。
それ以来、俺はテツには一目置いている。
そうだ、アイツに英国のガーデニングの本を買うと約束したから、今度探しに行かないとな。
それにしても瑠衣の友達って、どんな子だ?
瑠衣が話さないから、何も情報がないぞ。
よし、少し探ってみるかな。
****
テニスコートに着くと、久しぶりにグレイが来ていた。彼は俺のクラスメイトのピーターの幼馴染みだ。別のハイスクールに通っているので詳しい事は知らないが、お互いに気が合うので、テニスでペアを組んだりもした。
「お! やっと会えたな。グレイ」
「おぅ久しぶりだな、モリミヤ」
「どうした? ここ2週間ほど顔を見せなかったな」
「あぁ、実はデートしてた」
グレイは柄にもなく頬を染めた。
「えっ、デート?」
「うーん、正確にはデートではないかもしれないが、俺の中では絶対にデートだったよ」
「なんだ? まだ片思いか」
「それもよく分からない」
「ふーん」
恋とはあやふやなものだ。
いつ始まって、いつ終わるのか。
だいたい目に見えないものだから、それを恋だと断言するのもおこがましい。
「よかったな」
「そうか。お前だってモテるだろう?」
「言い寄ってくる子は多いが、まだ自分から誰かに惚れた事がない」
「贅沢なことを……だとすると、やっぱり俺は恋をしているようだ。会いたくて会いたくてたまらない人だから」
「それは、よかったな」
グレイは、突然真顔になった。
「なぁ、モリミヤはずっと日本で暮らしてきたんだろう? 外人みたいな顔をしているが」
「……そうだが」
「実はさ、俺の愛しい人は日本人なんだ」
「へぇ」
意外だった。日本からの留学生はそう多くないから。俺の知っている留学生だったら驚くな。
「お前が恋する程だから、かなり魅力的な子だろうな」
「あぁ、すごく気になって、気になって……あぁ、まずい。今すぐ会いたくなってきた」
「ははっ、もうメロメロだな」
「純粋無垢な子なんだ。どこに連れて行ってあげれば喜ぶかな」
「ふーん……品行方正に頼むぜ。同じ日本人として助言するよ。英国人のスキンシップには慣れてないからな」
「え、いきなりハグとか驚く?」
「どうだろう。好きなら喜ぶと思うが」
そう教えると、グレイはニヤついた。
「嫌がられなかったのか」
「あぁ、なぁ、脈あるかな?」
「かもな。行き先か……日本食も恋しいかもな。そろそろ」
「なるほど。あとは?」
「そうだな。俺だったら乗馬をしてみたい。英国らしくアフタヌーンティーもいいなぁ」
まだ本当の恋を知らない俺が、他人の恋の助言を?
滑稽だったが、グレイは育ちの良さからか何を言っても憎めない奴だ。
親身になってやりたい。
「次のデート、上手くいくといいな」
「サンキュ! 頑張るよ」
22
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
神様は僕に笑ってくれない
一片澪
BL
――高宮 恭一は手料理が食べられない。
それは、幸せだった頃の記憶と直結するからだ。
過去のトラウマから地元を切り捨て、一人で暮らしていた恭一はある日体調を崩し道端でしゃがみ込んだ所を喫茶店のオーナー李壱に助けられる。
その事をきっかけに二人は知り合い、李壱の持つ独特の空気感に恭一はゆっくりと自覚無く惹かれ優しく癒されていく。
初期愛情度は見せていないだけで攻め→→→(←?)受けです。
※元外資系エリート現喫茶店オーナーの口調だけオネェ攻め×過去のトラウマから手料理が食べられなくなったちょっと卑屈な受けの恋から愛になるお話。
※最初だけシリアスぶっていますが必ずハッピーエンドになります。
※基本的に穏やかな流れでゆっくりと進む平和なお話です。
【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした
鳥居之イチ
BL
————————————————————
受:久遠 酵汰《くおん こうた》
攻:金城 桜花《かねしろ おうか》
————————————————————
あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。
その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。
上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。
それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。
お呪いのルールはたったの二つ。
■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。
■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。
つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。
久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、
金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが…
————————————————————
この作品は他サイトでも投稿しております。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
瑠衣くんのこれまでの境遇を思うとすごく切なく苦しくなるね。でもアーサーさんに出会ったことで初めて知る気持ちや経験があってその初々しさにほっこりするわ。幸せになってほしい願いたくなるよ。
ゆーちゃん、ランドマーク読み直してくれているのね。ありがとう。
この頃の瑠衣の健気さ……でも初めての経験に戸惑いながらも、進んでみようと思っているのよね。
本当に瑠衣には幸せになって欲しいよね。
今はまだ臆病になってしまうと思うけど色んなことの初めてをアーサーといっぱい経験してほしいな。
ゆーちゃん感想ありがとうございます。この頃の瑠衣は何もかも初めてで初々しいわよね。
アーサーとだから瑠衣は一歩踏み出せたのよね。ここからがときめきいっぱいです!!
瑠衣くんが言っていた通り「劇的な恋」の始まりだね!色んな意味で瑠衣くんを救った出会いとなったなあって思うわ!
ゆーちゃん、こちらにも読みにきてくれてありがとう。しかも感想まで嬉しいです!
すべての始まりはここからよね。劇的な恋になっていく過程も楽しんでね!